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いつもの日々に  作者: ルウ
モラトリアムの終わり
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手掛かりを求めて

夕日も山の端に沈み、木々の隙間から見える夜空に星が灯り始めたころ。

深い森の中を走るような錯覚を振り切る様に、東哉は思いつく限りの場所を走っていた。

彼女を追い周りを探し、戻っているかと思い事故現場にも戻ったが別の交通事故があったらしく近づけなかった。それでも諦めずにいつも学校帰りに寄る喫茶店や勉強で行く図書館、友達と行くファーストフード店など…思いつく限りに走り回っていた。


「くそっ…莉奈、どこにいるんだよ」


一度立ち止まり息を整える。

あの後に少し冷静さを取り戻した東哉は、深い森と見間違えるような街の闇の中へと走り去った莉奈を追いかけた。あの今にも泣きそうな表情をしていた彼女を見て、もう二度と会えないかもしれないと言う漠然とした不安が彼の足を動かしていた。

しかしあれから2時間走り回っていたが、いまだに見つからないでいた。


「…俺は何で莉奈の手を掴まなかったんだ」


躊躇って手を掴めなかった自分を責める度に、莉奈の顔が脳裏に浮かぶ。


「他に莉奈が行きそうな場所は……そうだ、まだあの場所がある!」


何で今までそれを思いださなかったのだろうか。東哉はその場所に向けて再び走り出した。


東哉は昔、この街に来てよく遊んだ時の記憶を頼りに森の中を進んでいく。

家のから少し山の方に行った鎮守の森の中、神社の裏手にある茂みの奥に少し開けた場所があった。

そこには周りの木と比べると一回り大きい木があり、そのそばにある茂みに隠された草のトンネルを見て東哉は懐かしい気分になりながらも転がり込むように入る。


「まだあったんだな、俺たちの秘密基地…」


秘密基地といっても子供が作ったものだから別にたいしたものではないが、でもそこには東哉と莉奈の二人だけの思い出が詰まっていた。

今の東哉の体からは少し小さくて窮屈だが、できる限り身を縮め中を探った。

人形に水鉄砲、ラムネ瓶を割って取り出したビー玉や見よう見まねで作った模型飛行機、その他にも小さいころ使っていた遊び道具が色々と転がっていた。

一つ一つに色々な思い出があるが、東哉はその中にあるものが無いことに気づく。

二人の宝物を入れた宝物入れから、


「俺が作ったスリングがない…」


昔、莉奈が見たアフリカとかのドキュメンタリーテレビの影響で弓を欲しがった、さすがに弓は作れないのか東哉が代わりにと作ったのが簡単でコツさえつかめれば石を遠くまで飛ばせるスリングだ。

家にあった紐と変な文様が描かれた妙に丈夫な布を材料にして作った子供にしてはの力作。

いや力作といっても異常なものだった莉奈が試し打ちして、若木を貫いた威力から恐怖して危険すぎるからと封印していた一品。

しかし、今この場所でそれが無いと言う事は。


「莉奈がここに来てた…いや、他の誰かが持って行った?いや、違う。莉奈が持って行ったんだ、まだ近くにいるのか……ん?」


そこで、東哉は疑問を感じた。


『もし莉奈が持って行ったのならば、なぜ莉奈はあんな危険な『弓』を持っていいったんだ? 工事現場のこととも関係しているのか?』


考えれば考えるほど、東哉の頭の中でいくつも疑問が浮かんでくる。

そんな中、ふと彼の脳裏にある光景がおぼろげながら浮かび上がる。


「あの時もあいつは………あの時?」




『記憶にないはずのものが浮かんだ』


『あの時 あの時っていつだ?俺は何か忘れてる 何だ?』


東哉の頭はさらに混乱し、答えの見えない疑問に途方に暮れた。

さらに夜の帳が深くなって。結局あれから何も思い出せず、莉奈も見つけられていなかった。

東哉は、事の次第を母さんと莉奈の父さんに莉奈のことを伝えるために家まで帰って来た。

玄関を開け、リビングへと入る。 そこには母さんと莉奈の父さんがソファーに向かい合って座っていてた。母さんは東哉に気づくとに気づくと駆け寄った。


「こんな時間まで連絡もせずにどこに行ってたの!? …莉奈ちゃんは一緒じゃないの?」


夜の九時過ぎよほど心配したのか母さんの目には涙が溜まっていて、罪悪感で胸がはち切れそうだったが今はそれどころではなかった。


「それよりおじさん、莉奈帰って来てない?突然いなくなったんだ!」

「なに?」


困惑する二人に東哉はビルの工事現場でのことを話した。


二人で買い物に行って、その帰りに事故にあった事。

莉奈が落ちてきた鉄骨に当たりそうになった事。

そして鉄骨が莉奈の周りだけ粉々になった事。


二人は話し終わった後も黙っていたが、しばらくすると莉奈の父さんが口を開いた。




「…東哉君、君は莉奈のことを忘れた方がいいと思う」


「おじさん、あんた何言ってるんだよ?」




東哉は自分の耳を疑う。

あんに可愛がっていた娘を、突然見捨てるような発言だ。

しかし莉奈の父さんの目はまるで東哉を貫くかの様に鋭く見つめ、冗談を言ってる様には見えなかった。


「莉奈ちゃんは私達が必ず捜し出してみせるから…」

「母さんまで。俺だって莉奈を放っとける訳ないだろ!二人ともどうしてだよ!!」

「待て、東哉君!」




たまらず東哉は玄関へと走る。莉奈の父さんの制止の声を聞かずに。

東哉は立ち止まれなかった。

あの時手を取れなかった自分がたまらなく情けなさ過ぎて悔しくて、いつもを取り戻すその為に莉奈を見つける為に再び夜の街へと駆り出した。

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