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でばっくバッカ  作者: 木兎太郎
第四章:古代技術
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第十九話


 ドンドン!全身が揺れて、ゆっくりと意識が戻っていく。掠れた景色を卸したてのワイシャツのようにパリつかせる為にイコは瞼を擦った。


「…よく寝たな」


 口内の粘着きを取る為に、デスクに置かれたコップから水分を摂取する。そんなイコの様子を、ラナは隣から観察していた。彼女の視線に気づくと、イコは誰が自分を起こしたのか、消去法で知ることができた。ラナ以外は、まだスヤスヤと寝息を立てている。どうやら彼女も眠っていたようで、まだ体が本調子ではないのか、両手を上げて背筋を伸ばすストレッチをしていた。全員が同時に睡魔に襲われるという不可解な状況に、寝起きというぼやけた思考のなかでも、イコは直ぐに疑問を覚えていた。


「職場で一日を終えちゃったみたいね…日常茶飯事だけど」

「…え?誰も起こしてくれなかったんですか?」

「歩合制のデバック課で、成績一位の部隊が眠ってたのよ。フロアに上司や他部署の人達でも入ってこない限り放置が妥当でしょうねぇ」


 ラナは、あらら、という感じでサムズアップをしていた。そんな彼女を見ながらも、イコは睡眠の原因について推理していた。…あのクッキーくらいしか心当たりがないな。となると、営業に来たハムサン社員が黒ってことか。…考えられる犯行動機は、強制的な契約ってところか。目が覚めて、魔素のない俺はともかく、ラナさんもハムサン社の名前は出さないし、そもそも淫夢を見せられたのは俺だけって可能性もある。契約破談となった原因の会話を仕掛けたのは俺だし、魔素量が少なかったから舐められたのかも。ラナさんに至っては、大魔導士クラスだし、彼女は直ぐ俺に意見を求めたから、信用のある部下だって思われても可笑しくはない。俺の意見が素直に通るなら、説得するのは弱者で難易度が低い俺ってな。イコは、そんなことを自虐的に考えていた。


「でも大口発注相手に一日無駄にしたのは痛手ね。二日間、つまり60時間は寝ないで作業しなくちゃ。はぁ…大変なことになったわねぇ」

「ラナさん、頭の計算機がぶっ壊れてやがりますよ?眠っている間に、他部隊の奴に殴られたんじゃないですか?二日間の累計時間を、もう一度計算して下さい」

「え?一日って30時間よねぇ?」

「他の星から来ました?」


 ボーっと二人が見つめ合っていると、ラナの下に青い鳩が飛んできた。青い鳩は、社内呼び出しの知らせを持ってくる「ナカムラ」である。手紙を持つ場合と持たない場合があり、持たなければ部隊長が一人で出向き、持つ場合は手紙によって指定された人物を連れて行くことになる。


「あら、ナカムラさん。…こんな時に上司様からの呼び出しだなんて残念」


 青い鳩の足から小さな手紙を外し、ラナは静かに笑みを浮かべた。


「あなたもよぉ、イコ君」

「…はぁ、俺は無実ですよ」

「私だってそうだけれど、ここは上司様の機嫌だけで首が飛ぶような部署なのよ」

「それは…その通りですね」


 緊張のせいで上昇していく体温を逃そうと、イコは茶を口に含んだ。しかし、残念なことに茶は無味であり、この特有の無味を味わうと、これから会うことになる直属の上司の顔が思い浮かんだ。上司の記憶に結びつけられた無味は、濃厚な味のように脳裏に染み付く無味だった。彼女は、そういう女性である。


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