第13話 ある穏やかな日に
この療養所でのアリーナの一日は静かに始まる。
朝は自然に目覚めるまで寝て、食事の時間も侍女がつきっきりで世話をする。
その後アリーナはたくさんの人形たちに話しかけたり、絵本を見たりして過ごす。
昼食が終わればお昼寝の時間になり、目覚めたらガルフのベッドに行く。
ガルフからは返答がないが、アリーナは一生懸命、今日の出来事とかをガルフの手を
握りしめながら一人でしゃべっている。
そんな毎日がゆっくりと平和に流れていく。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アリーナがこの療養所に来て2年の月日が流れた。
16歳の誕生日を過ぎ、ますます美しく育っていったが、
知力はもとに戻らず以前と同じままだった。
春から夏にかけ、さわやかな日が続くある日、侍女がアリーナの部屋の空気の
入れ替えをしようと窓を開放させたときのことだ。
窓を開けたとしても、すべての窓には格子が張られているので、出入りは不可能だ。
ただその短時間で、ある生き物がするりと格子をすり抜け、部屋の中にもぐりこんできた。
生まれたばかりのような小さなスライムだ。
そのめずらしい銀色のスライムに気づいたアリーナは喜んであいさつした。
「こんにちは、すらいむさん、ごきげんいかが?」
床をのそのそと動く姿を見て、嬉しくなったアリーナは
「いっしょにおあそびしましょ。ひとりぼっちはさみしいの」と
話しかけた。
そこへ午後のお茶を持った侍女が、部屋に入ってきた。
「あらアリーナお嬢様、また妖精さんとお話してしてたんですか?
はちみつがたくさん入ったお茶をお持ちしました。
ふーふーして飲んでくださいね」
そう言って床の上のスライムに気づかなかった侍女は窓を閉めて部屋から
出て行った。
「すらいむさん、おちゃがはいりましたわ。ごいっしょしましょ」
アリーナはテーブルに乗ったカップにつかもうとしたが
手が滑ってこぼしてしまい、ちょうどテーブルの真下にいたスライムに
全部かかってしまった。
「たんへん、すらいむさん、ごめんなさい、ごめんなさい」
だがそのスライムには、熱かったのか、弱々しく身体を震わせてどんどんしぼんでいった。
「いやあ、すらいむさん。きえないで。え~ん、おねがい・・」
アリーナは泣いて助けようとしたが、小さくなっていったスライムは煙とともに
消えて、最後には小指の先ほどの魔石になってしまった。
その時、アリーナの頭の中に声が響き渡った。
<レベルが上がりました>
「愚者」によりHPが ー 7P UPしました
Result HP 13P→ 6P
「愚者」によりMPが ー 9P UPしました
Result MP 15P→ 6P
「愚者」により体力が ー 8P UPしました
Result 体力 14P→ 6P
「愚者」により筋力が ー 6P UPしました
Result 筋力 11P→ 5P
「愚者」により知力が ー11P UPしました
Result 知力 6P→ 9995P
「愚者」により魔力が ー 9P UPしました
Result 魔力 14P→ 5P
「愚者」により敏捷が ー 4P UPしました
Result 敏捷 12P→ 8P
「・・・何?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
しばらく呆然と周りを見ていたアリーナだったが、
突然さまざまなことが認識できるようになった。
「おへやのなか」→「オブマール北にある王族専用の療養所1F東側の私の部屋」
「きょうはあったかい」→「今日は5月22日、5月下旬としては気温が高め」
「きのうのおやつ」→「私の大好物。紫ベリーを元にシナモンをきかせたタルト」
とその時、侍女が突然入ってきて
「どうなされましたアリーナ様。なにか大きな声をあげられましたか?」
と話しだした。
まだ状況が整理できてないアリーナはとっさの判断でやりすごすことにした。
「ちがうの おうたをうたってたの」
「まあ、そうでしたか。あっ、そろそろお昼寝の時間ですよ」
「あい おねむする」
寝かしつけられて侍女が退室したのを確認したアリーナは、今一度
状況を整理しようとした。
(私レベルアップしたのね。スライムさんごめんなさい。
・・その結果能力値がゼロにはならず、突き抜けたってこと?)
(前回レベルアップして知力がダウンして2年半。父上や弟たち、
妹はどうなったの?イシュト国の状態は?)
(とにかく情報が欲しいわ。侍女達に聞くのは危険ね。
夜になったら書斎に行って今までの知識を取り戻しましょう)
ありがとうございました。毎日20時1話ずつ更新します。




