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第5話 影男登場

窓の下に見える校庭では、最後のあがきとばかりヤケになったセミの声が響き渡っている。

今は9月も半ば過ぎ、吹く風も心地よく感じる。


やっと授業も全部終わり、あとは帰りのHRの担任待ちという時間。

明日から連休とあっていつになく教室は騒がしい。


「ねえ、帰りなんか食べて帰ろうよう。あのファミレスのパフェフェア、

 もうすぐ終わっちゃう」

「あ~、あたしバイト~」

「ごめん~、部活う」


「ちょっとゲーセンつきあってくんねえ」

「お前まだあのサッカーゲームにはまってんのかよ。よくあきねえな」


クラス全員36名。

開放感からかやけにみんなのテンションが高い。



自分もゆっくり伸びをしつつ、のんびりくつろいでいる。

といっても、この後特に用事もなくただ家に帰るだけだが。


ちなみに例によって誰も声をかけてこない。


無視されているとか、いじめられているとかではない。


ただ一言、目立たないのだ。


自分でいうのもなんだが驚くほど影が薄いみたいだ。

中肉中背で成績も真ん中辺、顔もくっきりとしているわけでもなく、どちらかといえば

のっぺりとしている。当然彼女なんてできるはずもない。


名前も「田中信二」という、これまた何のへんてつもない普通の名前だが、

別名「薄井影男」とも言われている。



そんないつもと同じ状況で帰りの用意をしている最中にそれは起こった。



目も開けなれないほどの眩しい白い光の中、意識を失う寸前につぶやいた。

「もしや俺、異世界に行くのか・・・」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ダリア大司教様、成功いたしました。35名全員無事です!」

担当の司教が、聖堂中に響き渡る大声で叫んだ。 


ああ、良かった。本当にうまくいったんだ・・・

転移の儀式として20年ぶり、前回はまだ私が生まれる2年前だったわ。


先代の大司教様より引き継いだこの力、始めはとっても不安で自信がなく、

ちゃんとやりとげられるかすごく心配だった。


でも安心するのは早いわ。

まず皆さんに説明しないと。きっと不安でいっぱいでしょうね。


そして私は満面の笑顔で、まだ床に座って呆然としている皆さんに語り掛けた。


「皆様、ようこそいらっしゃいました。

 ここはイシュト国のオブマールという街です。

 私はこの神殿で大司教をしておりますダリアと申します」



【信二 side start】


気が付くと床の上に寝てて、上を見ると天井はとても高く

周りの壁はすべて石で出来ているなということはすぐわかった。


(割と冷静だな、俺)


異世界転移ものはラノベでよく読んでいたため、抵抗とか拒絶反応は特になかった。


(さてまずは、幼女の見た目をしたエルフの美少女が説明をしてくれるはず。

目的は魔王討伐かな?)


しかし、話始めたのは幼女ではなく白い派手なローブをまとい、

鮮やかな金髪のとても綺麗なお姉さんだった。


(う~ん、幼女エルフじゃなかったが、とりあえずつかみはOKかなと)


その金髪お姉さんは説明を続けてたが、ふと回りの見ると

他のクラスメートは特に騒ぐことはなく、おとなしく聞いている。

まるですでに説明をされてて、再度確認のために聞いているというふうに・・・。


(あれ、ここで誰かが「元の世界へ帰して下さい!!」

(女の委員長必須)という展開は?)


変だなあと思いつつも、そのうちに金髪コスプレお姉さんの話は終わりになった。


とりあえずその金髪コスプレお姉さん(推定20歳、年上だけどちょっと好み)の

話をまとめてみると・・、


 ・皆さんはここイシュトア大陸のイシュト王国という世界に召喚されました

 

 (なるほどなるほど)


 ・最終目的は魔王-暗黒神を封印することです   

 

 (知ってた)

 

 ・そのために皆さんはここに来る途中で出会った女神様より、特別かつ強力な力を

  授けられているはずです  


 (ええ?知らないぞ)


