【五】
三日目――。
人々は争いを始めた。
狭まってゆく生命のための地。
自然色ではあり得ない原色の赤、その浸食に呑まれた地から逃げ延びた人々を拒絶するような運動が始まった。
一度それが起こると、連鎖というにはあまりにも早い一斉で、国中でその働きが起こった。
悶着が闘争に変わり、闘争は不毛に至り、もはや人らしい統制は消えた。
――恐ろしいことに、浸食の手を伸ばす赤から遠い、国の内側に住む民たちは、終焉としか言い表せないその狂乱の状況下にあっても――自分たちはまだなんとかなると、心の底からそう信じていた。
戸惑い、恐怖し、叫び泣き喚き失神を起こし、表面上は諦めの雰囲気を浮かべようとも――心の底では、自分たちは、何かがどうにかなりなんとかなるのだと、そう確かに、信じていた。
少しの賢い者たちを除いて、人はまだ、瞑った目を開かなかった。
少女はようやく、泣き叫ぶ民たちに一瞥を向けたが――しかしそれも一瞬のことで、またすぐに、浸食する赤、犯される生命の大地の死へと目を戻した。
――浸食の進みが、徐々にではあるが早まりつつあるのが見て取れた。
今やそれは蝸牛の歩みの速度である。