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【七】
五日目――。
地に病巣の雨が降り始めた。
死の浸食と同じ原色の赤色の、肉片のような小さな雨粒が降り注ぎ始めたのだ。
それは地に膝を付き、祈りを捧げていた民の肌を、肉を焼き、断末魔を上げさせた。
阿鼻叫喚の合唱が帰ってきた。
今度は人の嘆きの声ではなく、命そのものが叫ぶ絶叫として。
――それを見て、少女は一歩、国の側へ近づいた。
一歩を踏み出し、また瞳を見開きじっとそれを見つめ、口を半開きにして、その様子を静かに窺った。
赤の雨は人の肌を、肉を焼き、絶叫の形で固まった者にすら容赦無く蹂躙を施し、焼け爛れ溶かし、不自然に肉を隆起させ、雨を浴びた者共を異形の存在へと変えてゆく。
半開きにした口から、はっ、はっ、と浅い呼吸を繰り返しながら、少女はまるで花火を見るような視線で、それを熱心に見つめていた。
生き延びた人々は屋根の下に隠れ、ただただ震えていた。
絶叫し肉を溶かし、異形へと姿を変える人々を、少女は飽きることなく見つめ続けていた。