第九十射目
今朝まで無人島で遺跡探索終わってどうしよう?とのんびりと考えていたのに、激動の一日を終えて今の王都は夜を迎えている。
「北門への道を除けば貴族街以外への被害は今のところ無さそうです」
「承知しました!団長に伝えて参ります!」
「はい、よろしくお願いします」
反乱軍が鎮圧されて、皆事後処理に奔走している。
休んでて良いと言われたが、僕だけ休むのが忍びなくて王城にある方舟の本部から王都を視渡して、残党や怪我人が残っていないかの確認するお手伝い中の僕。
詳しく調べなければ詳細は分からないけど、反乱軍自体は貴族街から王城へ攻め込んできたので、その付近と逃走経路と思われる北門への大通り以外、幸いにも被害は無い。
一息付こうと思ったところで一人の騎士が声を掛けてきた。
「貴殿がホークアイ侯爵ですかな?」
「はい、そうですが貴方は……」
「申し遅れました。私は方舟第四騎士団長ベルトッド=ヨーレイにございます。この度は我々の窮地を救っていただき、第四騎士団を代表してお礼を申し上げたく思い参上しました。まさかあの状況で―――」
おぉ、なんかこの人ずっと喋り続けてる。
よくあんなに長く喋って噛まないな、息継ぎも殆どしてるように見えないし。
「おっと、話し過ぎてしまいましたな。これからも良き隣人としてよろしくお願い申し上げます」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「では、まだ業務が残っておりますので私はこれにて失礼します」
言いたい事を言って颯爽と去っていた。
ヨーレイ団長と入れ違いで、今度はミトス団長が入ってきた。
「ミトス団長、お疲れ様です」
「本当に疲れたよ。今ヨーレイとすれ違ったけど、あいつよく喋るだろう?」
「僕があんまり話す間もなく言いたい事を言って出ていかれましたよ」
「悪気は無いんだ。良い奴だから嫌わないでくれると助かる」
「そんな事は無いですけど……」
「それは何より。さて……」
気さくな笑みを浮かべていたミトス団長の表情が真剣なものへと変わる。
本題に移るって事だろう。
「今回の件についての現在分かっている分の報告だ。反乱に参加した貴族は伯爵六家、子爵八家、男爵・騎士爵家に至っては二十に及んだ。その内死亡者が十二名、残りは全員捕縛して牢に入れてある。誰も逃さなかったのはホークアイ卿のおかげだ」
「ユウリで良いですよ。それに僕は視付けただけで、実際に捕まえたのは皆さんのお力です」
「謙遜しなくて良い。実力にもよるが、案外捕縛するよりも捜索する方が骨が折れるからな」
僕自身は加護のおかげでそうは思わないが、実際はミトス団長が言うように捜索にはそれ相応の時間と人員が必要なのだろう。
「では素直に受け取っておきます」
「そうしてくれると嬉しい。それと、貴族に仕えていた各騎士団やお抱えの冒険者・金で雇ったと思われる冒険者達は五千を超えた。その内の約六割が死亡している。まぁ、大半は冒険者みたいだが……」
「その中のどれ位を僕が手に掛けたんでしょうか……?」
「そこは気に病むところじゃない。君が手を組まさなければこちらの被害は甚大なものになっていた」
「そうですよね……。ところで、こちらの被害状況は?」
「死者は少なくない……。が、この規模の戦闘では少ない方だろう。負傷者に関しては君が提供してくれた下級回復薬や上級回復薬、そしてあの何だったか?」
「回復薬ですか?」
「そうそう、それだ。そのおかげで治療が間に合った者全員が命に別状は無い」
「良かった…………」
死者の数を敢えて言わず、直ぐに負傷者が助かった事に話題を切り替えたのは僕に配慮してくれたんだろう。
「建物の被害は大なり小なりあるが、それはまた建て直せば良い。そこのお金は陛下が払うなり、反乱軍の表と裏の金でどうにかなるだろう」
「確かにああいう輩は溜め込んでそうですもんね」
「大体は人に言えない財産があるもんだからな。それと話が変わるんだが一つ、頼みがある。勿論断ってくれても構わない」
「何でしょうか?」
「君に敗れて降伏した第二騎士団の団長が君と直接話がしたいと言っている。大罪人が言っている事だから無視しても問題は無いが……どうかな?」
「ミトス団長的には一度話してほしいみたいですね」
「ははっ、君に隠し事は出来ないみたいだな。そうだ、今回敵になったとは言え、元々同じ志を抱いた仲間だ。どういった経緯で今回の騒動に加わったかを知りたい」
「だから僕に聞き出してほしいと?」
「そうなるかな?」
「分かりました。要望に応じましょう」
「ありがとう。準備が出来次第、部下に連行させる。鉄格子越しが安心かな?それとも普通の応接室?」
「応接室でお願いします」
「そう言うと思ったよ。そこの君!ユウリ君を応接室に案内してくれ」
「はっ!」
騎士の一人に連れられて、騎士団本部にある応接室に通される。
直ぐ様別の騎士が『お口に合うか分かりませんが……』と前置きをして紅茶を出してくれた。
お礼を言って口に運ぶと……、確かにとりあえず煎れたお茶って感じだった。
ここ一年飲んでいる様な紅茶と比べれば、茶葉も入れ方も格段に劣っているが、元々森で生活してた僕にとっての紅茶は、爺ちゃんが豪快に作った茶葉で色を付けたお湯だったので、むしろこの位の方が個人的には好みまである。
勿論、セバス達が入れてくれたお茶は美味しいけどね。
そんな紅茶の感想を考えているとこの部屋に近付いてくる三人が視えた。
「うん?三人?多分あの一番大きい人が団長さんだろうけど……。あぁそうか、あの時のあの副団長さんか」
程無くして扉がノックされ、その三人が入ってくる。
「お待たせしましたホークアイ侯爵閣下。第二騎士団の元団長ゴリアテ=ボルトンと元副団長ケイロンを連れて参りました」
「ありがとうございます。何かあったら呼ぶので、部屋の外で待機しておいて下さい」
「はっ!承知致しました」
一礼をして部屋を出ていく騎士。
扉の前に立つ二人へソファーに座る様促す。
訝しげながらも座る二人を確認してから僕から話を切り出した。
「ご存知かと思いますが改めて。陛下より【流星】の二つ名を賜りました、ユウリ=ホークアイ名誉侯爵と申します」
「ゴリアテ=ボルトン……」
「ケイロンです」
「僕と話がしたいと聞いたのですが、どの様な用件でしょうか?」
反乱に手を貸した、第二騎士団の二人。
鬼が出るか蛇が出るか。
重苦しい雰囲気の中、二人の口が開かれるのを僕は無言で待った。
珈琲も紅茶や緑茶等の茶類も本当に淹れ方次第で味が変わりますよね。
勿論、豆や茶葉・水にも左右されますが。




