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いつもの日々に  作者: ルウ
異郷の逃亡者
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幕間 過去から続く道

「やつらの人身売買ルートはあらかた潰した。残っているのは日本内のルートだけだ。」

「そっちは問題ない、六花機関の方にリークして潰す様に持って行っている。日本の事は日本の公僕に任せてれる事はまかせてだ。紫門、例の研究所は?」


尋ねられた紫門は胸ポケットから写真を十数枚取り出すと、ローテーブルの上に並べた。

風文と浄が手に取り、何枚かは風文がちらりと見た後に葵に投げ渡す。


「見ての通り要塞クラスの警備状況と儀式だ。警備は小隊(約10人程)で巡回している、結界儀式が三重で敷地内『式』が放たれている。」

「紫門この壁の写真はまだあるか?」


紫門が更に写真を浄に渡すと、それを見た彼は眉間に皺を寄せる。


「強固な呪紋処理をしているな。ケルトのルーン・日本の神代文字・アイヌの魔除け紋様・インドのサンスクリット…これを作った奴は頭がおかしい。ちょっとでもバランスが崩れたら、この一帯に時空間偏差が起こって時空間に空いた穴に落ちるぞ…。」

「むしろそれを起こすつもりなのかもしれないな。」


溜息交じりに苦笑しながら言う浄。彼によるとこの壁に描かれた文様は呪紋じゅもんと呼ばれるもので、設置型の『儀式』で周囲のエネルギーを吸収し何らかの力を発生させる。

ここに描かれている呪紋の殆どは結界や攻撃を逸らしたりエネルギーを集中させて強固にさせるような物ばかりらしいが、複数の儀式系統が混じり合う事で空間が歪む直前までエネルギーが偏っているらしい。しかも複数の儀式系統の所為で、バランスを崩した途端に空間が崩壊して穴が開き、周囲一帯が時空間の彼方へと落ちる可能性があると言う。

その事について、風文が推論を語る。


「一つ、何かあった時の為の証拠隠滅。この規模であれば攻め込まれた場合や、中の実験が失敗した場合に一発で消し去れる。二つ、これを調整できる機能もしくは能力者がいる、そういう研究の一環かもしれない。そしてこれが一番の可能性があるのが三つ目、偶然…たまに居るよな感覚で組み上げて、他の誰にも出来ない…もしくは自分でもどうも出来なくて放置している可能性だ…。」


風文が頭痛を堪える様に眉間を抑える、なぜかその視線は葵を見ている。


「…確かにな。異文化の儀式をジョイントさせるにしても、この配置は挑戦的すぎる…何となくこんな感じでやったら出来たみたいな感じだ。」

浄は今までの知識と研究、経験上の見地で出した答えを論ずる。見てはいないが、何となく葵を気にしている。


「警備の警戒度の高さ。施設に費やした資金。この規模の研究施設の人員を考えると、この壁の意味が解らん。この壁の儀式が暴走したら、霧島の里以上の被害になるぞ。…スマン。」


紫門は調査したこの施設が消失した場合とその被害の大きさと被害額から、費用対効果に合わないと断じた。そしてつい葵にセンシティブな話題を出してしまいバツが悪そうな顔をする。


「霧島の里の事は気にしなくてもいい。私はあまり執着してないし、修業の記憶しかないからな。」


写真を眺めながら葵が呟くように声を出す。

霧島一族、彼らは以前話した通り能力者の上澄みと言えるほどの戦闘集団。それがある日消えた事件があった。

その当時の調査していた六花機関の調査員がだした調査結果によると、当時霧島一族の集会があった日に集会場があった霧島本家の中心部から二キロの範囲が『抉られる様』に消滅していたらしい。一番近い地震計には小さいながら地震があった痕跡がある事から、C4かそれに類する小型戦術核兵器による攻撃だと調査結果が出ていた。


