マーガレット⑥
「でも、そしたらこれからどうしよう。いつまでも隠れているわけにはいかないよね。」
「ああそうだろうな。今回の騒ぎも加わって、見つかるのも時間の問題でしょう。」
「そ、そんな!」
老人の顔が青ざめる。
女性は少し考えた後、決心したように
「お二人とも、お願いです。この人を、父をどこか別の所へ逃がしてください。」
と言って頭を下げた。
「お、お前!何を言ってるんだ!」
老人は驚いたように顔をあげた。
「パパ、お二人も行っていたでしょう?私が見つかるのも時間の問題よ。お願い、私は自分で何とかするから…」
「バカなことを言うな!お前を置いていけるわけねえだろう!」
「でも!」
「…リオン、私たちで何とかできないかな。」
私はリオンに助けを仰いだ。
「私の家にいてもらうとか、ククル村にいてもらうとか…」
「それはこちら側のリスクが高すぎる。村にこれ以上迷惑もかけられない。」
彼は即座に却下した。
「じゃあ、どうするの?」
「良い場所を知っている。お前の屋敷を挟んだ村の反対側の森だ。」
「なんでそんなところに?」
「今後は隣国からも人が入ってくることになる。この人たちのように瘴気から逃げてくる人や、魔女を探す奴らだ。そういった訪問者を知らせてもらうためだ。」
「それじゃあこの人たちのリスクが高いじゃない!」
「結界を張れば簡単に見つかることはない。それに、瘴気にあてられた人なら、隠れる必要もない。同じように暮らしてもらえばいいだろう。」
「でもそれは…」
「私たちだけでは数が少なすぎる。協力者が必要だ。それに、これはボランティアじゃないんだ。互いに利益があった方が、互いのためになる。」
私たちが小声で話し合っていると、老人が近づいてきた。
「あの、おめえさんたち、本当にありがとな。俺たちはこれで…」
「あ、ちょ、ちょっと持ってください!」
出ていこうとする二人を慌てて引き留め、私はリオンがさっき言っていたことを提案した。
「―どうでしょうか?」
二人は互いに目を合わせると、
「それくらいのこと、いくらでもやります。お願いします。」
と頭を下げた。
「匿ってもらった上に、住む場所まで…本当に何からお礼すればいいのか…」
女性はむせび泣きながらそう言った。
「いやいや、むしろ巻き込んでしまったのはこちらなので…」
そう言って、リオンに肘でつつかれる。
「それじゃあ詳しい話は行きながら説明しますね。」
「そうだな。もうここを離れたほうがいい。」
外には、さっきの騒ぎを聞きつけたからか、この家の様子をうかがう数人の人影があった。
それを見たリオンは老人に近づいた。
「あなたは私と一緒に来てください。こちらに目を集めているうちに、娘さんをここから出します。」
「わ、わかった。」
老人はそう言うと、女性に近づいて頬にキスした。
「大丈夫だからな。」
「うん。」
女性は涙を浮かべて頷いた。
「じゃあ、これをかぶって。私から離れないでいてくださいね。」
私は先ほどと同じ様にシーツをかぶった女性を抱き寄せ、呪文を唱えた。
お読みいただきありがとうございます。




