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1.ピアドリア国の教訓

新連載です。よろしくお願いします((。´・ω・)。´_ _))

大陸の端に位置する優美な港町で有名なピアドリア国の貴族の間には、妙齢になると繰り返し聞かされる教訓めいた物がある。


一つ、婚約期間は最低半年設ける事

一つ、男は伴侶となり得る女性に誠意を持って愛情を示す事

一つ、女はよい伴侶を得るため最大限努力する事


年中通して温暖なこの国は、気候のせいか或いは国民の気質のせいか、離婚率が異常なまでに高かった過去がある。


無論、その全てが非難されるようなものではない。やむにやまれぬ事情や、逆に幸運にも最良の伴侶と出会えた人たちもいる。


だが、離婚の原因の殆どが不誠実な男性に由来していた。婚姻の事実を隠す者、結婚と離婚・再婚を繰り返す者も少なくなかった。一夫一妻制の国であるはずなのに、浮気はしない方が珍しい程で、「長い人生一度は」「若気の至り」と、男性の間でそれは勲章のよう語られた。


反対に女性は貞淑さが求められた。遊び回る男性を家で待つ事が当たり前であり、多くの女性は耐え忍び、涙で枕を濡らしていた。女性の立場はとても低かったのだ。


転機が訪れたのは、一人の若い女性が浮気夫を相手取り裁判を起こした事だ。異国からお嫁に来た彼女は、苦笑いする男性の裁判官にはっきりと主張した。


「どうして男性は何をしても許されるの?妻だけが我慢を強いられるなんて間違っているわ。二人で支え合えないなら結婚した意味ないじゃない。私だって相手を選びたいし、自分がどう生きるかは私が決めるわ。」


裁判官を黙り込ませた彼女の真っ直ぐな言葉は、様々な人にも響いた。特にこれまで立場の弱かった女性が、好機到来とばかりに声を上げた。耐え忍び続けた女性たちは彼女に感化され、こぞって不誠実な夫に慰謝料請求付きで離縁状を突きつけたのだ。


役所の中で離縁状は山と積み上がり、各所は対応に大忙し。伴侶と財産を失った多くの男性が慌てふためき、中には往来で縋り付いて謝罪する者もいた。市民はもとより由緒正しい貴族の間でそれは大問題となり、ついに国が動く事態にまで発展した。王妃までもが離縁状を叩きつけたからだ。


かくして婚姻における男女の立場は完全に逆転した。


男性を見定める婚約期間は十分に設けられ、男性は誠実である事が最大の美徳とされた。女性は良き伴侶を得るため、その人となりを調べる事や、婚約期間中に多くのコミュニケーションをとる事が推奨された。


人の性は急には変わらないと思われたが、意外にも男性側のほうが変化をすんなりと受け入れた。何故なら多くの男性が、実はかなり無理をして浮気をしていたらしい事が分かったからだ。誰が最初に言ったのか「浮気は男のステータス」と言う言葉。苦しかったと男性たちは口を揃え、喜んで尻に敷かれた。


以後、ピアドリア国は一途な男性と積極的な女性、という他に類を見ない国民性へと変わっていったのだった。



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