Serial Experiments 管狐に導かれ
内閣調査室。
略称を内調、CIRO(Cabinet Intelligence and Research Officeの略称。読みはサイロ)。
通信情報の防諜を担う防衛庁の情報本部、国内のスパイの把握や防諜を担う人的情報を担う公安調査庁と公安警察。
そして、国内外の諸情勢に関係する政治・経済・テロリストの治安に対する情報を集める事を担っているのが内閣調査室だ。
と説明しているが、東哉は良く解らないなと首をかしげる。管狐はこれ見よがしに溜息を吐くと再び口を開いた。
「解りやすく言うと、A国にCIAってスパイっぽい部署があるだろ? それの日本版だ。」
「CIAって、あの映画のミッションなんたらの奴だろ?」
「…まあ、そうなんだが。それより、さっきも言ったんだが君たちに協力を仰ぎたい。」
「はあ、それは良いんですが移動しながらで良いですか?」
「ああ構わない。だとしたらこうしよう。」
すると管狐はスルスルと東哉の身体を上り、耳の後ろにセットしている骨伝導イヤホンに細長い尻尾を絡み付けて肩の上にチョコンと座った。
「これで落ちる事は無いし、話がスムーズに行える。イヤホン越しの君にも聞こえるかな?」
『ああ、聞こえます…それで協力を仰ぎたいと聞きましたが?』
「そうそれだよ。君たちも気付いているみたいだが、このテロ活動はハッキリ言って茶番だ、奴ら傭兵をテロリストと偽って前に出し、本当の目的を出さないようにしている。」
「本当の目的?」
「ああ。今さっき私の職務が潜入捜査と言っただろう? 今回は宗教団体でテロリスト活動があると聞き潜入していたんだ。ところが蓋を開ければ違ったんだ。」
声の主が宗教団体『救世の手』に潜入した時点で、テロリストの遊園地占拠は始まっていた。本当は信者として潜入するつもりだったが、情報が上がった時点で手遅れだった為に傭兵として潜入したらしい。
そして、テロリストの一味として入り込んで、一人の宗教幹部が持っていた書類を見て危機を覚えたのだ。
「私が見た書類は『実験No.601 精神と命』と言うものだった。」
『なんだそれは…不安しかない題名だな。その内容は確認しているのか?』
「しているとも。しかし、その書類は不完全なものだった。実験の目的と手順しか書いていなかったんだ。だが、その手順が問題だった。」
実験の手順は簡潔で、龍穴の周囲に付属の図通り観測装置を配置。その中心の龍穴に実験体を設置、儀式具『創世の鍵』により実験をスタートさせ観測開始。その後実験場を爆破と書かれていたらしい。
「なんだそれ…爆破とか、ここにいる人間を皆殺しにするつもりか!?証拠隠滅にしてもやり過ぎなんじゃねーか!!」
『それに実験体だと? もしかして、白い病院着の少女は…。』
「多分そうだ。今、別の管狐の目を借りて見ると今遊園地の中央に女の子が連れていかれている。」
どうも声の主の管狐は他にもいるらしく、少女の動向を監視しているらしい。
『なあ、その付属の図って手に入れられないか?』
「なんに使うんだ?」
『知り合いに見せたら何か解るかもしれないんだ。出来たら持ってきてくれるか、データで送ってほしい。』
それを言われて声の主は悩む、職務的にはあまり情報を流すのは良くない。だが、今現在『一人』状態で潜入して、情報収取は出来るがテロの阻止が出来ないのが歯がゆく葛藤していたのだ。
ただ、声の主が協力を仰いだ時点で仕方がないとも言える。何より、この少年たちは恐らく自分を攻撃している式神使いと何らかの関係がある可能性があるからだ。その証拠に、少年達に接触した途端、攻撃が止んだからだ。
「…解った、何とかしてデータに変えて送ろう。メールアドレスを教えてくれ、その方が君たちも都合が良いだろう?」
『お気遣い感謝します。』
声の主があまり斎達の情報を知らない様に配慮してくれたのを感じ取り、斎は感謝を述べた。そして暫く静かになるが、東哉が
「それで、俺はどうすればいい?」
「…君は情報収集が得意とは思えないな…攻撃の方はどうだ?」
「安心してくれ得意だ!!」
「ならば君に適任な事がある、それは…」
声の主が示した話は簡単なモノだった。
「君には簡単な仕事があるんだ。」
後に東哉は語る、あの優しそうな声色で言ってくるあれは手慣れた詐欺師の手口だと。
結局良く解らないまま東哉は当初向かっていた人質がいる方ではなく、むしろその逆側。遊園地の外周の一か所に来ていた。
「人質の解放とかじゃないのかよ。」
「それも大切だが、我々がやる事は直接的な事ではなく間接的な事なんだ。」
先程とは違い、東哉は斎にかわり肩に乗ったままの管狐に道案内をされていた。
「それよりもこの絵面シュールすぎるんだけど。」
「指示するのにここがちょうど良いんだ、道案内の為だ我慢してほしい。」
肩に乗せたマスコットの様な管狐と喋る男。
「朝の女児向けアニメっぽくて…痛すぎるんだけどなー。」
「それはすまないとは思っているよ? だが今は時間との勝負だ。」
「解ってるって、実験だからアイツらの目的は実験のデータが目的。だからあいつ等の動きを遅らせるには、データ取用の機械を故障させるか通信用の装置を破壊するかだったよな。」
「そうだ。それであいつらの実験は止まるか遅れる。そして時間さえ稼げれば対策がとれるし援軍も要請できる。」
そうそれが今回の作戦だ。実際の所、今回の事件を東哉は収めるアイデアが思いつかなかった、そんな時現れたのが国の機関に所属していると言っていた管狐だった。話によると彼もこの状況を何とかしたくて声をかけてきたと言う。
ただ、彼もどうにかすることが出来ずにいる為、東哉達を頼ってきたらしい。
三人だけでもどうにもならないのに、一人だったら余計に無理だろう。
そしてで三人から一人増えた状態で出た作戦が、いわゆる時間稼ぎだった。
「締まんねー戦い方。こう、一気に解決することは出来ないのかなー。」
「無理言うな、人数が足りないんだから。ここ数日うちの機関員も全員日本全国に散らばって行っているから、どうもなんないんだよ。」
「人が足りないのは何度も聞いた、解ったって。」
そうこうしている内に東哉達は辿り着く。携帯の時計を見れば予定時刻より少し早くついていた、そしてここからが時間との勝負だ。
「今から観測装置を四台、機能を制限もしくは破壊してもらう。通信設備はこっちに任せろ、何とかしてみる。」
「大丈夫なのか?」
「こっちはプロだ。一人でも何とかして見せるさ、それよりもお前はどうだ?」
「大丈夫。この間までへっぽことか言われてたんだけど、俺修行してきてな少しは強くなってるんだ。俺の実力を見せてやるよ!!」
何時になく高揚して自信満々の東哉、斎がこの場に居たら調子に乗るなって怒っている。
安全地帯で情報収集している拓海は、声は聞こえなくてもイラついた顔で顔を引き攣らせていたが。
管狐の主はその雰囲気からヤレヤレと溜息を吐いた。




