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第15話 旅立ち

意を決して扉を開け、暗い部屋に入ると、突然まるで昼間のような光があふれ出し、その部屋を隅々まで明るく照らし出した。


そこは書斎と同じくらいの大きさで、天井は低く、奥にもう一つ扉があった。


中央には大きなテーブルがあり、試験管、顕微鏡などの実験器具、作りかけの木で出来た人形や、金属が組み合わさって作られた機械のようなもの等が乱雑に置かれていた。


奥には大きな釜があったが、怖くて中は見れなかった。

その隣には棚があり、いろいろな薬品がラベル付きで並べられていた。

一番奥には、骸骨が笑っているラベルが貼ってある瓶を見て、思わず噴き出してしまった。

(おじい様らしいわ。きっと危険なものなのね)


向かいの壁には大きな黒板がかかっており、様々な記号、化学式が書かれ、その隙間中にメモ用紙が貼られていた。


(研究室というよりアトリエに見えるわ)


テーブルを一周し、最後にもうひとつある扉に向かった。

その部屋に入った瞬間、わたしは思わず声を上げそうになった。

周り、床、テーブルの上、部屋中に本があった。おそらく書斎と同じくらい。


(全部錬金術の本だわ)


(おじい様、ここで錬金術の研究をしてたのね。私の「愚者」の意味を解明するために・・・)


ふと机上を見ると、懐かしいおじい様の手帳を見つけた。中は日記のようだった。


X月X日 

ようやく地下の錬金部屋の準備が整った。訪問客や使用人たちに知られずに、研究を進めなければならない。また文献も揃えて、過去事例やイレギュラーなスキルの例なども考慮しなくてはならない。やるべきことは多い。

一日も早くアリーナの喜ぶ顔が見たいものだ。


X月X日 

方針が決まった。錬金術とは、通常は卑金属を貴金属に変えるものだ。ただここに魔力が加わることで、もっと様々な変化をおこさせることができる。ならば、職業(JOB)を自由に変えることができるように、スキルも変えられるのではないかと考えた。つまり「愚者」をせめて通常の王族職に変化させようと。そしてその変化を錬金術で変えて見せようと思う。


X月X日 

やはり神のつくりたもうた仕組みをたがが人間ごときが変えられないのではないだろうか。最近そう思うことが多くなった。神の領域に踏み込んだ私にどんな罰があるのだろう。アリーナのためなら私はどんな罰をも受けよう。


(ううう、おじい様、わたしのことをこれほどまでに・・。


・・わかりました。おじい様の研究はわたしが引き継ぎます。そしてわたしが取得したこの「愚者」の本当の理由と、何よりもおじい様にかかっている呪いを解くために!)


【アリーナ side end】 


次の日よりアリーナは昼間は大人しく、絵本(の間に挟んでいる錬金術の本)を読み、絵(大きなお花の絵の横に複雑な化学式)を描いて、おままごと(という名の調合)をして、夜は錬金部屋にこもるという生活を続けた。


しかし時間をもっと有効に使いたいアリーナは、人間が近づくと振動で知らせてくれる装置を錬金術で作った。できるだけ小型化したその装置を廊下の絵画の裏、花瓶の底などにあちこちに隠し、書斎にだれかが近づくとアリーナが持っているペンダントが振動するようにした。


更にそれを改善し、映像を映し出す機能も追加し、受像機を錬金部屋に設置した。


届かない位置にある天井のシャンデリアへも、小さな羽根を組み合わせそれを高速で回転させ浮遊できる装置を作り、それを使い設置した。それにより、今では療養所にいるすべての人間の氏名、現在位置が、映像上のマップに映し出されるようになった。




ちなみにこのような開発作業も、レベルアップのための要素になるため何回かレベルアップし今現在、アリーナはこうなっている。



  HP 9981P

  MP 9979P


  体力    9P

  筋力 9992P

  知力 9938P

  魔力 9977P

  敏捷    8P 




 (う~ん体力がないのよねえ、でもHPと筋力は増えたから階段から落ちてもすぐ死んじゃうことはなさそうね)


  

書斎部屋や錬金術部屋の本をすべて読み、すべて暗記し、すべて理解したアリーナは、ある目的のため過去誰も成功したことがないとされる、人工生命体ホムンクルスの作成に取り掛かっている。



いつものように祖父ガルフの部屋で、話をしているアリーナ。

侍女たちがいる場合は、お天気やお菓子の話、二人だけになると、高度な錬金術の理論や最近証明できた数学の仮説などの話をしていた。


相変わらず反応はなく、答えも返ってこないが、錬金術などの話をしている時、祖父の目が時折嬉しそうに見えることがあった。


「おじい様、もう少しレベルアップし全部の項目が増えたら、私は旅に出るつもりです。外の世界でもっと知識を増やし経験を積み、必ずおじい様を治してみせます。でも私がいなくなると、大騒ぎになってしまうので、私の分身を置いていきます」


そう言ってアリーナはホムンクルスの話をした。ほとんど出来上がっていて、身長、体重、髪の色、肌つや、声は寸分違わず、食事までも自分でできるようになっている。アリーナから見ても、怖いくらい似ている。


口癖も完璧に覚えさせ、最後に自動修復機能を付けてその人形は完成した。と、同時にレベルアップし全ての項目が一万弱の数値となった。


その日の真夜中、アリーナは旅立った。





療養所を出てしばらく歩き、街道らしき道に出た途端、人の気配を感じ振り向いた。


いつの間にいたのか、その銀色の髪を持ち、吸い込まれそうな青い瞳の女性はこう言った。


「私たちなら、貴方をお助けすることが出来そうです。少しお話しをしませんか?アリーナ・フォン・イシュト第一王女様」


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