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7/9

【七】

 五日目――。


 地に病巣の雨が降り始めた。


 死の浸食と同じ原色の赤色の、肉片のような小さな雨粒が降り注ぎ始めたのだ。


 それは地に膝を付き、祈りを捧げていた民の肌を、肉を焼き、断末魔を上げさせた。


 阿鼻叫喚の合唱が帰ってきた。

 今度は人の嘆きの声ではなく、命そのものが叫ぶ絶叫として。


 ――それを見て、少女は一歩、国の側へ近づいた。

 一歩を踏み出し、また瞳を見開きじっとそれを見つめ、口を半開きにして、その様子を静かに窺った。


 赤の雨は人の肌を、肉を焼き、絶叫の形で固まった者にすら容赦無く蹂躙を施し、焼け爛れ溶かし、不自然に肉を隆起させ、雨を浴びた者共を異形の存在へと変えてゆく。


 半開きにした口から、はっ、はっ、と浅い呼吸を繰り返しながら、少女はまるで花火を見るような視線で、それを熱心に見つめていた。


 生き延びた人々は屋根の下に隠れ、ただただ震えていた。


 絶叫し肉を溶かし、異形へと姿を変える人々を、少女は飽きることなく見つめ続けていた。


 

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