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いつもの日々に  作者: ルウ
混迷の林間学校
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混迷の林間学校 発覚

東哉にとって何が失敗かと言われればなんだろう。よく言われるのは人の話を聞かない、考えが浅い、馬鹿。最後のは完全に悪口だが、目下のところ、一番問題なのが…。


「船津―!! 話聞いとるかー。ジブンはよく人の話を聞けへんから。聞いたつもりになって勘違いすることが多い。せやさかいちゃんと話を聞きやー」

「うっ、はい」


現国の松本先生は怒ると関西弁になる先生だった。かなりの訛りから、その怒り具合が解る。

とはいえ怒るのも無理がない、宿泊地についてからオリエンテーションに来るまで東哉は心あらずの状態だったからだ。


「東哉、大丈夫か」

「ほっとけ浩二、その馬鹿は勝手に勘違いして勝手に落ち込んでるだけだ」

「自縄自縛ってやつだねぇー」


まあ詳しく説明していなかった桂二も確信犯で悪いが、思い込みで勝手に落ち込んでいるのも悪い。


「…うう」

「うう?」

「うがー!!莉奈は!!そんな事!!考えない!!」

「やかましいわ!! しばくぞジブン!!」


どうやら一応心の中で決着がついたらしいが、先生はブチ切れたらしい。東哉は連れていかれた。




「ひーひどい目にあった」

「自業自得だ、馬鹿め。そんな事よりオリエンテーションだ。しおりを見ると、初日の午後は夕方までこの公園を使って、クイズ形式のスタンプラリーらしい」

「マジか」


浩二が思わず唸る。ここ高見原海岸公園の敷地は広い。敷地面積は約6㎢、その広さはちょっとした小島ほどある。その広さでオリエンテーションやると言われたらうめき声が漏れるのも仕方がないのである。


「マジか。うちの先生何考えてんの」

「それには同意だが、これは東哉にとってはチャンスだ」

「チャンス?」

「この機に莉奈の手掛かりを探して来いって話だ。これだけ広いと先生の目が届きにくい、途中で抜けても見つからない」

「なるほどねー、もし見つかっても逸れたって言って誤魔化しもしやすいしねー」

「なるほどな」


この公園の広さは前述したとおりだが、他にも特徴がありそれは起伏のある敷地だ。解り易く例えると敷地内に三つの小さな山とそこに生える樹がある。公園と名称がついてはいるが完全に森の様相をしているのも特徴である。


「今回のスタンプラリーは全9か所のチェックポイントがある。並んだ小山の間を交差する様なコースになっていて、チェックポイント毎に問題があるらしい。それでここだ」


斎がしおりに同封されていた地図を指さす。


「桂二から聞いた『海からの別離』に一番近い、第三チェックポイントのここまで一緒に行って、ここでお前は腹が痛くなり別行動って事だ」

「腹が痛いて、小学生か俺は」

「そこはお前の好きなようにいえ」


と言われても東哉は上手い言い訳が思いつかない。しょうがないと頷く事しかできなかった。




「しかし、今日も緑が深いな」

「この街じゃ緑が深くない場所はないよ」


所変わって深い森林の中を縫うように続く道で歩く二人組、誠一と桂二はスタンプラリーのの第二チェックポイントと第三チェックポイントをつなぐ道を歩いていた。


「んで? ここに彼女が現れる確率は?」

「半々、と言いたいとこだが。勝率は悪いな」

勝率が悪い、要するに来ない可能性が高いという事だ。何故だと目で訴えかける誠一に桂二は、相手の見た目を思い出せと言い返す。


「相手は俺らと同じ年ぐらいだったんだろう? んで今は平日、更にはまだ午後過ぎたころだぞ」


理由は簡単、同い年ぐらいであれば平日に出歩くはずがないのだ。


「学校か」

「そう言う事、今までの出現パターンから見るに桜坂の剣士と戦っているのは、うちの学校が終わって二時間後ぐらい。授業中にはなかった」

「どこの学校も授業時間は変わらないからな」

「んで、近隣の学校と近くの交通機関の人に聞き込みして、今さっき連絡があった」


お前の連絡網はどうなってんのと誠一はやや引き気味だ。桂二は背中のナップザックからタブレットを出して一つの画像を出した。

それは高見原中央駅の改札口を隠し撮りした写真だろうか、少しボケているところを見るとどうも望遠で隠し撮りをしているのかもしれない。

誠一は隠し撮りを咎めるより、その画像を凝視する。

そこには黒無地のキャスケット帽を被った少女が改札を通る様を写していた。


「間違いない」

「よし、なら改札を出た時刻からこの日の時刻表から逆算したら誰か解る」

「いや頼むって言ったが、そこま…で?」


ノリノリの桂二を止めようとしたが、視界の端に灰色のトレンチコートが引っ掛かり言葉を止める。


「拓海‼」

「おー久しぶり顔合わせたな。送ったメールは見たか?」


第三チェックポイントに置いてあるペンチに腰掛ける灰色のトレンチコートの青年『美波拓海』が気だるげに手を挙げて答える。


「見たよ、でも莉奈ちゃんいなかったよぉおおおおお」

「うわぁ」

真顔でハラハラと突然泣き出す拓海に二人はドン引きだ。


「まっまあ、こういうのは地道にいくものだろうから、慌てんなよ。多分、桂二がなんか教えてくれるはずだ」

「うんうん、俺が…って俺頼りかよ」

「仕方ないだろうが。てか、お前また徹夜か? しかも野外?」


よく見れば拓海の横にはテントとランタンが付いた大きなバックパックと、イーゼルと絵具などが括り付けられているキャリーが置いてあった。拓海の死んだような顔と目の下の隈、情緒不安定さから徹夜明けだと良く分かる。


「『海からの別離』が見えるところにテント張って、絵を描きながらずっと見張ってた」

「おまえ、一晩中描いてたのか?」

「ううん、夜になって描くのを一回やめたんだけど。眠れなくって」

「眠れない?」


拓海のやや深刻そうな顔、何があったのか二人は促す。


「良く分からないんだけど、『海からの別離』って芸術作品。あれ多分ロクでもないものだと思う」

「どういう事だ?」

「昨日一日、あそこで周りを見てたんだけど。あの作品を見ていた人たちの顔つきが見る前と見た後でガラリと変わってたんだ。何かあるの感じて、近づいたら聞こえたんだ」

「聞こえた?」

「人を呪え、恨めって声が聞こえてた。何て言うか漠然とした表現だけど人の悪意を増幅して植え付けるような」


拓海が感じたのは人の負の感情だった。状況と感じたことを総合すると、、恐らくあの作品は、近隣の人間から漏れ出た負の感情を集めて増幅、そしてばら撒いていると感じていた。


「この感じが正しいとかは断言できないけど、あながち間違っていないとは思う」

「それがホントなら拙いな、今あそこには」


そう、今あの場所には、東哉が向かっているからだ。


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