第七十一射目
この話を執筆してる際に総合評価が100ptになっているのに気が付きました。
ここまで続けられたのも読んでくれている皆様のお陰です。
これからも拙い文章と虚弱な語彙力ですが、皆様の暇潰しのお供になれるように頑張って続けていきたいと思いますので、応援宜しくお願い致します。
2023/9/27
銀貨百枚→金貨一枚
に修正しました。
単価的には
銀貨百枚=金貨一枚なので意味合いは変わりません。
翌日の昼、リックさんが陛下に亡命者の処遇についての報告後、返答を持ち帰ったという報せを受けて、またもや辺境伯邸にお邪魔している。
「あちら側の返答次第だが、こちらにいる間は向こうから攻撃が無かった以上、牢に入れる必要は無い。客人として扱え。か」
「はい。詳しい文書はこちらです。監視は必要ですが、とりあえず牢からは出した方がよろしいかと思います」
「ただ、一部には公国からの暗殺を怖がる者も居る。そういう者達は自ら希望したと一筆書いてもらって、牢の中にいた方が安心するかもしれないね」
「そうですね。希望者を確認します」
「苦労をかけるね、リック」
「本当に。次の報酬期待してますよ?」
「あぁ、期待していてくれていいよ」
「では、これで失礼します。ユウリもまた今度」
「あ、リックさん。良かったらこれ、休みの日にでも飲んで下さい」
報告が終わり、次の仕事に向かうリックさんに木箱を渡す。
考えた結果、蜂蜜酒を贈る事にした。
「これは……?はっ、蜂蜜酒っ!?」
「はい。リックさんにはお世話になってますから」
「良いの?こんなに貴重な物を……?」
「勿論です」
「ありがとう、ユウリと知り合えて幸せだよ……」
「いや、なんか蜂蜜酒でそこまで言われるとは思いませんでした……」
リックさん、疲れてたのかな?
蜂蜜酒を上げたら泣いて喜んでるし……。
「じゃあ行ってくる!旦那様も失礼しますっ!」
リックさんは腰の魔法の小鞄に木箱を収納してから、もう一度こちらに向けて挨拶をして部屋を出ていった。
「ゆ、ユウリ……?その蜂蜜酒ってまだあるかな…………?」
「はい?とりあえずあと二箱はありますよ?」
「売ってくれないかな……?」
「え?差し上げますよ?どうぞ」
「本当に?良いのかい?こんな貴重な物をっ!?」
なんかリックさんと同じ様な事を言ってるけど……、そんなに貴重だったっけ?
確かに子供の頃も殆ど食べる事は出来なかったけど……。
あっ…………。
「……もしかして蜂蜜って普通は滅多に手に入らないんでしたっけ?」
「もしかしなくてもそうだよ。特に混じり物が入っていない最高級品だったら小瓶一つで金貨一枚はするよ?」
「あぁ……。だからですか……」
「こんな物ポンポン出すんだから、もう君の指輪の中身だけで国が買えるんじゃないかな?」
「ははは……。そんな事は…………」
爺ちゃんと暮らしていた時は普通に食べてたから忘れていた。
それより指輪の中身で国が買えるなんて……無いよね?……多分。
「ところで、今後はどうします?」
「おっと、そうだったね。忘れていたよ」
蜂蜜で忘れるなよ、ポンコツ領主。
「ポンコツで悪かったね。さっきリックから貰った文書は見る限りはユウリの希望通り、二人を引き取る事は可能だと思うよ」
「では、ウィルとケティに聞いてみます。……ってさり気無く心を読まないでもらって良いですか?」
そんなに顔に出やすいのか?僕は。
それよりもとりあえずは二人の身柄を預かれそうだ、あとは返事次第だけど。
「それに監視及び護衛という点なら、誰よりもユウリが適任だしね。襲撃者が来ても、逃げ出そうとしても見付けられるだろう?」
「その辺りはご安心を」
「頼もしいね」
「それと、これを渡しておこう」
「魔法の小鞄ですか?」
「あぁ。君の知り合いの二人に渡しておいて。中に三ヶ月は生活出来る程度の資金が入っている。勿論、その魔法の小鞄も今後そのまま使ってもらって構わないよ」
「いや、お金なら僕が用意しますし、むしろ小鞄代をお支払いします」
「それは必要無い。君にはこれを貰ったからね。物々交換だよ。蜂蜜酒と比べたら安いから君の方が損だけどね」
ノイ様から渡されたディーセス辺境伯家の家紋が施された魔法の小鞄。
これは僕が課題を出された際に依頼していた品だ。
ベルトに付けられる程度の大きさにした上で、容量はこの執務室と同等。
売り物にするなら一つで金貨百枚はする代物。
蜂蜜酒の方が高いなんて事は有り得ない筈だ。
それを一年と経たずして造り上げた辺境伯お抱えの錬金術の加護持ちは相当優秀なんだろう。
そして現在、辺境伯一家用の装飾付きと、不沈艦の全団員と造った人達には装飾無しの二種類が造られ、それぞれに渡されている。
ゆくゆくは屋敷で働く人や直轄の衛兵にも、装飾や形を変えて渡していく計画らしい。
「これは執事用とメイド用の試作品だよ。制服に合わせたデザインにしているから、使用感を教えてもらえたら助かる」
「でも……これ、家紋入りですが……」
「それがあればユウリが側に居なくても、私が認めた者となるからね。あっても損はしないだろう」
「心遣い感謝します。二人も喜んでくれるでしょう」
「そうであれば私も嬉しいよ。あともう一つこれに書いてあったんだけど、これはユウリに決めてほしいんだ」
「僕に決めてほしい事……?」
何だろう?
