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【完結】流星を放つ鷹【鷹の眼の射手】  作者: まっしゅ@
第五章 邂逅と別れ

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第八十八射目

今回は三人称視点でお送りします。


2023/10/07

 七十七射目から登場した、属性付き隼のファルコクローの名称を○(色名)ファルコから○(色名)爪に変更しました。

 既に更新済の物もこれからの更新分もこちらで表記します。

 意味は変わりませんので、読み返しは必要ないと思いますが、深くお詫び申し上げます。

【ユウリ達が城壁を回っている頃の地上〜三人称視点〜】




 ユウリとリックが大樽を城壁各所に落としている頃、地上は混乱を極めていた。


「まだ来るのか!怯むな!押し返せ!」

「城壁を登ろうとする者達が後を絶たちません!」

「城壁は良い!何者かは分からんが、あの黒い飛竜(ワイバーン)がそちらを担っている!我々は何としても城門を死守するんだ!」

「はいっ!」


 第一騎士団がいない裏門の戦いはジリ貧だった。

 裏門を守る第四騎士団は元々戦闘部隊では無く、後方支援部隊だ。

 各所に散らばっている第五騎士団は障壁の加護持ちが多く防衛に特化しており、今回の様に戦場が王都全域にまで拡大し、住民にも被害が及びそうな現状では王城のみに騎士を集める訳にもいかない。

 勿論、皆一般兵よりも実力は高いがそれでも多勢に無勢。

 更に第四騎士団も住民の避難や怪我人の救助に人員を割いているので、それも相まって徐々に戦力が削られていく。


「第一騎士団の援軍はまだか!?」

「現在、第一騎士団は正門前にて第二騎士団と交戦中!援軍は難しいとの事です!」

「第二騎士団が裏切っただと!?奴ら、第三騎士団が不在のこの時を狙ったのか!」


 現在王都に居るのは第三騎士団を除く、四騎士団。

 その内、戦場で前線に出るのは第一と第二騎士団であった。

 第二騎士団も含め、三つの騎士団に実力の差はほぼ無い。


 全てにおいて高水準で、様々な加護や職種持ちを集め、どの様な状況でも力を発揮出来る第一騎士団。

 身体強化系統の加護やそれを更に押し上げる支援魔法を得意とした者を集め、魔法戦よりも物理戦を主軸にし、狭い地形での戦闘や殲滅戦を得意とする第二騎士団。

 騎竜・騎馬隊による高い機動力からの電撃戦や弓兵部隊による遠距離を得意とする第三騎士団。


 それぞれの力を最大限発揮出来る戦場が異なる為、そこに優劣は存在しないのだ。

 今回の場合は正に第二騎士団の領分、王都の狭い地形を活かした戦いだった。


「第四騎士団長【天援】ペリドット=ヨーレイ様。ホークアイ侯爵から王印を用いての指示をお伝えに参りました」

「影か。王印を使ってとなれば余程の事だろうが、手を止める訳にはいかん!そのまま申せ」


 第四騎士団長と呼ばれたペリドット=ヨーレイは手に持つ長杖を振り、周囲の敵の足元を凍らせる無詠唱魔法を放った。

 影と呼ばれた女性、スミノはユウリからの指示を一言一句違う事無く伝える。


「承知した。私の魔法でなるべく多くの者に伝えるが、戦闘しながらになる。届いたとしても城壁の半周程が関の山だろう」

「構いません。他の影も各所にて行動しております」

「相分かった。何名かこちらへ!私が魔法を行使している間、門の守りを任せる!」

「はっ!」

「及ばずながら私もお手を貸しましょう」

「助かる。では始める!」


 ヨーレイが詠唱を始め魔法の行使に集中する間、周りにいた騎士達とスミノが近付く敵を倒していく。


「―――、《意思伝達(テレパシー)片道(ワンウェイ)》」


 ヨーレイの魔法が発動し、術者を中心に周りへ魔力の波が広がる。

 それが広がりきったところで、ヨーレイが頭の中で先程スミノに伝えられた事を復習する。


『―――。以上だ。皆、私達の頭上を黒い飛竜(ワイバーン)が二回通った。あと三回通るまでには必ず遂行せよ』


 《意思伝達(テレパシー)片道(ワンウェイ)》は魔法を行使した者が味方の脳に直接話しかける事が可能な魔法で、意思疎通が出来る通常の《意思伝達(テレパシー)》と違い、一方的な伝達しか出来ないものの、その分効果範囲を拡張する事が出来る。

