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【完結】流星を放つ鷹【鷹の眼の射手】  作者: まっしゅ@
第五章 邂逅と別れ

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第七十四射目

「さて、まずは―――」


 亡命者達の処遇について、クランベイン団長が話し始めようと口を開くが、珍しくウィリアムが話を遮り、質問をした。


「お話し中に失礼いたします。少しよろしいでしょうか?」

「貴方が亡命者の筆頭、ウィリアム殿か。どうぞ」

「自己紹介もせず重ね重ね失礼いたしました。お尋ねしたい事があります。我々の処遇が決まったとの事ですが、公国との交渉がもう終わったのですか?」

「あぁ。それも含めて今から説明しよう」

「申し訳ありません、気を急いてしまいました」

「自分達の人生がかかっているからな。しょうがないだろう」


 ウィルも焦る事があるんだ。

 自己紹介もせず、これから話してくれるであろう事を質問する位に焦っている。

 それもそうか。

 自分のみじゃなくて、自分に付いてきてくれた、姉上が身を挺して逃がしてくれた者達の人生を背負っているんだ。

 誰だって焦るだろう。


 クランベイン団長はウィルの質問も含めて、詳しく話してくれた。




 まずは交渉が早かった理由。

 交渉を任す為に北の領主ローリアル辺境伯の領地へと使者が訪れた際には、既に公国の五代公爵の一人、ブラックローズ公爵家の遣いが滞在していたらしい。

 何でも、亡命者がブラックローズ領を抜けて港から出港するのを取り逃がしてしまい、船の状態的に他国に辿り着く事が出来ないと思われたが、念の為一番可能性の高いシンフォニア王国に向けて彼等が出港した日の翌日には使者を出す事が決まり、その者が王都からの使者が来る前日にプレリュードへと到着していたとの事。


 次に交渉の内容、というよりそもそも交渉自体がなされていない。

 その使者からは、

『現在、我が国の法で奉公公爵に地位にいる事に不満を持つブルーローズ一族が領民を唆し、ブルーローズ領からの亡命に至った。領民に罪は無いので、貴国に問題無ければそのままそちらの国に住むのを許してほしい。もしも、そちらでは亡命者を奴隷にせねばならないならば犯罪奴隷とは別の扱いを受けさせてほしい』

との事。

 王国側は元々そのつもりだったので、その点はすんなりと決まった。

 なお、王国から見舞金を渡すつもりだったが、引き受けてくれた謝礼として相殺となった。


 最後に、どうやってオスリア大森林を超えたのかと以前より交流がある理由について。

 移動手段においては、公国の秘匿情報の一つになるので詳細は教えられないらしく、ただ、『公国でも一部の者のみが可能』とだけだった。

 交流がある理由は、

『我が国では以前より、南大陸との交流を持ちたいと考えており、大森林の移動方法が確立されて以来、いずれはシンフォニア王国と親交を深める為、まずは最寄りのローリアル辺境伯と繋がりを持とうと考えた』

