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いつもの日々に  作者: ルウ
異郷の逃亡者
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逃亡者脱出 後篇

能力者の強さとは一概に決められない。

それは何故かと言われたら、以前にも話したが能力者の力関係は系統別では三竦みに近い。それと同系統でも固有能力によっては熟練度や発想によって優劣が決まる場合もある。

しかし一つだけ変わらないモノがある。

励起法だ。

励起法とは乗数強化と言われている。これは能力者の励起法を使わない素の力を数値化した時に、励起法を使った時にその数値が指数関数的に引き上がる事からだ。

例えば身体を一切鍛えてない16歳ぐらいの力を5としよう、そんな人間が励起法を使うと25になる。

これは計算式がlog₅25=2となり、2が深度・5がその人間の強さ25が励起法を使った場合の強さだ。

この事により深度と基底数(強さ)により、その人間の強さは顕著に差が出て、この差は強さの比較にはよく使われるのだ。

ちなみに深度は東哉が2.8誠一が3.2、天子が3彩が3.1莉奈が2.9と言う所だ。

そして天子の師匠、霧島葵の現在の励起法の深度は4.5。これは全能力者のアベレージの3.5を大きく上回る深度だ。

今までの異常なまでの葵の技は、この高深度の励起法に裏打ちされたものなのだ。




励起法によって強化された身体を、トラックの上からフワリと飛び降りた葵。高速道路の路面を抉らない様に、励起法の余剰エネルギーを利用した物質強化『纏雷まといいかずち』を使い路面を強化し蹴る。

その移動は天子とは段違いで、瞬間移動もかくやと言うスピードでトラックの前を走る四台の車真ん中、その右側の車の横へと付けた。

いやな予感を感じたのだろう、車に装備された銃を扱う助手席の男と葵の目が合うと驚いた顔をされる。葵はそんな男の顔を気にせず、腰だめに構えた刀を抜き放つとタイヤを切り裂く。

瞬間、車は操作を失ってスピンをすると後ろにある車を巻き込み反対車線へと吹き飛ぶ。それを見届ける前に逆の車へと刀を振るう。逆側の車も同じように巻き込みながら高速道路の壁を崩しながら落ちていった。


「雲よ…。」


葵はレインコートの襟を掴むと天子と同じ『儀式服』のレインコートを起動させる。

彼と天子の着るレインコートは『霧』と言う『儀式服』だ。代々機織りの一族で紡績企業である『秦氏』が制作した儀式服だ。この儀式服は様々な機能が付いている、一つエネルギーを吸収して溜め込む二つ自動修復機能、三つ着用した人物の周囲を一時的分解しダイランタシーを起こすほどの密度の霧を足元に発生させる。

これを利用するとどうなるかと言えば、恐ろしいまでの葵の踏み込みは足元を固化し空を歩けるのだ。

先程と同じように移動する、移動先は空中ヘリコプターのエンジンの横。

今度はヘリコプターの乗員も車が蹴散らされたのを見て気付いたらしく、ドアを開けてドアガンを向けてきた。しかしそれは失敗だった、空中を地上と同じく動ける葵にとっては好都合だった。


「なにっ?」


銃口を向けた男は困惑する、空中にいた男が突如として消えたのだ。その困惑の結果は直ぐに分かる、両手で持ったドアガンと腕がズレたのだ。

男の後ろで、刀の血振るい(刀に付いた血を振るい落とす動き)が聞こえた途端、腕が落ちた。


「ひ、ひいいぃぃぃ!!」


両手が無くなって顔を恐怖に歪めて叫ぶ男を尻目に葵は、掬い上げる様にヘリコプターの天井へと掌底を叩きつけた。

霧島神道流枝技『雷鳴掌』、誠一の使う内部へと浸透する浸透勁と同じく日本に伝わる古流武術にある『鎧透』だ。浸透させた衝撃はヘリコプターの屋根を伝いローターを動かすエンジンへ、途端エンジンに異常が起き停止する。


「う、うわわわわ!! え、エマージェンシー!! エンジンが停止した!! 本機は不時着する!! 繰り返す、本機は不時着する!!」


ヘリコプターのエンジンが止まり途端バランスを崩すように墜落していく。葵はドアガンのある方向から、来た時の様に飛び降りる。

下には事故を抜けたトラックのコンテナ。葵はその上に音もなく着地する。

この一連の流れは、二分とかからない出来事だった。




その一連の流れを見ていた一同は唖然としていた。

アジズはハンドルを握りながら顔を引き攣らせ、斎は茫然とガラスを覗き込み、桂二は片手で顔を抑えていた。


「大丈夫、大丈夫なはずだ。そう、そう…逆に強すぎて信じないに違いない…。」


桂二はブツブツと呟いて現実逃避をしていたが、アジズが引き戻す。


「おい、脅威は去ったぞ!! これからどうするんだ!!」

「はっ、そうだった。後ろから来たトラックの後ろに少し離れてつけて下さい。」

「解った。」


後ろから追い越してくる大きなトラック、アジズは追い越したトラックの後ろに付ける。

それと同時にトラックの後部が開き、ワイヤーが付いたガイドを出した。そのガイドがアジズ達を乗せたライトバンをコンテナの中へと引き上げた。


「お、おい。大丈夫なのか!?」

「大丈夫です、エンジンを止めて良いですよ。」


桂二はそう言ってドアを開けて外に出ると、コンテナの壁にあるスイッチを押すと明るくなる。


「これは…。」


同じく外に出たアジズが驚いた。それもそうだろう外に出れば外から見るよりとても広かったのだ。


「なんだ、これは?」

「空間系儀式によってコンテナ内の空間を引き延ばしています。学園都市から持ってきたドクターカーです。アジズさん、時間が惜しい。検査を先にしてデータを送りますから、娘さんを検査室に。」

「あ、ああ解った!!」


座席に寝かせていたアマルをそっと抱きかかえると、アジズはありえないほどに広いコンテナの中にある部屋に入って行った。

斎はそれを見て安堵の息を漏らす。これで助かると良いなと。


「なあ七瀬、このコンテナとは思えないほどの広い空間と言い、この車と言い…今まで聞かなかったがお前は、お前達は何なんだ?」


銃弾で傷ついたライトバンに手をやりながら斎は尋ねる。今まで何度も助けられていたが、学生の範疇を越える力に能力者。そして組織立った動きと、圧倒的な物資。

明らかにおかしい。

そしてここまでしてくれる桂二の、その目的が解らない。

その事に斎は不気味に思い、思わず聞いてしまった。きっと面倒ごとに巻き込まれてしまうなと思いながら。


「お前、俺の目的が解らないで恐いんだろう? でもそれは勘違いだ、これは俺も俺等にもメリットのある事だからな。我々『第三戦略戦術研究室実働部隊』、略して『第三部隊』にとってな。」


桂二は不敵な笑い顔でこう返した。


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