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いつもの日々に  作者: ルウ
混迷の林間学校
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混迷の林間学校 手掛かりはいずこ

重い身体を無理やり動かしながら、ようやくたどり着いた東哉。随分と遅れたが当初の予定通り莉奈の痕跡を探す。とは言え簡単には見つからない。当然だ、莉奈は突然だったが自分の意志で消えたのだ、今回偶然だが姿を見せて情報が聞けたのは運が良かった。

そこまで考えて、東哉はハタと気付いた。


「隠れているはずの莉奈が何でそんなに簡単に見つかったんだ?」


あの時桂二は言った『ちょうど友人からの頼みで調べてたんだ』。

事前に調べていたのかもしれないがいくら何でも早すぎないか?と考えて一つの推論が立つ。莉奈は見つかったんじゃなくて、あえて姿を見せたのではないか?


「て、事は。これは誰かに向けてのメッセージ」


それはもちろん俺だなと自惚れながら、東哉はもしメッセージならば莉奈ならば何処に何をどうする?

東哉は莉奈の考えそうな場所をいくつか考えて…、以前莉奈が言った事に思い至る。


『ヒントは五年前』


五年前。それは東哉にとって鬼門だった。なぜなら、東哉にとっての五年前は無いからだ。自分の記憶は五年前、母親と名乗る女性と莉奈が涙を流しながら覗き込んでいるシーンからだ。


「確か、あの時莉奈は…」


『記憶がなくても大丈夫だよ。必要になったら思い出せるって…そうだ、大きくなったら朝日を見に行こう。昔東哉と見た綺麗な朝日が…』


「朝日‼」


太平洋に面した海岸公園からは、海外線に近づけば何処からでも朝日が見える。だが、きれいな朝日と言えばここではない。海にせりだした海洋発電施設の上から見る景色は、海がパノラマで見えて船の上から朝日をみえているようになる。

以前、町の情報誌を読んでいた母と莉奈が、楽しそうに話していたことがある。


「とすれば海洋発電施設の上にある休憩所だ」


場所が解り目を向けると、休憩所に続く道に一人の男がいた。

その男は、東哉の方を向いて立ちふさがる様に薄ら笑いを浮かべていた。


「おや、どうしたのかな?」


男は親しげに笑いながら東哉に近づく。口からは体を引き摺るように歩く東哉を気遣うように優しく話しかけているが、その実どこか胡散臭い。

東哉は言葉を返さず口を噤んだままだ。


「何か辛そうだ。しかも、こんな夜更けに…何かあったのかい?」


胡散臭いが、それ以上に東哉が自覚した能力がガンガンと警鐘を鳴らしていた。それは口調や動き見た目ではなく…。


「動けないならば肩を貸そう、大丈夫か…っ‼」


肩を掴もうとしてきた手を反射的に東哉は掴んだ瞬間、バチィと激しい火花が二人の間で走る。


「くっ、同じ」

「同系統の能力者かっ‼」


弾かれる様に二人は距離をとる。東哉の顔は引きつり、男の顔は驚きに染まっていた。

一瞬の交差でお互いの能力系統が近いがために、お互いの能力が朧気ながら読めたからである。


「あんた見た目とは違って大雑把だな」

「おまえも見た目と違って繊細だな」


男と東哉の能力は『分解』あらゆる物質を最小単位まで分解する能力である。ただその過程は違う。東哉の能力は原子や分子に働きかけ分子間結合を切り離すと言う細かい作業に対し、男の能力は分子を振動させて結合を引き剥がすという力技だ。

暗い夜道に近づいて見える男の容姿は、黒いスーツに金髪碧眼の優男。


「うっせぇよ」

「ぶち殺すぞ、餓鬼」


東哉はともかく男の殺意が高まる。


「とは言えここでは見覚えのない能力者。捕らえて来いと言われたが、半殺しで許してやる」


男が懐から取り出すのは手のひらに収まるくらいの短剣、持ち手が二股に分かれた奇妙な形をしていた。

それを認識したと同時に東哉は横に跳ぶ、そのいた場所を見れば地面まで持ち手まで深々と刺さった短剣があった。


「貴様、覚醒したての能力者かと思えば何か違うな…勘が良すぎる」


それは東哉自身も思った。今さっきから何故か解る、人の挙動や起こりが。一瞬だが、未来のようなものが何となくわかる。


「チッ、神域までいっちょ前に発動していやがんのか。厄介な」


『神域』。良く分からないが多分、昔漫画で読んだ制空圏みたいなもんかと無理やり納得して右手で能力を一瞬だけ発動して、アスファルトを掴んだ。

それを見逃す男ではなかった、慣れていろうがいまいが能力者は危険な存在。男は身構えたが、それは失敗だった。

掴んだアスファルトを持った手を振り上げた東哉は。後ろに転がると同時に爆発した。


「うなっ!?」


あまりの爆発力に男は吹き飛ぶ、東哉も爆発を利用してその場を離れ慌てて立ち上がると目的地へと走り出す。

東哉がやったのは蓋を開ければシンプルな事で、アスファルトを分解して掴み出しアスファルトを最小単位の炭素まで分解したのだ。

アスファルトの主成分は炭化水素、東哉はそれを分解して炭素と水素に分けた、そして分解を解除したとたん一部が酸化熱を発生させ火が付いたという事だ。

そんな事を行い、東哉は走った。行先は海岸公園の展望デッキ、そこにある朝日が見える輪だ。


「莉奈…」


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