第3話 魔法の世界へ
「わああああああああああああああああああああああ―――――――――――‼」
「きゃあああああああああああああああああああああ―――――――――――‼」
悲鳴を上げる二人。
下から急に強い風が吹き荒れたのだ。
同時に、どこかで感じたことのある浮遊感。
「ええええええええええええええええええええええ――――――――――――⁉」
一体どういうことか分からないが――。
俺たちは、間違いなく真っ白な光の渦の中を落下していた。
とても長い光の渦の中。
やがて、落ちていく先から何かが見え始めた。
「……何だ、あれ……? 何か、青い……?」
それは青く、そしてどんどん広がっていく。
「もしかして……⁉」
それが何か分かった瞬間、俺たちは真っ白な空間から突き抜けた。
そして、目の前に広がった。
それは――壮大な青の世界。
そう、ここは空の上。
俺たちはどうやら雲の中を落下していたのだ。
「海だ――――――――――――‼」
どこまで広がる澄み切った空と綺麗な海。
それに、徐々に大陸らしきものがぼんやりと見え始める。
「すげ――――――――――――‼」
天空から落下している真っ最中にも関わらず、そこには心奪われるほどの大自然が目の前に広がっていた。
「そうだ……⁉ 玲奈は……?」
ふと我に戻り振り返る。
気付けば一緒に落下していたはずの玲奈と徐々に距離が開いていた。
「玲奈―――!」
俺は離れていく玲奈に向かって手を伸ばす。
「きゃあああああああああああああああああああ―――――――――‼」
しかし、玲奈は悲鳴を上げたままの周りが見えていない。
「玲奈―――! こっち、手を出して―――!」
俺は必死に呼び掛ける。
「うん――!」
ようやく呼びかけに気付くと、手を差し伸べ返す玲奈。
「なんとか手を繋いで――!」
二人は徐々に距離を縮めていく。
「もう、ちょっと――!」
お互いの指と指が微かに届きそうな距離までは縮まる。
しかし、風が勢いよく吹き荒れる空中で、なかなかお互いの手を掴めずにいた。
「くそ――‼ あと少しなのに――!」
縮まっていた距離が徐々に離れていく。
「もう一回――! 玲奈――!」
「うん――‼」
再び、手を伸ばし、距離を縮める。
微かにお互いの指先が触れ、そして、ようやく、玲奈の指先を掴んだ。
「よし、掴んだ……って、えっ……⁉」
突然、玲奈の背後には大きな黒い影。
「きゃあああああああああああああああああああ―――――――――‼」
玲奈は悲鳴を上げる。
「玲奈、大丈夫か――? 一体何が……⁉」
掴んだ玲奈の指が俺の手の中をすり抜けていく。
「玲奈ぁあああああああああああああああ――――――!」
そして、玲奈の手が開いていき、どんどん距離が離れていく。
「えっ……? そんな、嘘だろ……?」
その影の正体は――見たことのない巨大な鳥だった。
「きゃあああああああああああああああああああ―――――――――‼」
巨大な鳥に掴まれた玲奈。
そのまま遠くまで連れ去られ、やがて姿が見えなくなっていった。
「玲奈ぁああああああああああああああああああああああああ――――――――――――!」
……俺はただ。
……目の前の出来事に。
……叫ぶことしかできなかった。
「玲奈ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ―――――――――――――――――!」
必死に叫ぶ中、周り景色が変わっていくことに俺は気付いた。
辺り一面、青の世界だった視界が緑へと変わっていく。
「う、うそだろっ……⁉」
俺はいつの間にか深い木々が生い茂る島へと落下していた。
「ヤバイ――! 落ちるぅうううううううう―――‼」
ヤバイ……。
死ぬ……。
そう、死を覚悟し、思わず目を瞑った。
――ド――――――――――――――――――――――ン
静かな大森林の中。
大きな落下音が響き渡った。