と説明があり、特に相手側の発言には特に問題が無かったので、それで納得、了承した。

 しかし、その様な重要な情報を共有していなかったローリアル辺境伯に対しては陛下より改めて苦言を呈す事になった。

 ローリアル辺境伯曰く、『まだ相手の考えが読めなかったので、不確かな情報で混乱をさせないよう報告を控えていた』らしい。

 いや、ローリアル辺境伯、報・連・相はしっかりしなよ……。


 以上が今回分かった・決まった事で、詳しい実態は今後も調査中らしい。




「これが今分かる全てだ。何か気になる点は無いかな?」

「一つ、良いですか?ブルーローズ一族が唆したと言われたみたいですが、その一族への処罰の如何は何か聞きました?」

「それについては、『現在公国内で真相の調査中、詳細が明らかになれば改めて報告させていただく』だそうだ」

「そう……ですか…………」

「リシリアお嬢様……」

「他には何も無いか?無ければ、亡命者達の話に戻らせてもらうが?」

「はい、問題ありません」


 公国にもローリアル家にも気になる点はいくつもあるが、一先ずウィル達の事についてまずは片付けていく為に頭を切り替える。


「亡命者の正確な人数は合計二百四十二名、その内男性百七十一名、女性七十一名だ。老人はおらず、成人済みが百八十六名、まだ成人を迎えてない者が五十六名だ」

「……そうですか」

「…………」


 ウィルは悔しそうに唇を噛み、ケティは俯いて肩を震わせている。

 元々は千人程居たらしいので、その内の七割強が死亡したか行方不明となってしまっている。

 悔しくて、悲しくて仕方ないのだろう。

 その拳を振り上げたくても、どこに向けて振り下ろせば良いか分からず、ただただ憤りは募るばかり。


「そして、そこの二人を含めた全ての者を特殊奴隷として扱う事が正式に決まった。身柄を預かるのは……そろそろ来る筈だな」

「ん?…………あぁ、成る程。クレア、申し訳無いけど、外に出てお客様をお連れして」

「はい、かしこまりました」


 身柄の預かりを一任した人物。

 クランベイン団長が名を言おうとしたら、丁度その人が僕の家の近くまで来ていたのが僕の耳に届いた。

 クレアが連れてきた人物は勿論、


「マロさん、ご無沙汰してます」

「やぁ、ユウリ。いや、今はホークアイ侯爵閣下ですかな?」

「マロさんまで……。今まで通りでお願いします」

「そうかそうか。まぁユウリならそう言うと思っていた」


 モイ商会会長、マウロ=モイさん。

 国内最大の豪商であり、トルネネの長に君臨する人物。

 僕もよく知っていて、信頼が置ける一人だ。


「モイ会長、この度は身柄の保護を快く受けて下さり、誠にありがとうございます」

「クランベイン殿、頭を上げて良い。何でもユウリの故郷の人間だと聞いた。それなら僕以上の適任はいないだろう?」

「もっともです」

「ユウリもそれで良いか?まだ直接会っていないから分からないが、必要な物は全て用意するつもりだ。勿論、成人してない者には相応の教育と信託の儀も行う」

「マロさんなら安心して任せられます。必要な経費は僕への報酬から差し引いて下さい」

「そうはいかん。僕には返さなければいけない恩があるからね。ただそれだと気にするだろうから、必要な物の三割程を報酬から引かせてもらうとしよう」

「ありがとうございます」

「この程度気にするな。何て事は無い」

「この機会なので、一つ我が儘を良いでしょうか?」

「ん?あぁ……、そこの二人はこの場で契約を行う準備はしてあるぞ」

「流石ですね」

「これでも一介の商人だからな。ユウリ程じゃないが鼻は良いんだ」

「モイ会長……。貴方が一介の商人ならその他は塵芥ですよ…………」


 颯爽とこの場に訪れ、心配事を全て知っていたかのように解決していくマロさん。

 正に救世主だ。


「それよりユウリ、お前さん屋敷と人材はどうするつもりだ?」

「え?家ならこの元マロさんの家がありますし、人は足りていますよ?」

「…………何を呆けた事を言っているんだ?」

「え?えっ?」

「ユウリ。君は貴族、侯爵になったんだそ?」

「はい、そうですね?」

「はぁ……。ウィリアム殿、普段のユウリはいつもこうなのか?」

「そうですな。十の頃までしか私は存じ上げませんが、幼い頃から地頭は良く勤勉で、勘も鋭く思慮深かったです。しかし、良い方の自分の地位や立場等になるとどうも……」

「あぁ、成る程」

「ユウリ、お前さんってやつは……」


 え?え?何?

 何で皆呆れた顔してこっちを見てるの?

 ケティは『そんなユウリ様も可愛い』みたいな顔してるし。


「はぁ。ユウリ、貴方は侯爵。お父様と同じ地位になったんだよ?侯爵が普通の家で、騎士団も衛兵団も使用人も雇わず暮らすの?」

「あ…………」

「本当に分かって無かったんだね……」

「流石ユウリ様と言うか何というか」

「こら、クルト。それは私達が支えれば良い事でしょう?」


 クルトも呆れているが、クレアはやる気満々な顔してる。




 ウィル達を含む亡命者の身受け先が見つかり、二人は僕と契約が決まったので、今回の事は一段落と思っていたのに…………。

 これから屋敷と人材探しで、結局ゆっくり出来ないのか。と天を仰ぐ僕だった。

 ユウリは基本全てにおいて必要以上を望む事はありません。

 実力は生き抜く為と曽祖父に叩き込まれ、ただそれが習慣になっているからどんどん実力が高まっていて、金銭は色々な所から貰っているけど、日用品や姉弟の給料+α程しか使わず貯まる一方。

 侯爵の地位も本当なら拒否したかったが、今回の件では必要だと思ったので受けた。程度なんです。

 だから、現在自分がどれ程の立場でも、衣食住と大切な人を守れればそれで問題無いと考えており、その結果が屋敷と人材の確保が頭に無かったと言えます。

 他人に敏感で自分には鈍感なタイプ。

 ただ、自分への負の感情には加護もあり、異常なまでに敏感。




某作者『こんなドジな子にする予定は無かったのに気付けばこうなっていた』

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