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【六】
四日目――。
人々は、祈りを天に叫び始めた。
阿鼻叫喚の声は、全てその祈りの声に変った。
泣きながら、顔をぐしゃぐしゃにしながら、手を組み天を見上げ、絶叫の祈りを轟かせていた。
喉が割れそうになろうと、それでも叫び続けるその祈りは――。
聖女へ捧ぐ、祈りだった。
帰ってきてください。
お願いします。
私たちには、あなたが必要なんです。
貴方が大切です。
償いをさせてください。
帰ってきて、私たちの前に姿をお見せください。
彼等が悪いのです。
政を取り仕切る、彼等の愚かを謝ります。
私たちは、貴方を必要としているのです。
どうかお願いします。
少女は、その祈りに耳を傾け――やっと、まともに、そちらへ視線を向けた。
しかし起こした変化はそれだけで、僅かにも身じろぎせず、動こうとはしない。
ようやくまともな大きさに戻した瞳で、少女はただ、その切なる祈りを見つめ続けていた。