マーガレット④
「さあじいさん、さっさと家の中に戻れ。」
男性隊員は老人の後ろにピッタリと付いてそう言った。
「あ、あんたらは人でなしだ…」
老人は震える声でそう言うと、ちらりとリオンを伺った。
小さくうなずくリオン。
それを見た老人は大きく息を吸うと、ゆっくりと扉を開けた。
キイィ…
きしむ音と共に、扉が開かれた。
「邪魔する」
部屋の中に入ると、男性隊員と女性隊員は老人を押しのけ家の中を探り始めた。
「おめえさん…」
入り口に立ち尽くした男性は、隣に立っているリオンを見上げた。
「大丈夫ですよ。」
小さな声でリオンはそう言い、乱雑に部屋の中のモノを引っ掻き回す隊員たちの姿を見つめた。
「何もないじゃないか!」
顔を真っ赤にした女性隊員が老人に詰め寄る。
「匿っていたのではないのか!?どこに逃がした!!」
「で、ですから、何も知らねえのです!勘弁してくだせえ…」
老人は平謝りして懇願した。
「どういうことだ!」
女性はさらに詰め寄る。
「おいじいさん、あんなに必死だったんだ。何もない訳ないだろう?正直に言え。ここに誰かいたんだろ?」
後ろから男性も加勢するが、老人は頭を下げ「勘弁してください」と言うばかりだ。
「あなたたちが原因ではないですか?」
リオンは冷静に言った。
「何が言いたい」
「この場所は町の端も端、つまり隔離されたスラムです。あなた方のような人間がやって来て家の中を調べられるなど、いらぬ疑惑が生まれるだけ。この閉鎖された空間で、疑惑を持たれることがどういう意味を持つかご存知でしょう?」
リオンの言葉に、老人はさらに深く頭を下げた。
「勘弁してくだせえ…」
蚊の泣くような老人の声に、男性は舌打ちした。
「紛らわしい事しやがって。…まあいい。おい、もう行くぞ。」
男性は女性の方を向いて顎をしゃくると、玄関へと向かった。
リオンとすれ違う瞬間、男性はリオンの肩を掴むと、
「優等生だからってあまり調子乗るんじゃねえぞ。」
と囁いた。
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