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いつもの日々に  作者: ルウ
混迷の林間学校
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混迷の林間学校 初

林間学校。

元々はヨーロッパの行事で、虚弱体質の子供に対して健康増進のために行うものだったという。それが後に日本に渡り、健康増進だけではなく集団行動の訓練として行われることとなる。




「というわけだ、そこのボケ二人!!」


ズビシッと音が鳴りそうなほど指さすのは、バスの最後部座席の通路寄りに座る香住屋斎。その隣の窓際の席で車窓の眺めを楽しんでいる天子は苦笑いだ。

それもそのはず、その反対側の席では男子三人が狭い中顔を突き合わせながらカードゲームに興じていたからだ。


「なんだよ斎、仲間に入りたいのか?」

「ち・が・う。ゲームを止めろと言ってんじゃない。賭け事を止めい!!」

「しー、声が大きいって今良いトコなんだから」

「おっそう言うって事は良い手札なのか………フルハウスってトコか。降りた」

「おっちょっと、桂二それは酷ってなんで!?」

「なるほど浩二の手札はそこそこの手札って事か………うーん、俺も降りた」

「おい東哉、、おまっえー!!」


そう言って掛け金を引っ込める東哉と桂二。窓際の浩二は沈んだ。

どうやらかなり負けていたらしい。


「まあ、遊びもそこそこにおけらになった浩二は放っておいてだ」

「ちょっと待て、それよりも何でお前は浩二の手が解ったんだ?」


何か肝心な事を伝えようとした矢先、東哉が止める。彼の手にはトランプが五枚、キング三枚とクイーン二枚の構成になっている役フルハウスだ。


「確かに、私も知りたいな」

「なんだ斎、あんなに賭け事はいけませーんとか言っておいて気になるの?」

「うっうるさい、不思議に思ったんだから聞きたくもなるだろうが」

「確かに私も気になるなぁ」


興味津々の目で見てくる斎と天子の二人に押されて、仕方がないなと桂二が話し始める。


「答えは単純だよ。ほら捨て札見てみろ、浩二と東哉はババ抜きの後でやっただろう?絵柄が解るように捨てている。普通は裏返しで捨てるんだ」

「ん?」

「…はぁ、捨て札と俺の手札から見て残る手札から役を予想したんだ。その上で浩二がニヤニヤしてたからブラフ交じりでああ言ったんだ」

「ああ、それで的中した浩二はあんなに動揺したんだな、そりゃバレるな」


成程と頷く斎、東哉は今一分かってなかったようだが何となくは飲み込んだようだ。

ちなみに浩二はこの話を聞いて隅っこにはまり込んでいた、少々うっとおしい。


「まあ、そんな話はどうでもいいんだ。なんのために俺が違うクラスのバスに乗り込んでいるのか思い出せ」

「あー、スマン」


頼むぜと溜息を吐きながら桂二は話始める。違うクラスの彼がここにいるのは頼まれた調査の追加報告があったからだ。


「見かけたって奴の話を詳しく聞いて、昨日現場に行って聞き込みしてみたんだが」

「悪いなそこまでしてくれて」

「気にすんな、貸しって事で良いさ。まあ聞き込みの結果、二日前の夕方に莉奈って子に似た女性を見たっていう奴が何人かいたよ」

「どこでだ!?」

「それがな…あー言いにくい事なんだが…どこなんだ、教えてくれ。頼む!!」


とても良いにくそうな桂二。それにピンと来たのか今度は天子が口を出す。


「あー分かった。『海からの別離』でしょ」

「あ、あーなるほどな」


それに気づいた斎が気の毒そうに目を逸らした。その場所は学校でも噂になった場所だ。林間学校で使う施設の隣にある『高見原 海岸公園』の中の一施設であり、『カップルで行ったら必ず別れる、行かなくても片方が行っても必ず別れる』と別れの定番の場所なのだ。

