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いつもの日々に  作者: ルウ
異郷の逃亡者
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逃亡者と孤独を感じる少女 逃亡準備

「その後に彼の酒場に行ったら伝言とこの名刺があってここに来たと言う訳だ。」

「セイクリッドソード、白銀のレインコート…能力者が非常識と思う技…。」


そんな事出来る人間に心当たりがありすぎるわと、桂二は思わず頭を抱えそうになるがギリギリで耐え話を続ける。


「それで? うちの会社の実働の方からの紹介ですか…。うちは一応警備会社でね、何かの依頼ですか?」

「…その含みのある言い方、あなた…今は良いわ。それより依頼ってのは間違いないわ、この子を預かってほしいのよ。」


そう言ってフローはリュシオールを守ってほしいと言い出した。


「そちらの女性ですか? 先ほどの話とつながらないのですが、事情をうかがっても?」

「それは俺の方から説明させてもらうぜ。」


そこで口を挟んできたのはアジズと呼ばれた髭をたくわえた男だ。柔和な顔をしているが眼光が鋭い、桂二はその眼差しは戦場帰りかと推し量る。少し警戒しながら話を促す。


「娘を預かってもらいたいのは、俺がこの町で人探しをしたいからだ。」

「それはどのような事ですか?」


話を聞けば、どうやら先程の話とは別に攫われた娘がいるらしい。そちらの方は昔の伝手を使って追跡したが、タッチの差で売られてタンカーに偽装した輸送船で送られたという事だ。

その行先は。


「此処という事ですか?」

「そうだ。昔馴染みの情報屋に調べてもらったら行先は此処だった。解らないのはどこの誰に買われたか解らない事だ。」

「それなら大丈夫だ。こっちの情報で人身売買するところは限られてるのは把握している。」


だろうなと言う顔をしている誠一に振り向いて睨むと、桂二は深く溜息を吐いた。普段ならこんなに簡単に情報を漏らさないが、今回は状況が問題だ。まず一つが友人の香住屋斎の不明。依頼と言う形だが上司と同格の『八方塞』、その一人が回してきた仕事は無視する事は出来ない。二つ目は預かると言われても、今の状況では逆に危険に晒す可能性が高い。

まあ、それ以前に。


「こんな事さっさと終わらせたい。」

「ん?」

「いや何でもないです。」


思わず零してしまったが、色々な事が重なった今は一つでも早く案件を片付けたいのだ。近々大きな作戦が控えてる、仕事を増やすわけにはいかない。

と考えこの高見原の事情を話そうとした時だった、扉がノックされこの部屋へ案内した女性がタブレットを持って入ってきた。


「どうしました?」

「お話し中、申し訳ありません。こちらを見てください。」


そう言って桂二がタブレットを見ると、ニヤリと笑った。誠一が怪訝な顔をしていると、桂二はソファーの前に備え付けられているローテーブルに、そのタブレットをフロー達に見えるように置いた。


「あなた達がお探しの人物とはこちらですか?」


そう言ってその場の人間がタブレットを覗き込む。タブレットには繰り返し映る動画が流れていた。元は監視カメラの画像だろう、少し画質が悪い動画が流れる。しかし解像度は問題ない。そこには少し浅黒い肌の青年が、小さな女の子を抱きかかえて走る姿がループして映っていた。




「静かになってきた…諦めた?」

「かもしれんな、ただ携帯の電源を切ったから正確な時間は解らないが夜の九時位かな…。」


あれから時間が過ぎて辺りは暗くなっていた。とりあえずは逃げるにしても状況が解らないのは不味いと、隠れてやり過ごしそれから動く方針になった。

問題は相手の規模が解らない事だ。偶然この自分しか知らない場所に入ってから、人が居なくなる現象が起きた。そのお陰で撒けたのは良いが、今度は外の様子を伺うことが出来ない問題が起きたのだ。

その所為で相手の追跡している規模が解らない。少年イスマールの言う事には、基本一人が追跡して時々何人かの人間が先回りする様に来ていたという事だ。

この公園は町中に出来たとても広い公園だ、その広さは少し大きさ商業施設がいくつか入る巨大さだ。その中を数人で探すのは無理があると考えたのだろう、恐らく応援を呼んでいる筈。


「この公園の出入り口は三つ。その全部の傍には大きな駐車場が付いてる、私ならここに車を置いて監視するだろう。違和感なく置くならたぶんライトバンやバスとかじゃなく、ファミリーカー…多分一つの出入り口に六人から十二人。」


此処だけじゃなく、研究所や他の所にも人員を割いているからこれが限度かもしれん。と斎は唇に手をやりながら予測を立てる。


「そんなに多いのか?」

「いや、この数字は最低十二人という事だ。実際は他の要員も含めてもっと増えると考えた方が良い。」

「なんでだ…俺等一人二人ぐらい放っておいてくれよ。…なんでだよ。」

「それ位あの子が、重要なんだろう…あんな碌でもない事をするくらいだ…。」


そう言って斎は隠れている場所の端に寝かされている少女を見て、悲痛な表情を浮かべる。それはつい先ほどの事だった、お腹が減ったと言う少女に持ち合わせていたお菓子を食べさせている時だった。突然苦しみ始めたのだ。頭を押さえ、気持ち悪いと言って蹲り、どうしたらと右往左往していたら眠る様に動かなくなったのだ。

イスマールに聞けばこれは研究所の時も何度かあって、研究員が与える薬を飲めば普通に戻るらしい。明らかに何かを仕掛けられていると解る。

目的は明らか、もし逃げ出してもすぐ捕まえられる為と逃げ出す抑止になる為だ。


「原理が解らないが、多分実験台と言う時点で死ぬような事は無い、もしくはその可能性は低い筈だ。」


深く眠りピクリとも動かない少女、心配するイスマールに斎は自分の考えで死なない筈だと励ます。しかし死なないとは言ったものの、その保証は出来ず死ななくても何かの障害が残る可能性を考えると早く詳しい人間に診せたい。

桂二にまた借りを作る事になりそうだなと斎は呟いた。


「まとめるぞ。今私達がやらなければならない事は、第一に逃げる事。相手の人数に対してあまり戦えない三人絶望的な戦力差だ。逃げの一手。二つ逃げれたら、もしくはこの電波妨害の穴があったら外部に連絡する。これは三つ目のこの子を誰か診せれる所に診せる為だ。この場合、どうすればいいか解るか?」

「俺かお前どちらかでもいいから逃げ切ってこの連絡先に連絡するって事だろう?」

「そうだ。逃げ切り、連絡する。そうすれば次につなげられるんだ。」


詳しくは効いてはいないが、こうやって貰ったマニュアルの細かさから考えると桂二の背後には裏にも手を伸ばした大きな組織がいる事が解る。今までの桂二の行動を考えると、善性だけで動いているとは思わないが少なくとも利益になるついでに動いてくれているのだろう。


「ただし、絶対死ぬな。私かお前どちらかでも生きて連絡すればいいんだから。」

「ああ。」


二人は子供を助ける為、この状況を打破する為に覚悟する様にお互いを見た。が、そんな二人の決意を無駄にするように、この場に声が聞こえた。


「命を賭すのは止めて欲しいな。そんな必要がないから。」


音が割れているが聞いた事がある声。振り向くと一匹のカラスが入ってきていた、ただしその首には革製のチョーカーが目立たず巻かれており、そのチョーカーには小さなスピーカーが付けられていた。


「無事でよかったよ、香住屋。」


それはまごう事無き、桂二の声だった。


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