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【三】
一日目――。
少女は国を遠くに見下ろせる、丘の上に立っていた。
絶対の死をもたらすはずの、赤の地を、確かに踏み締めながら。
「…………」
無言で国を遥かに見下ろす少女の表情は、無表情であった。
――国の土色が、不気味な原色の赤の死に、侵食されつつあった。
見る間に、一ミリ、また一ミリと。
少女は、その死を象徴する赤が、土色の地を変色させほんの僅かずつ侵食する様を、目を見開き、じっと見つめていた。
慌てふためく人々よりも。
土が僅かずつ死色に染まっていく様子だけを。
人々の様子が豆粒程度にも見えぬ遼遠の丘から事態を望んでいたが、少女の瞳には確かに、その様子が映されているようであった。
じっと、みじろぎもせずに。
少女は、死の赤が平穏を犯す様子を、眺めていた。