「…うん?」

「どうした風文。」

「…いやちょっと引っ掛かって…。紫門、霧島の里事件の六花レポートはすぐに見れるか?」

「…ちょっとまて…教授、ここでのフトダマへの接続キーを教えてくれ。」


手を伸ばして虚空からノートパソコンを取り出すと紫門は、浄から聞いた接続キーを使い一番セキュリティの高いフトダマと接続して頼まれた情報を出した。


「これが、その当時の最終報告書だ。」


ノートパソコンを受け取った風文は、そこに書かれている事や動画・画像を見つめる事5分。


「…なあ、研究所の壁が暴走したらどれくらいになる?」

「…凡そで良いなら、この大きさの壁と壁から約2kmほど…まさかお前。」

「霧島の里での原因爆発物は解っていない、周辺のなぎ倒された木々や土の成分分析や爆発シュミレーションでも不明だ。霧島一族の能力者としての力は我々も知っている事だ…そんな奴らが、そこら辺の爆発物でやられるか? でも、もしこれがこの壁と同じく時空間の穴に落ちたのなら?」

「重力崩壊か…確かにそれならやれん事もないが。」


浄はそこまで言ってから、頭を抱えるようにして悩み込む。話は混迷を深める。

しかしそこで、葵がその流れを叩き切る様に発言する。


「それで俺はこれからどうすればいい?」

「おまえなぁ、だれの話をしてると思ってるんだ…。」

「さっきも言った通り、私はあまり気にしてない。気になるのはこれからの事だ。」


ヤレヤレと葵以外の三人が溜息を吐きながら話を元に戻した。


「浄は今まで通り奴らの技術を解析、それからのカウンターを研究してくれ。後手、後手が多い中ではあんたの知識が頼りだ。」

「解った…ついでだ、霧島のやつも並行して調べておく。紫門、報告書とそれ以外の詳細な物も集めて送ってくれ。」

「頼んだ。紫門、研究所の調査はもういい。今の状況で入る事はリソースを使いすぎる、それよりもそこ以外の研究所があるのか?あるならどのくらいあるのかを調べてくれ。」

「了解。教授、データはフトダマ経由で送っておきます。それと俺もちょっと霧島の里の事が気になる、余った時間の時に調べとく。」

「無理をするな、頼んだぞ。それと葵。」

「私はどうする?」


風文はニヤリと獰猛な顔で笑う。


「狩りの時間だ。日本における能力者で我々以外の能力者の中で、悪事を働く奴を狩ってくれ。」

「大きな作戦の前に不確定要素を排除する気だな。」

「今度行う大きな作戦ってやつか。」

「何時位の予定だ?」

「予定は決まっていない。だが不確定要素は早め潰すに限る。それとそうやって潰しまわってもらう事で何かが解る可能性もあるからな。」

「藪から蛇をあえて出すつもりか…普通なら無茶苦茶なんだがな。」


呆れた声で言う紫門。それもそうだろう、そんな事をやっていればいずれ大きな組織に目を付けられ磨り潰される事が考えなくても解るからだ。しかし、この場にいる者たちは誰一人心配などはしていない。

この場にいる中で…どころか、この世界において上澄み中の上澄み最強の一角を務める彼ならば切り抜けるどころか全てを切り伏せる事が出来る事が解っているからだ。


「とりあえずはこの方針で行く。」

「俺たちはそれで行くとして、お前はどうするんだ風文。」

「俺はこのまま第三を運営しながら奴らの目的を探っていく。今でも奴らの目的が解らない、最初は世界征服とか馬鹿な事かと思っていたが…どうもやつらもっと馬鹿な事をやっている可能性がある。」


それは風文の勘だ。能力者には勘は馬鹿に出来ない、能力者の演算能力による未来予測や勘は確定予知に近い。だから、ここにいる人間はそれを知っているからこそ、その発言に異論はない。この相手に対して全員が、何となく考えていた事なのだ。


「この感じ、大きな戦いになるぞ。」


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