第八十六射目
「ユウリ、どうする?王都の近くで降りて、モリア殿のロードランナーに乗せてもらうかい?」
「いえ、今は少しでも早く着きたいので、そのまま王城に向かって下さい。王城の方々ならクロは知っているでしょうし、僕がいるなら大丈夫だと思いますから」
「了解。何かあったら責任取ってもらうよ」
「勿論」
僕達はそのまま一直線に王城に向かい、門の前に降り立つ。
王都上空を飛ぶ時に住民が少し騒いでいるのが視えたけど、今回ばかりは勘弁してほしい。
「何者だ!」
「この様な無礼をしてしまい申し訳ございません。私は陛下より二つ名【流星】の地位を賜ったユウリ=ホークアイ名誉侯爵と申します。陛下からの命によりアリアから馳せ参じました」
「こ、侯爵様でございましたか……。こちらこそ無礼を……」
「門兵としての職務を全うしようとされただけで咎める事などございませんよ。陛下の所に案内していただけますか?」
「しょ、承知いたし―――」
「それは私がご案内致します」
門の奥から現れたセバスさんが声を掛けてくる。
ここから先は僕のみの案内となるらしい。
「分かりました。リックさん、モリアさん!ここまでありがとうございました!」
「侯爵閣下もご武運を!」
「この辺りに待機してるから必要ならまた呼んでくれ」
二人と門兵の人達にお礼を伝え、彼の案内で陛下の執務室まで向かった。
「陛下、失礼致します。ホークアイ侯爵をお連れしました」
「入れ」
一礼をした後に執務室に入ると陛下と宰相の他にもう一人、僕の知らない人物が立っていた。
「よく来てくれた。まさか王城の前に直接飛竜で来るとは思わなかったが……」
「それに関してましては申し訳ございません。緊急要する自体だと思いまして無礼ながら……」
「良い。責めてる訳では無いからな。むしろ早い分にはこちらにとっても有り難いからな」
「それで、私を呼んだのは……」
「今回での件は聞き及んでいるだろう?」
「はい。王家暗殺未遂が起こり、その首謀者が第二王子の可能性があると……」
「そうだ。当日の夜に北へ向かったとの報告があるが、定かでは無い。セバスからの助言により、卿が適任だと言われ呼び寄せたのだ。卿の加護でエドワードの足取りを追ってほしいのだ」
成る程。
僕の加護で嗅覚強化で残った匂いを辿れば、何処に向かったか追跡は容易だろう。
「かしこまりました。微力ではありますが、その任、必ずや遂行してみせます」
「うむ。頼んだぞ。ところで、何故そんなに堅苦しい言葉遣いを?」
「多分俺が居るからでしょう。そうだろ?ホークアイ侯爵」
陛下の側に立っている人物の言葉に首を縦に振り、肯定する。
兜は被っていないが、全身に魔法銀の鎧を纏い、腰には剣を携えているこの男性は……。
「俺は方舟第一騎士団長【天剣】のミトス=ユリアスだ。よろしく」
「ご存知だとは思いますが、ユウリ=ホークアイ名誉侯爵と申します。陛下より【流星】の二つ名を賜っております。こちらこそよろしくお願い致します」
「ユリアスの事なら気にするな。此奴の方が余に対して無礼だからな」
「ははは……」
「陛下」
「分かっておる。では着いて早々済まないが、ホークアイ侯爵」
「はっ…………。ん?」
「来客中、失礼致します!」
「どうした!?エドワードが見付かったのか?」
「いえっ!王都内で第二王子派を謳っていた者達が陛下への反乱を起こしました!衛兵と第四・第五騎士団及び魔法師団は既に王都中で交戦を始めています!」
「何だとっ!」
飛び込んできた兵士の話はこうだ。
元々第二王子を次の国王にしようと画策していた幾つかの伯爵家を筆頭にそこに従う子爵・男爵家が自らの兵と金で雇ったと思わしき冒険者を率いて王城に向かっている。
幸い住民に危害を加える気は無いのか死傷者はいないが、それを止めようとした王国兵は既に負傷者が出始めている。
「ユリアス!直ちに第一騎士団を鎮圧に向かわせろ!」
「はっ」
「セバスチャン!第二騎士団には住民の保護を指示だ!」
「はっ」
「へ、陛下……。それが……」
「まだ何かあるのか!?早く述べよ!」
「じ、実は……。第二騎士団長もその反乱軍に参戦していると外の兵から……」
「それは事実か?」
「はい……。直接の戦闘に参加はまだしておりませんが、第二騎士団と思わしき装備の面々が反乱軍後方に控えているのが確認されています」
「陛下、俺が第二騎士団の足止めに向かいますか?」
「…………いや、事実確認が先だ。まずは既に戦闘が始まっている場から抑えろ」
「承知しました。では行って参ります」
「任せたぞ。第一騎士団が到着次第、まだ動ける兵を住民の避難に回せ」
「はっ」
陛下は情報が錯綜している状態でも迷い無く指示を出す。
昨日の件がまだ終わってないタイミングでの法衣貴族の一部と第二騎士団の反乱。
別件だとは到底思えない。
「陛下、僕はどうしたら?」
「ふむ。本来ならばそのまま愚息の足取りを追ってほしいが、今はの状況ではそうは言ってられん。立入禁止の区域以外の全ての場への立ち入りを許す。必要とあれば短剣を用いて、その場に居る者達へ卿が指示を出し、反乱軍の足止めに加勢してほしい」
「分かりました。……っ!陛下、悪い情報が視えました」
「聞きたくないが……申せ」
「第二騎士団と思わしき騎士達が、こちらの兵と交戦を始めました。団長を拝見した事が無いのですが、全身鎧を着用して、大きな戟を持っているのが…………」
「あぁ、間違いない。第二騎士団長【天戟】のゴリアテ=ボルトンだ。付き従う様に装って、後ろからこちらに加勢をしてくれる、僅かな可能性に掛けていたのだがな……」
「そうですね。立ち回りと言い、戦い方と言い、間違いなく敵陣営だと思います」
「そうか…………。ではホークアイ侯爵。第二騎士団の足止め、もしくは殲滅を頼みたい」
「…………良いのですか?」
「王国にとっては騎士団が一つ無くなるのは痛いが、そうも言ってられん」
「承知しました。では……」
「あぁ……。頼む」
「はっ」
一礼して僕は執務室から駆け出した。
現在の戦況はこちらが優勢だが、第二騎士団が本格的に動き出したら第一騎士団が完全に封じられてしまう。
そうなったら、住民や家他の貴族・家屋を守りながらの戦いでは第四・第五騎士団がいても分が悪いだろう。
魔法師団の面々も高火力の魔法が使えない、遮蔽物の多い街中では苦戦は必至。
相手はきっと死に物狂いで突貫してきてしまう。
死を覚悟した兵と守るものが多過ぎる兵。
どちらが有利かは火を見るよりも明らか。
僕は必要とあらば王国印付きの短剣を使い、各所の兵や従者に指示を出しながら、第二騎士団が集まる戦場を見渡せる広場へと駆け抜けた。
ここから先はシリアスが続きます。
魔が差して途中に小ボケを入れたらごめんなさい。




