第17話 王都に向けて
【ルーシア side start】
私たちは今、王都「グランドイシュト」に向けて馬車で移動している。
勇者、魔王の情報取集と、姿は見せたくはないが王族の現在の様子が知りたいという、アリーナ様の要望のためだ。
ダンジョン探索で豊富な資金が出来たので、ロブさんが念願の馬車を購入し、私たちはそれに乗せてもらっているという状況だ。
ロブさんの馬車の外見は、痩せ気味の馬1頭と、くたびれた中古の車体に見えるが、本当はまったく違う。
馬は、マイラの召喚魔法<L2:スレイプニル>で、6本脚の屈強な軍馬を出現させ、シンジくんの<認識阻害>で、見た目を変化させている。
車体は、アリーナ様の錬金術で火、水、風より完全に守られ、材質はミスリル製にしており、魔物、盗賊撃退用の武器、兵器が車体のあちこちに隠されている。また、車輪の角度も調節でき真横にも進むことができる。さらに路上の障害物を回避するため車体が大きく上下に伸びる仕様になっている。当然その場合や急坂などでも、車内に影響は無く振動も無い。
内部は私の<空間操作>で広げており、酒類のカウンターバーや娯楽室、衣装室もある。中庭にはお花畑も作った。
2階にはバス、トイレ付きの個別の部屋、地下には、アリーナ様用の剣術とロブさん用の弓術の修練場、錬金部屋、ダンジョンで取得したレアアイテム用の倉庫などがある。
シンジくんが、その倉庫に「秘宝館」という看板をかけて、一人でニヤニヤしてた。なんでだろう。
移動の道すがら、ダンジョンを見つけてレベリングやアイテム収集をしながら4人で探索している。
アリーナ様はレベルアップすると、逆にステータス数値が落ちてしまうのでいつもお留守番だ。
なお5人の現在レベルはこうなっている、
ルーシア L:122
マイラ L:116
シンジ L: 82
ロブ L: 58
アリーナ L: 14
もちろん常に偽証をかけているので、ばれることは無い。
そして先日ついに、世界創成級のアイテムを見つけた。
いつものように通りかかったダンジョンへ4人で潜って探索中、ロブさんでも探知できなかったワナにかかり、別の部屋に転移させられた。<確率変動>がかかってなかったのかなと思ったが、ロブさんに聞いても問題無いとのこと。
周りを見渡すと、メタルゴーレム1体と宝箱が見えた。メタルゴーレムは固い上に、魔法が効きづらく時間がかかりそうなので、ここはすぐマイラに出てもらい、一瞬でご退場していただいた。
そして開けた宝箱には、1本の小さい苗があった。
「世界樹の苗」・・世界に1本しか存在しない樹木の苗
成長すると、「輪廻の花」が咲き、
その後「禁断の果実」へと変化する
枯れても最後は「天界の種」になる
「輪廻の花」 ・・エリクサーと同等の効果がある
「天界の種」 ・・食用すると、スキルポイントが1上がる
【ルーシア side end】
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【シンジ side start】
王都への距離の半分くらいまで進んだところ、ルー姉さんから、「近くに転生勇者パーティがいるわよ」と言われた。<ダイレクトサーチ>で近隣にいる勇者を検索していたようだ、
なので食料品などの補充も兼ねてその街に寄ることにした。
ルー姉さんに聞いた酒場にいくと懐かしい顔ぶれが揃っていた。
勇者パーティ7組中の1組。残念なことに野郎5名のむさいパーティだった。
今回俺は、存在感をUPしてから彼らに近づいて言った。
「おう、久しぶり!元気だったか?」
それでも若干、戸惑っていたようだが、すぐに気づいてくれた。
「田中か?、お前生きてたのか」
「本当に久しぶりだな、1年ぶりか」
「何にやってたんだ?」
特に親しい友人ではなかったが、一応1年ぶりに会ったクラスメートということで、それなりに盛り上がった。
当然「今まで何してたんだ」いう話題が中心になった。
最初に俺の方からは、あの後居なくなった理由として、「実は大司教から、特別に情報収集要員として動いて欲しい旨の依頼があったんだ」と適当なことを言ったが、「なるほど」とあっさり納得していた。
ふ~ん、興味が無いんだな、くそ~。
気を取り直しそっちはどうなんだと聞いたら、1年間でレベル50近くになり、今のところ順調だとのこと。
(まあ妥当なところだな)
・他の勇者パーティも似たような感じだが、2組ほど、平均レベル70を超えている組が2組あり、そいつらが封印候補の有望株だ
(へえ、誰だろう。美少女委員長組だろうな)
・他のパーティは王国全土に広がって活動しており、パーティ間の交流はあまり無い
(広いからな、この国)
・このパーティは以前女子が2人いたが、あっという間に抜けられ、男5人になってしまった
(くくく、、こっちは激レア級美女、神話級の美しさを持つ第一王女、しっぽ付き超美少女の3人、勝ったな)
で、最後に本音として「封印は強い奴らにまかせて、俺らは終わるまでのんびりするつもりだ」と白状した。
まあ本来はごく普通の高校生だからな。それもありだろう。
ただ、別れ際にちょっと不穏な話を聞いた。
魔王側も毎回封印されていることについて、その対策があるようで、もしかしたら今回は封印できないのでは?という話だった。
う~む、そうなるとあと数年で世界は滅んでしまう。それはちょっと困る。
今後はいろいろな情報に注意しようと思い、「またどこかで会おうぜ」と酒場の外で別れた時、打ち合わせどおりマイラが、飛びついてきて腕を組んで言った。
「あ、シンジお兄ちゃん、ここにいたんだ。約束どおり早くデートしようよ」とこれも練習してきたセリフをあいつらに聞こえるように言ってもらった。
あいつらは全員、口をあんぐり開けて呆然としていた。しかも二人ほど涙を流していた。
(ふふ、完全勝利だな)
小芝居がうまくいって今は有頂天だが、その後一か月ほど、毎日高級スイーツを献上したことは内緒だ。
【シンジ side end】