まさか亡命者全員の処遇とか言われたらとてもじゃないけど決めきれないぞ?
雇うお金は無い訳では無いけど、家には必要無いし、研究もおいそれと他人に見せられる代物ではない。
「そう……。それは……。君の家名と家紋だよ」
「へ?」
家名と家紋……?
貴族や豪商でも無いのに……?
僕は今相当な阿呆面をしているのだろう、ノイ様は笑いながらも詳しく説明してくれる。
「二つ名持ちになっただろう?例えば、モイ会長もそうだけど、【陛下から認められた者】は家名と家紋を持つ事が許されているってのは知っているよね?」
「はい、それは知っています」
「忘れたかな?君も認められた者だからね?」
「あ。そうだ」
陛下直々の二つ名だからそうなるのにすっかり頭から抜けていた。
でも、商人は家名を商会の名前に使用したり、商会のシンボルとして家紋を使うけど僕には要らなくないか……?
「書いてあるのはとりあえずその事だけだね。詳しくは後日遣いを出すからその者から聞いてくれってさ」
「うーん……。僕には二つ共要らないと思うんですが……」
「あくまで予測だけど、今回の件は他国が絡んできてて、君は魔獣戦線の時から既に当事者だ。そうなると表舞台に出る機会が増えてくる。そうなった時にたとえ二つ名持ちと言えど、『何処の騎士団にも所属していない、ただの一般市民です』なんて言えないだろう?だからそれを踏まえた家名と家紋だよ」
「え……?でもそうなると……」
「うん、ユウリに考えてる通りになると思うよ?まぁ、使者が今日明日来る事は無いだろうから焦らなくても良いさ。どんなに早くても二週間後だろうし、ゆっくりとまではいかないけど、考えておきなよ」
「分かりました……。じゃあ僕はウィルとケティに身柄を預かる件を伝えてくるので、そろそろ失礼します」
「うん、いってらっしゃい」
物凄い笑顔で見送ってくれるノイ様、絶対に面白がってる筈だ。
対象的に陰鬱な顔をしているだろう僕は、一礼して二人が居る地下牢に向かった。
一難去ってまた一難、僕ってやっぱりいざこざを呼び込む天才なのかもしれない。
憂鬱な話はあったけど二人の件は朗報に変わりなく、事情を説明したら喜んでうちに来てくれるとの事なので、少なくともこれから処遇がどうなるか決まるまでは一緒に暮らす事が決まり、
『よし!なんやかんや遠回りしたけど、家事してくれる人を二人確保出来たから目標達成だ!』
と無理矢理前向きに考えながら帰路に着いた。
某鷹の目「信じられるか?家事をしてくれる奴隷を購入する為に外出したら、他国に居た筈の生家の元執事長と専属メイドが亡命してきて身元預かりになったんだぜ?確率的にどんなに確率よ?遊びに行こうと外に出たら、海外に行った筈の友人が家の前を偶然通りかかったレベルだろ?有り得ないよな。ハハッ」
※本文のユウリとこの某鷹の目は一切関係ありません。イメージを壊してしまった方、申し訳ありません。




