表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつもの日々に  作者: ルウ
異郷の逃亡者
106/175

逃亡者と謀

誠一は夏休みの間、思惟に教えられた事は色々ある。細かい事から基本的な事まで修正され覚えさせられた。

中でも口を酸っぱく言われたのが励起法の出力と持続、それと戦術と間合いだ。


「誠一君に問題です。戦闘において大事なものは何でしょう?」

「戦闘で、ですか? えーと、攻撃力?」

「まあ、それも必要よね。ただそれは基礎的なもので大事とは違うわ。」

「基礎的…大事、という事は応用の様なものですか?」

「そうよ、貴方が一番苦手な物。戦術よ。」


思惟は誠一の戦い方が力一辺倒だと語る。それは思惟との模擬戦によって浮き彫りになっていたモノだった。


「あなたの戦い方は真っすぐすぎるのよ。そりゃ少しは改善しているけど、それはフェイントが少しできるくらいだからまだまだ駄目。戦いの太極の真ん中を行くには、虚実を適度に混ぜないといけない。今の状態は実が9、虚が1って所ね。」

「そんなに酷いですか?」

「いや、一割でもいいのよ?ここで問題になるのは、その一割を確実にするための戦術と言う話。」


虚。ここではフェイント・見せかけという事。

攻撃もしくは回避・防御すると見せかけて、相手の失敗を誘う技術だ。

ただ、このフェイントはとても難しい。

解りやすく言えば、悪戯の様な物だと思うといい。

例えばだ、悪戯をするとしよう。相手を驚かす時、何が大事かと言われれば相手に驚かせる事に気付かれないようにする事だ。驚かせる前に気付かれてしまっては、相手は驚かせられない。

当たり前の事だが、戦闘に至ってはこれはとても難しい。戦いの時には相手はこちらにとても集中し、一挙一動を見ている為フェイントが効きづらい。


「ではどうすればいいのでしょうか?」

「技一つ一つの意味をちゃんと知った上で、説得力のあるストーリーを作るのよ。例えばこんな技は…。」


そう言って目の前に立った思惟はユックリと顔に向かって三本指で突く。中指をガイドにして目潰しだ。誠一は驚いて右腕でガードする、さらに思惟は腹に拳を当てる。慌てて腹をガードするも、最初に払った目潰しの手が顎に掌底を当てていた。


「翻子拳の迎門三不顧。一手目で目潰し。これは避けられても視界を遮ることが出来る。二手目で腹部をまたは急所を打つ、それと同時に意識を下に向けさせるのよ。そして三手目、意識が下に向いたら置いていた手で勁を打つか掴んで引き倒す事も出来る。」

「…相手を騙す、意識を向ける為の流れを作るって事ですか?」

「そうとも言うわ。ただ実践で私なら、相手にそっちが本命だと思わせたりする為に様々な伏線を張る事が多いけどね? そういった意味でストーリーね。」




そこまでの事を思い出しながら、誠一は虚実の大切さを今噛み締めていた。

拳一つ一つに、意思を込め。その偽物が本物であるかのように打つ。

男が防御するべく鎖を前に出す、しかしフェイントの為に拳を鈎爪にし引き裂く。弾丸を打たれて怯んだと見せかけ反撃を打つ。後ろのイスマールを狙った鎖を捌くと見せかけて、掴んで引き千切る。

以前なら攻撃は最大の防御と解釈して、攻撃一辺倒になっていただろう。しかし誠一は今回の戦い、背中で最小限の動きで逃げて貰っているイスマールを護るためにフェイントを使いながら場を支配していたのだ。

思惟の言葉を借りるながら、誠一は周りの敵を自分の強力な攻撃を利用し精神的なプレッシャーをかけながら誘導していると言ったところである。

しかし、このままここで留まるわけにはいけない。

誠一は桂二から作戦を思い出しながら、拳をふるった。そして別の事を考えながら戦ったのが悪かったのか、一本の鎖を後ろに通してしまった。


「しまった。」

「ふ、ふふふ。取った、取りましたよ!!」


引き戻されたその鎖の先には、白い布にくるまれた人型が捕まれていた。

イスマールが後ろからの攻撃かと思っていたら、奪ってくるとは考えていなかったのか驚いた顔で振り向いている。

男は実際の所、今の状態で誠一を倒しイスマールとアマルを捕まえる事は無理だと考えていた。

目の前の龍の如き強さを持った男は、正直異常なほど強すぎた。傭兵として世界中を回って戦った男は、今まで戦った相手の中でも上位に当たる。防御力に至っては、傷すら負わない能力者から見ても化け物だ。

そこから導き出された答えは、目的の子供を捕まえての撤退。

一対一、いや一対多数で倒せないどころか圧倒された。下手したら一人一人潰される所だ。

だからこそのこの選択。


「全員撤退!! 第一目標は達成した!! お前らは足止めだ!!」


白い布で包まれた人型を鎖で体に固定すると、男は踵を返して走り出す。


「待てっ!! 返せ!!」

「誰が待つか、そいつみたいな化け物を相手にできるか!!」

「誰が化け物だ!!」


憤慨して追ってくる誠一を男は、飛んで躱す。跳躍の頂点に達する前に鎖で近くの樹や街頭に絡めて逃げたのだ。誠一はアメコミかよっ、と罵声を上げているが無視だ。

男はほくそ笑む、これで理想の世界を作る歩みが進んだのだと。




南東門の駐車場、そこから少し離れたコインパーキング。そこに止まったライトバンの三列ある席の一番後ろで、ノートパソコンを操作する桂二が居た。


「ちっ、公園内の監視カメラの主導権が握れない。『フトダマ』突破は無理か?」

「無理ではありませんが、気付かれ逆探知される可能性があります。実行しますか?」

「しない。余計なリスクは、今作戦においては必要がないからな。それより、作戦進行は?」

「タイムスケジュールはほぼ予定通りです。ズレは約二分。」

「予定通りならば、そろそろか?」


するとコンコンとライトバンの中央のスライドドアがノックされた、桂二がニヤリと笑って開くとそこには。


「はあ、はあ、はあ。時間は!?」

「予定より二分ほど早い。余裕をもって作ったスケジュールとは言え、容体が急変するかも知れないから急げ。」


そこには小さなアマルを抱いて、息を切らせて顔を真っ赤にした斎がいた。

運転席のドアを開けるのはアジズ、乗り込んですぐにシートベルトを締めてエンジンをスタートさせる。


「香住屋、その子を寝かせてお前もシートベルトを付けろ。アジズさんナビゲートします。」

「頼んだ。行先は学園都市だったな?」

「はい、まずは都市高速に乗ってください。」


テキパキと動く二人に少し怯みながらも、斎も言われた事をやっていく。抱えていたアマルを座席に横たえると、その横に座りシートベルトをする。


「ここからは時間の問題だ。舌を噛むなよ、飛ばすぞ!!」


ゆっくりコインパーキングを出たライトバンが急激にスピードを上げる。

向かうのは、学園都市の『重金生化学研究室』。


今年最後の投稿になりました。今年一年ありがとうございます。また来年もよろしくお願いします。

来年はモンハンの新しいタイトルも発売されるので、少し投稿頻度が下がるかもしれません。ご了承ください。

それではまた、来年。良いお年をー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