第七十二射目
半分は設定の説明パートなので、短いけど長いです(矛盾)。
「皆、フラン。集まってくれてありがとう。これより、会議を始める」
ウィルとケティがこの家に来てから一週間。
元々公爵家で執事長とメイドをしていた二人は屋敷と違い、少し広いだけの一般宅の家事は簡単にこなしてくれているので、僕・クレア・クルトは今まで以上にそれぞれの仕事をこなす事が出来ている。
だが、現在の我が家には重大な問題がある。
偶然休みが重なった今日、話をする為に昼食前に皆に集まってもらった。
「会議ってそんな大事な事なの?」
「うん。とても大切な話だ」
「「「「…………」」」」
フランの問いに僕が答えた事で、ウィル以外の三人は緊張した面持ちで次の言葉を待っている。
「それで?何の話?」
「実は……」
「実は……?」
「―――ない」
「え?」
「家名と家紋が決められないっ!あと一週間かそこらで陛下からの使者が来るのに何も決まってないんだよっ!」
「…………それだけ?」
「そう、それだけ!でもとても重要な事なんっとぅあい!」
「もう!心配して損したじゃん!あんな真剣な顔して大切な話があるなんて言うから!」
とても大事な家名と家紋について相談をしようとしたら、フランに思いっ切り頭を叩かれた。
解せぬ。
「でも重大なのは間違いないでしょ……」
「まぁそうなんだけどさぁ〜……」
「ふぅ。ユウリ様が緊張した話し方はするから私まで緊張しちゃいましたよ〜」
「でも家名と家紋ですか……。何故そのような話に?」
事情を説明する暇が無かったので、改めて皆にこうなった要因を伝える。
「確かに、それは必要になりそうですね。ですが、とうとうユウリ様が貴族ですか……」
「まぁ、まだ確定じゃないよ。それに貴族と言っても一代限りの名誉貴族だろうけどね」
「名誉貴族とは言え、貴族は貴族。そうなれば歴史に名が残る家名や家紋は確かに重要な話ではあります」
「流石クルト!分かってくれるんだね!」
「それでも、あの雰囲気で話す事ではありませんよ?」
「はい、ごめんなさい」
「あれ?貴族って代々受け継ぐんじゃないんですか?」
「そっか。ケティは叙爵とかを知らないんだっけ?」
「はい。私はイース公国以外の事はあまり……」
「私が説明しましょうか?」
「え?ウィルこの国の事も詳しいの?」
「いえ、元々公爵家執事長として最低限他国の事情は存じ上げていましたが、こちらに来てから改めてこの国の成り立ちから法律や習慣等、必要だと思われる様々な事を一から勉強し直しました」
「え?一週間で?全部?」
「はい、一週間で。完璧とは言えないかもしれませんが、殆ど答えられると思いますよ」
「ウィルって凄いんだね」
「いえ、執事として当然かと」
世界中の執事さん、これが当たり前らしいよ。
これが本当だとしたら執事業界激務過ぎませんかね?
ウィルだけだよね……?
改めてウィルの話を皆で聞いてた。
僕も勘違いしているところがあったら恥をかくし、念の為。
本当に念の為だからね?
「では、僭越ながら。この国には永代貴族と名誉貴族があります。永代貴族とは、代々当主が移り変わりながらその家は国が無くならない限りは存続し、何かしらの問題を起こさなければ取り潰しや降格は無く、その爵位を継いでいく事が出来ます。所謂皆様が知る、一般的な貴族ですね。それに対して名誉貴族は何かしらの功績をあげ、『叙爵に値するものの、永代貴族にするにはあと一歩足りない』と判断された場合になる一代限りの貴族となります。伯爵位以上の次期当主以外の子が家を出る時に与えられる準男爵下や部下を任命出来る騎士爵、これらも名誉は付きませんが名誉貴族に該当します。ここまではよろしいでしょうか?」
確認の為に間を開けたウィルの問いに皆無言で頷く。
「続きを話しましょう。叙爵の際の家名ですが、永代貴族は国王陛下から与えられる事が殆どです。名誉貴族に関しては、今後永代貴族になる可能性がある場合は陛下から与えられる事もございますが、大半は一代限りですので、ご自身で名付ける事が多いですね。今回ユウリ様であれば後者に該当します。因みに、永代貴族の殆どと申し上げたのは、一部は名誉貴族から更に功績を積み重ね、永代貴族に移り変わった際にそのままの家名を使用している方々が稀にいらっしゃる為です。簡単ではありますが、以上となります。質問はありませんか?」
皆首を横に振り、質問が無い意思を示した。
「ありがとう、ウィル。ケティも分かったかな?」
「はい!ありがとうございます!ウィリアム様」
「いえいえ、お安い御用です」
名誉貴族だからと言って、適当に考えてたら恥ずかしいのは自分。
だから、ちゃんと考えているんだけど、いまいちピンと来るものが思い付かないので、今回の相談になった。
「あ、ウィル。質問が無いって言っておきながら何だけど、自分で付ける場合、貴族や商人・二つ名な持ちはそれぞれどういった家名を名乗る事が多いの?」
「それは様々でございます。商人の場合は皆が覚えやすく、印象に残りやすい名を名乗るのが殆どですね。二つ名持ちや名誉貴族の場合は、功績をあげた本人を象徴するものであったり、二つ名をそのまま使う者や歴代の英雄や偉人の名を引用する事もありますね。つまりは、決まりが無く、好きにどうぞ。状態です」
「だったら二つ名から名乗れば良いんじゃない?」
「ユウリ=ホークアイって事?」
「ユウリ=ミーティアもユウリ様の場合は名乗れますね」
「じゃあじゃあ、二つ合わせてユウリ=ホークミートはどう?」
「それじゃあ、鷹の肉にならない?」
そこから、昼食の間も行儀が悪いとは分かりつつも、皆で家名をひたすら考え続けていた。
そして……。
「やっと決まった……。結局最初にフランが言ったユウリ=ホークアイが一番しっくり来たよ」
「色々組み合わせたけど、なんかイマイチだったね」
「クーテアイズとかも良かった気がしますけど」
「やっぱりホークミート……」
「いや、だからそれだと鷹肉大好き人間じゃん……。そもそも食べた事無いけどさ……」
「ご用意いたしましょうか?」
「共食いは勘弁して……」
こうして、ようやく家名が決まり、安堵のため息をつく。
皆で和気あいあいと話し合うのは正直楽しかったし、ウィルとケティがいるのが新鮮で不思議な気分にもなった。
『長かった〜』『難しいものですね』と様々な感想が飛び交いつつ、ホークアイ家初の作戦会議は無事終了したのだった。
「ところで、家紋はどうされるのですか?」
夜になってウィルからそう言われて、もう一度頭を抱える事になったのはまた別のお話。
……………………あぁ〜、どうしよ〜。
貴族の設定を何処かに書いた気もしたけど、見当たらない……。
もし、既にあったらコメントでご指摘いただけると有り難いです。




