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いつもの日々に  作者: ルウ
異郷の逃亡者
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逃亡者脱出 中篇


高見原中央区 高見西都市高速入口前


高見原の都市高速の入り口付近は渋滞が起きていた。先頭は高速の料金所で、そこから連なる様に渋滞の列は道路まで伸びていた。その中の一台のトラックの中では二人の男が、会話しながらトラックが動くのを待っていた。


「だー、一体なんだコレ!! いつもはこの時間はスイスイ行くだろーがっ!!」

「あー先輩、スマホのニュース見たら近くの公園で爆弾騒ぎがあったらしいっすよ。」


運転手の男がイライラしながらハンドルを叩く。それを宥めるように助手席に座る後輩らしき青年が携帯のニュース速報を語りだす。


「あ? 珍しいな、中央公園って高速道路から離れてたよな? 近くが火事で通行止めとかになるのは聞いたことあるけど…爆弾騒ぎで高速が通行止め?」

「ほら、テレビの刑事モノとかでもある犯人が逃走するのを防ぐために封鎖って奴じゃないですか?」

「あれって、管轄が違うから封鎖出来ないんじゃなかったっけ? この間、昔の刑事モノでやってたぞ。」

「そうなんですか?」


実ならない微妙な会話をしながらイライラを紛らわしていたが、いかんせん動かなくなって1時間だ。長距離トラックドライバーとしては、予定がズレるのは料金的にも良くないから焦る。


「ったくよ、今回は比較的近いから良いけど。予定が狂っちまう…ん?」

「どうしたんですか先輩?」

「いやあれ…。」


ズレた予定を頭の中で整理していた運転手は目の前の光景に目を見開く。後輩に聞かれて指さしたのは、中央の高架を支える柱を挟んだ向こう側。高速道路から降りる出口のスロープだ。


「あれ、降り口からデカいトラックが入ってる!? 逆走じゃないっすかね!! こういう時は警察ですか?」

「やめとけ、やめとけ。たぶんあれ俺等と同じ様に通行止めでイラついて、突っ込んだ頭おかしい奴だ。余計な恨みを買いたかねーよ。」

「いや、それじゃ…。」

「後、事情聴取とかで時間取られたかねーんだ。こういう時は無視だ無視。」


ええっ!!と言葉を漏らす後輩を無視して男は車内のラジオのボリュームを上げる。イライラを吹き飛ばす様なテンポのいい音楽に男は、あー嫌だ嫌だと呟いた。


「でもあのトラック、コンテナの上に誰か乗せてたのに…。」


そんな的外れな呟きを聞き逃して。




「おい…あれって、まさか。」


バックミラーに映る大型トラック、その上に見える風にはためく白いレインコート。見た事のある姿にアジズは桂二に声をかけるが、かけられた本人は驚きで固まっている。


「お、おい。どうした?」

「あ、葵さん…なんで!?」

「おい、どうした。あれがお前の待ってたやつじゃないのか?」

「待ってたのは下のトラックだけです…葵さんは、なんでいるの!?」


どうも別の意味で動揺する桂二に、ただ事じゃないなとアジズに代わり尋ねる斎だが、桂二の返答がどうも要領を得ない。


「どうした、あの人が居たらまずいのか? とても弱いとか?」

「ちっ違う、あの人に弱いなんて口が裂けても言えない。ただ…あの人が居ると作戦指揮を執ってる俺の意味が無くなるんだ…。」


彼の名前は霧島きりしま あおい。蒼羽天子の師匠にして太古より連綿と存在してきた災厄を封じ込め、現在では能力者が起こす事件を封滅する役割を持つ組織『八方塞』の一人。北門を司る、八方塞最強と言われる男だ。

強いという事は悪い事ではない、問題は彼が強すぎる事だ。


「まずい、このままだと撒くどころか全滅させちまう。」

「それのどこが悪いんだ?」

「…まず一つ、あのヘリは落とされる。街中で落ちたら大変どころか高見原が大混乱だぞ。二つ、ここまで俺らがやってきた隠蔽が漏れる可能性がある。三つ、巻き込まれたら死ぬぞ。」


あーな、とその一端を見ているアジズは運転席で納得する。あの異次元ともいえる戦闘力なら桂二が言った通りになるだろう。

という事なら確かにマズいなと昔戦場を渡り歩いたアジズは思い出す。拮抗した戦場に別の部隊が突っ込んで来て、場をかき乱すだけかき乱して被害が拡大して戦線が崩壊した苦い思い出だ。

これが都市戦であればこの町の被害がとんでもない事になりかねない。


「どうにかならないのかっ!?」

「…今問題なのは、俺の指揮力不足もあるんですが…一番問題なのが通信が出来ないと言う所なんです。」

「通信が出来ない…どうにかならないのか?」

「どうにもならないです…妨害電波がここら一帯に流れているらしく携帯の基地局まで影響を受けているみたいで。」


そう言って打開策を考える桂二。しかし後ろからのトラックは段々迫ってきている、後ろの銃を撃ちまくっている奴らが近づいたりヘリが直接的な攻撃を起こしたりしたらあの白いレインコートの男がすべてを終わらせるだろう事が容易に分かる。

そんな時、思案していた斎が声を上げる。


「なあ、今の場合無線が不味いんだよな。」

「あ、ああ。そうだが…。」

「なら出来るか解らないけど、これにかけて見ないか?」


そう言って斎は手に持った水の塊を見せる。


「おま、お前。それは!!」

「ああ、話してなかったか。この間の騒動の後に出来るようになってな、そんな事より…これをこうして…。」


珍しく驚いた顔を見せる桂二をよそに、斎は水を粘度の様に水を摘まむとスルスルと糸の様に伸ばし始めた。


「七瀬、何か板みたいなモノあるか?」

「ああ、あるけど…まさかそんな事出来るのか?」

「やってみなけりゃ解らんだろうが。七瀬、残り時間は」

「…10分後だ、頼むぞ。」

「ああ。」




前から吹く風に男は膝立ちでバランスを取る。その目が見ているモノは前の車、その車は更に前の車に銃撃をし続けている。あの銃撃では桂二達が乗る車の装甲は突破出来ないのは知っている。問題は上を飛んでるヘリだ、あの軍用ヘリの装備は少しマズいかもしれない。あれが動き出したら男は何とかするつもりだ。

励起法の深度をいつでも上げれる様にヘリの挙動を見つめる。

そんな時に風にのって一枚のアクリル板が飛んできた。


「これは?」

「よかった、葵さん!!」


板から聞こえるのは桂二の声、よく見れば水の糸の様なものがくっ付いている。


「能力による糸電話か…考えたな。」

「はい、丁度都合よく能力者がいまして。それよりです、後ろの車を行動不能にした状態で上のヘリを撤退させることは出来ますか?」

「叩き落さなくていいのか?」

「それはやめて下さい、街が混乱して大変な事になってしまいます。相手がなりふり構わなくなったらマズいんですよ。」

「…わかった、ヘリのエンジン部分を止めてオートローテーションだけ生かしておく…それでいいか?」

「お願いします。」


そこまで聞いて男…葵は励起法の深度を引き上げ、トラックの屋根を叩き運転手に指示を出す。


「今から目の前の車を排除した後にヘリに対処する。私が出たと同時に突っ込め。」

「了解しました。」


運転手の返事を聞いた瞬間、男は立ち上がりフワリと横に飛び降りた。


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