第12話 姫様登場
いよいよ5人目です。
しかもお姫様です。
イシュトア大陸の中央から東の海岸までの膨大な土地、
そのほとんどを統治している大陸最大の国、イシュト王国。
今この王都では国をあげての盛大な式典が開催されている。
イシュトの双宝石と呼ばれる、第二王子と第二王女の双子の
「覚醒の儀」により待望の王族職が明らかになったのだ。
前国王の王族職は「覇者」・・小国ばかり群雄割拠の時代、
いち早くそれらをまとめ上げ、大陸最大の王国を作り上げた
ガルフ・フォン・イシュト
そのガルフ・フォン・イシュトの第一王子であり、
現王のエドワルド・フォン・イシュトの王族職は「継承者」。
紛争が終わったばかりの疲弊しきった領土に、開拓、治水、整備を
最優先で推し進め、行政、経済、法律体系等の制定までも
わずか15歳より率先してリーダシップを取ってきた天才。
エドワルド・フォン・イシュトの第一王女は不治の病により、
現在療養中とされ王族職は公表されてないが、
その1歳違い下の第一王子アレックス・フォン・イシュトの
王族職は「統一者」
これはいまだ大陸の各地に残っている小国をすべてまとめあげて
イシュトア大陸=イシュト王国にすることが確実と期待される職。
そして青の宝石とうたわれる第二王子のレオナルド・フォン・イシュト
瞳は青く澄み渡り、過去のどんな絵画より美しく何人をも魅了する
究極の美をもつ彼の王族職は「守護者」
兄を助け、あらゆる外敵から国、人民を守るという待望の王族職に
国民は歓喜した。
そして紅の宝石と呼ばれる第二王女のクレア・フォン・イシュト
双子の兄と同じ、まばゆいばかりの完璧な美しさを持つとともに、
穏やかな性格、慈愛に満ちた表情で全女性のあこがれになった
彼女の王族職はなんと「聖王女」。
聖女、大聖女の最上位に位置するこの職は200年ぶりの出現となり、
王国全土を覆う結界を張ることができ、
ありとあらゆる病気を治し、すべての病原菌を排除できると言われている。
国民の喜び、希望は際限なく膨らみ、まさにこの世の春といった状態で、
国を挙げて浮かれ騒いでいた。
・・・ただひとり第一王女のアリーナ・フォン・イシュトを除いて・・
アリーナ・フォン・イシュト、現国王のエドワルド・フォン・イシュトの
第一子にして、第一王女。
髪はまばゆいばかりの太陽の輝きを持ち、瞳は深いエメラルド色、顔立ちは
イシュトの奇跡と呼ばれた、今は亡き王妃の生き写しと讃えられた。
全国民の期待を一身に集めた2年前の「覚醒の儀」、
そこで明らかになったアリーナの王族職は・・・・
「愚者」
過去の王族職にも一度も発生してなかったこの職は、あらゆる学者、研究機関を
総動員させて、解明に取り組んだ。その結果は解析不可能。
かつこの結果には厳重な統制がしかれた。
アリーナを溺愛していた、当時の王ガルフは、すぐさま王座をエドワルドに譲り
「愚者」の解明に没頭していった。
アリーナ本人は、負けず嫌いな性格もあり、この王族職を克服しようと
厳しい鍛錬、自己研鑽に打ち込んでいくようになった。
第一王子に続き、第二王子、第二王女の双子の覚醒によりようやく王家の混乱が収まる
きざしが見え始めたが、ここで更なる衝撃がアリーナに襲い掛かる。
14歳になったアリーナは魔物退治をおこなうことになった。
王族といえども剣術や魔法の習得は必須で、レベル上げもかねている。
もちろん、安全性からあらかじめ弱らせておいた魔物をアリーナが
とどめをさすという方法だが。
魔物に剣を刺し、討伐完了となった時点でアリーナのレベルが上がった。
<レベルが上がりました>
「愚者」によりHPがー12P UPしました Result HP 27P→15P
「愚者」によりMPがー14P UPしました Result MP 28P→14P
「愚者」により体力がー 7P UPしました Result 体力 21P→14P
「愚者」により筋力がー 5P UPしました Result 筋力 20P→15P
「愚者」により知力がー19P UPしました Result 知力 24P→ 5P
「愚者」により魔力がー 7P UPしました Result 魔力 19P→12P
「愚者」により敏捷がー 6P UPしました Result 敏捷 17P→11P
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なぜだ!!なぜアリーナだけこのような目に会うのだ!!
あの天使のようなアリーナが何をしたと言うのだ!!」
そう言って、現国王であるエドワルドは執務机を叩き叫んだ。
「アリーナ様・・・」横に控える宰相のフォールズも涙ぐむ。
アリーナは王宮内でも誰彼となく、気さくに接し明るく振る舞うので、非常に人気があり、
フォールズ以下のすべての大臣、士官に愛されていた。
「・・陛下、申し訳ありませんが研究所より報告が上がってきております」
「アリーナのことか・・」
「御意」
「申してみよ」
「はっ、アリーナ様の次のレベルアップの際、知力がゼロになる恐れがあると・・・」
「ゼロだと?それはもう何も考えることは出来なくなってしまうと・・・、
・・まさか、体力やHPもゼロになるということは・・・」
「・・・・・」
「なんてことだ・・。おお神よ、あなたはなぜこのような試練を・・。
フォールズ!今後アリーナの訓練、生産的な行動を一切禁止しろ!
絶対にレベルアップさせるな!!」
「はっ、ですがこの王宮の中ですと難しいかと」
「父上のところか」
「御意・・」
「わかった、大至急、最上の馬車を用意しろ。精鋭の護衛を付け、馬車の振動も
最大限抑えろ、細心の注意を払い、アリーナを移動させろ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
王都から南東へ馬車で10日ほど離れた街「オブマール」。
勇者神殿がある街として知られた中規模の街だ。
そこから北へまた2時間ほど離れた場所に王族専用の療養所がある。
現在ここには、前国王であるガルフ・フォン・イシュトが療養している。
しかし療養というのは表向きで、実際はある呪いにかかり、寝たきりになっているのだ。
2年前アリーナの覚醒の儀で明らかになった王族職「愚者」。
ガルフは最愛の孫娘のため、王位を退きここで「愚者」の解明に心血を
注いでいた。
ある時、ダンジョンから見つかったという古文書を開いた途端、
本内部より黒い霧が出現し、そのままガルフの体内に吸い込まれるという
事件が起きた。
のちの調査で本自体に呪いがかかっていたことが判明したが、
ガルフの意識は戻らず寝たきりの状態が続いている。
当然その呪いの解除には王宮の調査機関が動いているが
まだ進展は無い。
アリーナは現在この療養所に向け移動中だが、馬車からは一歩も出ていない。
出ていないというより出られなくなっている。
できるだけ刺激を与えないためだが、実はもうひとつ出てはいけない理由がある。
アリーナの知力が幼児くらいに戻っているのだ。
馬車の中では絵本を読み、お絵描きをし、侍女たちとおままごとをして過ごしている。
アリーナは「だいすきなおじいさまにあいにいくの」と言って
いつも楽しそうに笑っている。
侍女たちは、そんなアリーナを見て涙を流している。