 ・魔王は20年で復活します。前回封印してから今年で20年です。

  もうすぐ復活するぞというアナウンスが魔王サイドからありました。

  復活してから5年以内で、再度封印しないと、世界は暗黒につつまれ滅亡します。


 (それは大変ですね)


 ・封印が成功したら、皆さんを元の世界に返すことが出来るようになります。

  その際、元の世界の数秒後に転移することになります。


 (おお、新しいパターンだ)


  その他補足として、

 ・選択肢として、この世界にとどまることも可能です

  以前転移した方の半数はこの世界に残って、結婚とかされています

  ただし、元の世界へ戻る場合はここの記憶は残らないようになってます

  とのことだった。


「今お話しした内容は、皆様方がここに来る前に出会った女神様と納得がいくまで

 話をしてきたと思いますので再度の確認のみとなります。

 なので特に質問は無いと思ってます」と、ちょっと好みの年上お姉さんが言った。


 (そこんところがちょっとなあ。まあ、あとで聞いてみよう)



「では次に皆様方のJOB(職業ですね)を覚醒させることにします。

 目の前にある水晶に手をかざしてください」


 はあ?と思い前を見ると、いつの間にか水晶玉を出現していた。

(ええっ?いつの間に?)


 まあいいや、とりあえず手をかざそう。

 おお、光が強くなってきた。センサーか何かかな。


 その後ポロロ~ンと音がして目の前にタブレットみたいなボードが浮かび上がってきた。

(これがあの有名なステータスボードか。どういう仕組みだこれ)


のんきにステータスボードに感激してたら、お姉さんの声が聞こえてきた。


「そのボードのJOB欄にあるのが、皆さんの職業になります。

 おそらく<転生ー聖騎士>、とか<転生-賢者>と出ていると思います。

 つきましては<転生ー勇者>と表示されている方は申し訳ありませんが、

 お立ち願いますか? 7名の方だと思います」


俺の回りにいる何人かが立ち上がった。おおやっぱり委員長は勇者か。

美少女で勇者なのは、デフォルトだな。


ちなみに俺のステータスボードに書いてある職業は、

今までの話からすればありえないものだった。


(なんだよこれ、どうしろっていうんだ。でも俺らしいと言えば俺らしいが。

 まあこれもあとで確認しよう)


またお姉さん(よく見ると胸大きめ)が話し出した。

「次に今立ち上がっていただいた方の回りで5人ずつのパーティを作っていただきます。

 もちろん初めてですので、お友達どうしでも結構ですし、職業名を見ながら適切な

 バランスを考えていただいても問題ありません。

 過去の転移者のお話で「RPGみたいだ」という言葉もありましたけど、あいにく

 RPGが何者なのか存じませんので・・」


話が終わると、一斉にみんなが動きはじめた。


俺はというと、自分のJOBの意味が分からず、ただじっとしていたが、

そのうちクラスメートの何人かは、俺のボードを見て

「??」、「なにこれ」、「意味わからん」と言ってすぐに離れていって、

しまいには「お前にぴったりだ」というやつも出てきた。


そのうち、5人ずつのパーティがだんだん固まってきて、

悩んでいる者にはお姉さんのアドバイス等があり、

結構早い時間で5人パーティ7組が完成した。

もちろん全36名なので、俺を含まずの35名でだ。


「このパーティは暫定的であり、今後シャッフルがあるかもしれません。

 ただしばらくはこの組み合わせで行きたいと思います。


 なお<封印>スキルが使えるのは転生-勇者だけです。

 ですのでパーティに勇者は一人だけしか入れません。

 また、魔王封印はどなたのパーティがしていただいてもそれで終了となります。

 ただし、封印したパーティの皆さんには莫大な報酬がご用意されておりますので

 お楽しみに。


 以上になります。それではパーティごとに世話役をお付けしますので、

 その世話役にしたがって各パーティ部屋に移動をお願いします。

 そちらで、武器、防具、便利アイテム、資金、冒険マニュアル等をお渡しします。


 長い間お聞きいただいてどうもありがとうございました。

 それでは解散といたします」



 (えっ?俺はどうすれば?)



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