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いつもの日々に  作者: ルウ
混迷の林間学校
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混迷の林間学校 遭遇

男は完全に東哉を見失っていた。爆発で体勢を崩して初動が遅れたのもあるが、あの後、東哉は連続で爆破して周囲は砂煙で見えなくなっていたのもある。さらに問題なのが…。


「チッ、公園周囲の通報を抑えろ、いいな」


爆発音で公園周囲の住民からの通報が起こっており、電話で指示して男はその対処に追われて東哉を追えないでいた。


「で、そっちの方に映像は?ううむ、やはり爆発で故障していたか」


男は胸ポケットからペン型のカメラの破片を取り出しながら歯噛みする。東哉の攻撃は思いの外、成果を上げていたようだった。さらにおかしなことが続くのが。


「おいっ…電波状況が悪い。………今の時代そんな都合のいいことが送るわけはない…」


突然切れる携帯電話。男が言うように今の時代で携帯電話の電波が切れることはあまりない、それこそ大本のシステムがダウンするか基地局に異常が起きているぐらいだ。

でなければ。そう何者かの横やりが入ったという事。


「こんなタイミングって事は、奴らか」


最近、男の所属する組織を邪魔する組織があった。どこからか現れて、集団戦闘を得意としながらも個人々々も戦闘力が高い正体不明の集団。裏の世界では通称『第三部隊』と呼ばれている連中だ。おそらくのその連中が基地局に何かを仕掛けた可能性が高い。


「となれば、次は…ん?」


次はこっちに何かアクションがあると思っていた男の読みが外れる。その背中側から少し離れた場所に現れる黒い影、背中越しに見える姿は『黒いレインコート』。


「桜坂だけじゃなかったのかよ」


振り返れば黒いレインコートを羽織り、うつむき気味で左腰に木刀を佩く小柄な痩躯。うつむき気味でいる為か顔は見えない。相手は夜な夜な桜坂を中心に出没する剣士、黒いレインコートを目深にかぶり顔を隠して悪事を行う『能力者』を狩り、同じく捕まえる男の所属するハウンドの邪魔をし続ける怪人だ。


「なんでこんな時に…いや、こんな時だから?お前まさか」


男にある気づきがあったが、その思考は剣士の踏み込みでかき消される。この剣士とは何度もやりあって辛酸を舐めさせられた、その為相手の攻撃パターンは男が良く分かっていた。

踏み込みからの薙ぎ払い、胴を割く勢いの木刀を辛うじて躱すが手に持った携帯電話を『斬られ』た。

防弾耐衝撃の特注品がバッサリとだ、やはり伝え聞いた『霧島』の雷刃かと目をむく暇もなく倒れこみながらも距離を開ける。体制を整え相手を見れば、隙も見せずに様子をうかがっていた。


「逃がしてくれなさそうだ…な」


男は再び短剣を懐から出しながら、油断なく眺める。


「何のために足止めをしているか分からないが、崩壊のフランベルジュと呼ばれるこの私を甘く見るなよ」


フランベルジュと名乗る男の持つ短剣が甲高い音を鳴らしながら、二人はお互いに踏み込んだ。




東哉は走る。体は徐々に楽になってきた。

自分の能力と出来ることが、頭痛のおさまりと共に解ってきた。

認識する範囲内で原子や分子の繋がりを切る能力、見た感じ分解する能力に見えるがそんな簡単な能力ではない。この能力の強みは範囲が指定できること。今は能力が覚醒したばかりで難しいが、いずれは線上に発動して切断や先ほどの様に手の中のアスファルト内の炭化水素を炭素と水素に分解し帰化した挙句、化合熱を利用して爆発させると言う荒業もできる。

とまあ色々応用がきくが今はそれより。


「莉奈…」


彼女の手掛かりを見つけ出す、それだけが目的だった。

周りを警戒し追手に気を付けながら、東哉は慎重に走る。舗装された回り道ではなく藪や丘を乗り越え直線で走る。すると10分ほど走るとその場所は見えた。


「『桃山風力・潮力発電実験場』、ここか」


人工的に作られた巨大な地盤、淵には棒が何本も立てられており風が吹くたびに揺れている。話によると風車に代わる次世代型の発電設備らしい。その中心にはそれとは別の著力発電設備の上に建てられた施設の資料を集めた展示場と芸術作品『海からの別離』。

そこを見ていて東哉は気付く、展示場の上にある展望フロアの辺りに人がいる。先ほどの男と同じ黒いスーツ、配電盤を開いてブツブツと呟きながら何か作業をしている。

声が聞こえるかと思い、東哉は足音を消してゆっくりと近づいた。


「なんで携帯電話がつながらないんだ…妙なものがあったから指示を仰ぎたいのに…」


どうやら何かしらあって連絡をしたいのに携帯がつながらないようだ。

携帯を見れば電波が来ていない、東哉もどういう事だと考えていると男が持っている物が目に入った。


「あれは、莉奈と買い物に行った時の…」


莉奈がいなくなる直前の買い物の時に、彼女にプレゼントしたストラップ。それにつけられていたのは何か細長いもの、目を凝らせばそれは。


「USB?」


確かに女性がつけているようなストラップにUSB、しかも隠されていたのか少し汚れている。怪しいことこの上ないものだ。

ただ東哉だけが解るものがつけられているという事は、それは彼女から届いたメッセージ。

どうにかして取り戻さなければ、その気持ちで東哉が考えているとまたあの声が聞こえてきた。


「またかよ…さっきより強い」


声の聞こえる先、そこを見れば地域紙の写真で見た芸術作品『海からの別離』があった。覚醒前だったら解らなかったが、今ならわかる。アレが原因だと。

そこで思いつくアレを利用しよう。


負の感情を煮詰めたような声を無視しながら、見つからないように頭を低くして作品へと移動する。見つからないように能力を発動する。


「散々やってくれたな、これはお返しだ」


範囲を作品全体に確定、分解深度を0,1㎜に設定、分解速度をできるだけ早く‼

瞬間、作品は刹那で砂粒より小さく分解される。作品は分解されたとたん100倍の体積に爆発的に膨らむ。


「うおっなんだコレ。煙? ゲッ、ペッペッなんで砂煙ぃ?」


展示場が砂煙に包まれた。


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