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第十三射目

 爺ちゃんが死んでから一年が経った。

 一週間位は何もする気力が起きず、食事もまともに摂らずに過ごしていたが、流石にそれ以上は爺ちゃんが生き返ってきて拳骨してきそうだったので、少しずつ、更にもう一週間程かけて元の生活に戻した。

 生き返ったらそれはそれで嬉しいんだけど。


 独りになってからは今まで以上にがむしゃらに修行をし始めた。

 今は落ち着いているけど、その時は何かに打ち込んで何も考えない様にしていたんだと思う。

 そのせいで普段はやらないようなミスをして危うく死にかけた。

 その時にやっと気付いたんだ。

 せっかく救ってもらえたこの命を無駄にするなんて、誰が許しても僕自身が一番許してはいけないことに。

 そこからの修行はあくまで生きる事を優先して、且つ最大限の成果が得られるように全力で。が、目標になって、今に至る。


 僕は今日で十五歳。成人だ。

 爺ちゃんが死んだ後に決めていた事がある。

 この森から出て世界を知ろう。と。

 

 その為に着々と準備や片付けをしていたある日、なんとなく魔導具部屋の引き出しを開けたら手紙のような物を見つけた。

 勝手に見て良いのか少し悩んだが、怒られる相手もいないので読ませてもらった。


 そこには自分の死後、僕のこれからについて綴ってあった。




『これを読んでいるってことは儂はもうこの世にいないだろう。

 儂が死んでからお前はきっと一週間は泣いて、立ち直るまでに更にもう一週間は掛かっているはずだ。

 時間がかかりすぎだ、バカタレ。

 さて、本題に入るが、お前は成人したらこの森を出ろ。

 外の世界を知るんだ。 

 貴族ユリウスとしてではなく、ただのユウリとして。

 色んな事を、その目で見て、その耳で聞いて、その鼻で嗅いで、その肌で触れ、その舌で味わえ。

 そして、自分で考えてその後をどうするかゆっくり決めろ。

 他国に住んでも良いだろう。

 この家に戻ってきても良い。

 楽しい事を見付けることもあれば、世界の汚い部分を知ることもある。

 それが世界だ。それが儂らの生きているこのオスリア大陸だ。

 それをするためには、ユウリ。お前はまだまだ弱い。

 だから、この手紙が入っていた引き出しの下の引き出しに入っている物を持っていけ。

 これからの旅に役立つものを詰め込んでおいた。

 それらの全ては儂の人生最高傑作達だ。

 それを曾孫のユウリに託す。

 長くなってしまったな。

 元気でな。

 身体を大事にしろよ。

                  ユウリの爺ちゃんより


 追伸 これを見て泣くなよ、バカタレ』




 あの人、心を読むどころか未来が見えるんじゃないか?と疑問を持つくらいに僕のことを知っている。

 そんな手紙を読まされて泣かない方がおかしい。

 そして言われた通りに下の引き出しを開けると小さな箱があり、そこには魔空庫の指輪(ストレージリング)が入っていた。

 爺ちゃん、造れないとか言ってたのに造れてるじゃん。

 今指にはめている指輪を外し、新しい指輪をつけて魔力を通す。

 中身を確認したが・・・あの人どれだけ心配性なんだろう?

 今までつけていた指輪に入っている量の倍以上の食料や衣服、武器に防具と。

 まるで、国同士の戦争の際の物資かと思う量が入っている。

 質に関してもまた国宝とも言える品々。

 本で見た限り加工は不可能と言われていた古代樹を使った物が多い。

 特に異常なのは弓矢だ。

 魔力の通りが良い古代樹の芯をベースに鉄を超える強度の皮を何層にも貼り付けた本体に、この森に生息する危険度一級【地獄蜘蛛(ヘルスパイダー)】の糸を何重にも紡ぎ、強度と弾力性と魔力浸透性を限界まで高めた弦。

 これらを使った短弓と長弓が数十本ずつ。

 それとそれぞれに合う同じ古代樹の枝と葉で作った矢が四桁超えである。

 あ、説明書がついてる。え〜っと……。

『《錬金の精霊の加護》の力を振り絞った耐久強化と軽量化、消音化を付与しているぞ。因みに矢は貫通力強化と重力無視と空気抵抗無視を付与した。』って爺ちゃん、こんな事しなければまだ生きてたんじゃないか?

 いや、重力と空気抵抗無視って実質射程ほぼ無制限なのでは?この矢売ったら一本で家が買えそう。

 それ以外も衣服には自動浄化・自動修復・自動治癒・適温調整、防具類は耐久強化・防御力強化・軽量化・自動修復・魔力・気配・音遮断が付与。

 過保護にも程があるが貰える物は貰っておこう。

 元の指輪の中の物も移し替えて、指輪自体が入るか不安だけど問題なく入った。

 あれ?魔法鞄(マジックバッグ)中に魔法鞄(マジックバッグ)は入らないとかなかったっけ?空間が干渉して云々とかで。

 色々な事に驚きを全力で通り越して、呆れる。




 何はともあれ、家の整理も何もかも完了した。

 あとは一旦この家最後の一日を過ごして、明日の朝一に街を目指す。

 目的地はここから南にある【シンフォニア王国】だ。




 僕はこれからの生活に胸を躍らせベッドに入った。

 オスリア大森林の中で()()()育った僕は世の中の普通とはかけ離れてしまっている事を知らずに。

 これにて第二章 幼少期〜成人【オスリア大森林編】が終了します。


 ここまでがプロローグ的なお話になります。

 次章からは貴族世界でそこそこの常識は知りながらも自分の異常には全く気付いてないユウリの冒険がスタートします。

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