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でばっくバッカ  作者: 木兎太郎
第四章:古代技術
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第二十六話


 ラナは報告専用の白い伝書鳩「スズキ」に作成した報告書を託した。イコとミームがダンジョンへ向かってから既に三日が経過している。彼らは、未だに戻らなかった。何らかの緊急事態を危惧しつつも、イコとミームへの信頼から、あえてラナは見に徹していた。しかし、三日という日々は、危機感を成長させるのに十分な時間である。ラナがスズキへ託した報告書の内容は、バルへの捜索願のようなものだった。後は飛ばすだけだというのに、最後の最後に手はそれを拒絶していた。


「ふぅ、どうするべきかなぁ」


 クッション性のある椅子に、沈み込むように深く腰掛けた。それから天井を見上げて、今日何度目かに優先順位を整理する。二人への信頼か、それとも人命か、その間でラナの良心は揺れ動いていた。最善策は、間違いなく人命を優先する捜索願である。しかし、ここで二人をダンジョンから連れ戻せば、これまで築いてきた信頼関係が崩れてしまうような気がしてしまい、ラナの手から積極性を奪っていた。視線を下ろすと、対面ではチェリアがラナの魔導により稼働し続けている。彼女のおかげで、既に他社からの大口発注は終わりかけており、別段、別働体の二人が時間を要しても、大きな問題はなかった。


「駄目ね。やっぱり命には代えられないかな。スズキさん、よろしくお願いします」


 スズキの背を押そうと手を伸ばす――…も、ラナは途中で手を止めて視線を上げた。


「あらあら、まったく…変なタイミングで帰ってくるのねぇ」

「え?ようやく帰ってきた所で何なんですか?」と、イコは目を見開いた。

「それもそうね、おかえりなさい」

「…ただいま?」

 

 唐突なラナの挨拶に、戸惑いつつもイコは返答した。アデルの家を出てから、久しぶりの「おかえり」であり、イコの心に奇妙な衝動的感情の働きを齎していた。


「なによ、イコ。照れてるのかしら?」

「いや、まぁ別に」

「反抗期の子供みたいな返答ねぇ?照れちゃって、可愛い子なんだから」

「はぁ、疲れてるんですから勘弁して下さい」


 イコは、ハエを払うみたいに手を振るって、ラナの視線を煙たがった。


「で、どうだったの?」

「あぁ、まぁ期待には応えられそうです」


 そう言うと、イコは数枚の紙の束をラナに渡した。無言でそれをひったくると、ラナは熟読し始めてしまう。そして、バッと机から視線を持ち上げると静かに笑った。


「これは…バルがひっくり返るかも」

「恐らく、地下魔素脈化計画の問題は解決するはずです」


 不気味な笑みを浮かべるラナと共に、イコも静かに笑みを零した。そんな二人の様子を見て、ミームは疲れを加算された気がしていた。ようやくデスマーチから解放されたというのに、ラナの笑顔は常に新たな仕事を予感させる。すぐに自席へ戻ったミームは、無言で有給届の記入を始めたのだった。


――◇◇◇――


 誰もいなくなったバヘイラ迷宮寺院にて、一人の男がダンジョンコアに歩み寄る。彼は静かにダンジョンコアに触れると、美女を称えるような表情を浮かべた。


「もうすぐだ」


 それだけ告げると、男は再び闇に消えてしまった。



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