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いつもの日々に  作者: ルウ
混迷の林間学校
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混迷の林間学校 爆発の定番

あたりに漂う砂煙、海風で晴れる前にそっと男の背後に近寄り、東哉は立てかけてあった掃除用の箒の柄を振り下ろす。ゴスッと鈍い音と共に倒れこんだ男の手からストラップをとると足早にその場を去る。箒は分解して証拠隠滅。サスペンス物のドラマに出てくる犯人だなと思いながら、ストラップをポケットに入れて逃げようとした時だった。


「グガァアアア!!」


殴った男の声だろうか怒りの雄たけびと共に爆発的な風が渦を巻いた。さっきの男と同じ服装で雰囲気だったから殴り倒したが、間違いじゃなかったなと考えながら東哉は物陰に隠れる。


「誰だ、俺を殴った奴は!!」


砂煙のおかげか男が何をやっているのかが解る。男を中心に砂煙が渦を巻いているからだ。

さっきの男と同じ雰囲気と超常の力を操る力は、恐らく無関係ではないだろう。とすればあの渦を巻く砂煙は、男の何かしらの力だろう。とするのならば、あの力は空気を動かす力か砂を動かす力か…。

と東哉が物陰に隠れながら考えに没頭している間にも事態は進行していく。


「痛ってーんだよ、ふざけんなよ殺すぞ!!」


男の怒りに任せた爆発的に吹く風が周囲にまき散らされる。腕を振るたびに腕から出る風がベンチをひしゃげ、ガラス窓を粉砕する。

俺がやったから悪いとは思うけど無茶苦茶かよと東哉は心で悪態をつきながら体を屈めて風の塊から体を守る。


「まだ近くにいるのは解ってるんだ。出て来いよ、オラッ」


腕を振るう足を踏む声を上げる、すべての動きで風が巻き起こる。その力はだんだん大きくなっていっていた。その証拠に東哉の隠れるコンクリートの柱が削れていっている。

マズイ、このままじゃ削り殺される未来しかない。東哉の感覚では宙に舞う砂が恐ろしいまでのスピードで物に当たる度に物を削っていっているのが理解できる。最初の自分の一手で自分の首を絞めた様な物だった。


「ギャハハハハッ、ほら出て来いよ、じゃねーと俺の『旋風』が削り殺すぞ!!」


アイツ口調と違って冷静かよと悪態をつきながら、東哉は状況を打開するべくどうかできないかと考える。すると、数日前の浩二とのくだらない会話を思い出した。




「最近のラノベって内容薄くね?ってかみんな似たような話ばっかりでさー」

「そこまでか?」

「なんか無理やり目立たせるために奇手を狙うのは仕方がねーけどよ。なんつーか知識のなさが際立っていて使うネタが一緒なんだよ。その所為で大体が食事チートでマヨネーズとかハンバーグとか定番スキルでいきなり最強とか…ああ、あとあれもあった」




「確かあれは、粉塵爆発だったっけな」


あれから浩二から聞いた粉塵爆発の知識、それを使えばと東哉は周囲を見る。

粉塵爆発の条件は、火種・可燃物の空間内の濃度・酸素濃度の三つだ。東哉の能力を考えればこれほど自分に有利なものはない。

あの男の近くにあるゴミ箱に意識をやると、一気に分解する。と同時に空間内の二酸化炭素を分解して炭素と酸素に分解する。


「ああん、こっちか‼」


どうしてか位置が一瞬でバレた、東哉は慌てて最後の要素を作る。ゴミを分解して炭素を巻いた、二酸化探査を分解して酸素を増やした。そして火種。

自然発火と言う現象を知っているだろうか、これは何もしない状態で勝手に火が出る現象だ。これは色々な要因が原因であるが、簡単に言えば燃えやすい=酸化し易いという事だ。

それは東哉の能力であれば有利な点である、分解したばかりのモノは全て酸化し易いものだ。それの中でも最高の酸化物質は。


「バーカ、遅ぇよ。活性酸素って知ってるか?」


活性酸素は酸化させやすい、それ故簡単に周囲の物質に化合するのだ。これが、少量ならば問題がない、しかし東哉の能力で大量の活性酸素が産まれたのならば。

空気が光り爆ぜる、爆裂ともいえる強力な衝撃波を伴って。





その光は海岸公園の沖合からもよく見えた。

遅れて聞こえる地響きがクルーザーの窓をビリビリと響かせる。爆風が波を強くし、船が大きく揺らいだ。


「おーおー。定番の粉塵爆発か…あの規模じゃ別物だな、ヒヨッコながらやるね」

『面白がっている場合じゃないですよ。はたから見てると面白いかもしれませんが、やられた方はたまったもんじゃないですよ』


前兆20mちかいクルーザーのデッキの上で、釣り竿片手に望遠レンズを覗く男が楽しそうに笑っていた。傍らに置いているノートパソコンの画面からは心底困った声が流れていた。


『ちょっと離れていたところから見てたんですが、爆発の範囲と威力が強かったです。こっちも吹っ飛ばされましたよ。式の分体じゃなきゃ、フツーの人間だったら死んでますよ』

「生きてるなら大丈夫だ」

『そうは言いますけどね、式の制作にいくらかかっているんだと思いますか。うちの部隊の予算は無限じゃないんですよ』

「お前はオカンか」

『隊長‼』


通信先の小言にウンザリしながら、男は望遠レンズから目を離してリールを巻く。


「爆発で今日はもう釣れないから撤収する。基地局の通信妨害を停止、痕跡を残すな。対象の回収と共にカバーストーリーの制作をしろ。あと爆発の通報をしてやれ」

『よろしいんですか?』

「今回の件は介入はしたが、事の起こりは我々じゃないからな。困るのはあっちだけだ、些細な嫌がらせくらいにはなるだろう」

『了解』

「ぬかるなよ、桂二」


通信が切れたノートパソコンをシャットダウンさせ、男は二・三匹入ったクーラーボックスの蓋を閉めて本格的な帰る準備をする。


「さてさて、五年前の続き。どうなることやら」


操舵席に座ると男は船を動かし、まだ暗い夜の海へと舵を切った。


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