 今回の様に一方的に指示を出す場合に効果的な魔法だ。

 ヨーレイ自身は《氷の妖精の加護》と、他の団長達と比べると見劣りするが、《支援王》の職種とこの魔法での戦場に置いて重要な情報の共有を可能とする事で、第四騎士団の団長に登り詰めていた。


「後はホークアイ侯爵の策次第か。……ん?あれはなんだ?」


 戦闘に手一杯で今迄気が付かなかったが、空を駆る飛竜(ワイバーン)からばら撒かれる大樽の数々。

 城壁にぶつかると中身の液体を撒き散らせているが、その程度で怯む様な敵陣営では無い。


「しかし、この匂い…………。あれは酒か?まさか……」

「団長!次の一周で最後だと思われます。退避を!」

「時間が無いか。総員、城壁から離れろ!間に合わない者は全力で障壁を張れ!」


 酒を撒いてからやる策としては火計が最初に思い付いつく。

 戦場で主に用いられるのは油だが、それが無い緊急時には酒精の高い酒類で代用する事もある。

 そこに思い至ったヨーレイの内心は穏やかでは無かった。

 多数の敵兵を葬るには効果的なやり方だが、その結果この綺麗な王城が燃えてしまう。

 勿論、城と人とどちらが大切かと言われたら言う迄も無い。

 しかし、この国の象徴として建国当時から王国全土を見守ってきた王城が燃えてしまうのは何とも忍びない。


 そんな事を考えている内に飛竜(ワイバーン)が最後の一周を回って通り過ぎる。

 城ならまた建てれば良い、きっと陛下もそう言うだろう。

 そんな事を考えながら、敵兵の侵入を防ぐ様に自分と門の辺り一帯に魔力を込めに込めた防御障壁を張り巡らせる。


 ヨーレイの障壁が張られたと当時に轟音が鳴り響き、城壁近くの敵が意識を失い、命を失っていくのが見えた。

 何事か?と考える暇も無く、その何かが障壁に激突。

 障壁を伝わり、目の前に敵兵をも昏睡させていく。


「これは…………雷魔法か!」


 そう、ヨーレイが考えた通り、ユウリが使ったのは雷魔法。

 正確には雷属性を付与した隼の爪(ファルコクロー)、【黄爪】であった。

 水よりも不純物が多く、電気を通し易い酒を城壁の外側に撒き散らせ、そこに黃爪を放つ事で、王城はおろか城壁すら殆ど傷付けず、城壁近くの敵兵を一層する作戦を取った。

 その為に退避もしくは障壁展開による防御をスミノに伝えさせて、味方を巻き込まない様にしたのだった。

 その効果は抜群だった。

 門の近くにいた者や城壁を登ろうとした者・堀に落ちている者の殆どを行動不能に追い込んでいる。

 流石に上位の冒険者や第二騎士団は危険を察知し、それぞれ対応しているので、被害は少なそうだ。

 それでもユウリの目論見通り、無限とも思えた敵の半数以上を行動不能にした事で、数で有利に立ち兵の士気も上がっている。


『ホークアイ侯爵がやってくれた!今が好機だ!卿だけに任せておくわけにはいかん!我々方舟の意地を見せてやれ!』

「「「「「「おおぉぉぉお!!!」」」」」」


 ユウリの攻撃が止んだ後の好機を逃す訳も無く、兵を鼓舞し、残党の殲滅を始める第四騎士団。

 まだ勝利が決まった訳では無いが、それでも一筋の光明が見えた今、勝機を逃すまい。と、方舟の一員と最後の力を振り絞る。

 この戦いに終止符を打つ為に。

次回はユウリ視点から始まり、視点がちょいちょい変わります。

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