そこに思い当たった東哉は顔が真っ青になりながら、色々な可能性を考えつつ一言呟いた・


「嘘だよな…」




「とまあ、そう言う事であっちのクラスに混ざってたんだわ」

「で、その結果があれか…惨い」


自分のクラスに帰ってきた桂二に、どこに行っていたかと問い詰める誠一。返って来た説明を聞き、隣のクラスを見れば魂が抜けたかのように茫然と体育座りをしている東哉。


「また、勘違いさせるようなこと言ったな?」

「言ってないって、例の彼女の目撃条件がカップルの墓場だったって事だよ」

「それは、それは、確実に誤解するな」


消えた彼女がカップルの墓場と呼ばれる失恋のスポットで見かけた、とか言われたらあーはなるかと誠一は思った。


「でも俺に話していいのかその情報?」

「ああ、かまわないよ。なにせ元々この依頼は拓海からだ」

「あー、何となく予想がついてた」


元々は拓海からの依頼、それだけですべては合点がいった。

美波拓海みなみたくみ

桂二と誠一のクラスメイト、美術部に所属。二週間前に隣のクラスの一目惚れした菊理莉奈に告白して見事玉砕した男である。


「あいつ傷心をキャンバスにぶつけてなかったか?」

「ぶつけてたけど、諦めきれなかったんだろう。だから俺に依頼してきたって事」

「なるほどね。ところで、その本人はどーした」


その肝心の依頼主を今日は朝から見ていない。林間学校に居ないどころか、バスに乗る前集合時間の時点でいない。


「いや、あいつ美術部のコンクール作品の為で別行動中。先生の指示で今日明日はずっとスケッチらしい、鋭意製作中ってことらしいぞ。さっきメールが来た」

「拓海は美術の才能はあるからな」


美波拓海は全国的有名な高校生画家だ。有名なコンクールを総なめにするほどの才能を持っている。得意なのは風景画で、有名作品は『蒼の渓流』や『境界線の緑』などだ。

彼の絵のすばらしさは世界が認めるほどであり、とてもいい評価を受けており様々な著名全からコメントが寄せられており、『誰が見ても郷愁を感じる』『万人に受ける作品はないと思われたが、この作品はそれに最も近い作品』『魅せられる一色』などである。中でも一番多いコメントは『絵から音が聞こえる』と言うものである。

とまあ、美術界を騒がす作品を出す人間がいると学校の対応は『絵も学業の一つなのでそちらを優先してください』となる。


「あいつも大変だよなぁ」

「好きでやってるからいいんじゃないか? だからこそ上達した所もあるだろうしな」

「んで、今日のあいつは来るのか?」

「来ると言うかもう来てるらしいんだわ」

「どこに?」

「あそこに」


桂二が指さす場所は林の向こう、その先は確か海岸線かと思い至って納得した。


「あいつも考えること一緒かよ。いや、純粋に探しているだけか?」

「どっちもだと思うわ」


確実にまだ執着してるのが見て取れる。場所が場所なだけに拓海も思ったのだろう『莉奈ちゃんはあの男と別れるつもりなんだ』と。誠一は淡い期待だなと苦笑いしながら肩を落とした。


「それよりだ。この間頼んだ方はどうだ?」

「噂話の事か。高見原の噂話は事欠かないからな」


誠一は先週、桂二に黒いレインコートの少女の事と棒を持った少女の事についての調査を依頼していた。だが返ってきた言葉はちょっと違っていた。


「噂話?」

「ああ、今この高見原は色々な噂話が流れていてな。その一つが黒いレインコートの剣士『桜坂の剣士』もう一人は最近この町に来たみたいで、あまり情報はなかった」

「そうか…」

「なんだ? もう一人の女が気になるのか?」


からかい気味に絡んでくる桂二を誤魔化すように、顔を背ける誠一。誠一本人も良く分かっていないのだ。


「とはいえ、もう一人の方の目撃情報から考えると簡単に見つかりそうだが」

「そうなのか?」

「ああ。どうも、もう一人の女は桜坂の剣士を執拗に狙っているらしくてな、この一週間ほど色々な場所で戦闘を繰り広げているらしい」


そういえばと誠一は最初あの二人は、戦って現れたことを思い出す。あの二人は何か因縁があるのだろうか? 


「まあ今までの出現情報から、不完全な行動予測でいいなら次現れる場所はわかるぜ」


桂二は今だ落ち込んでいる東哉達を見ながら言った。


「本当か? 次はどこだ?」

「ここだよ」


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