マーガレット③
前方で同じように身をかがめていたリオンが立ち上がり、地上へと飛び降りた。
「っ!」
飛び降りる瞬間、彼がこちらを見たように感じたのは、気のせいだろうか。
「さっさと家の中を見せろ!」
「もうその辺でいいんじゃないですか?」
男性隊員の怒号を別の声が遮った。
慌てて駆け寄り、息をひそめて軒下を覗くと、路地裏で見かけた青年が男性隊員の腕を掴んでいた。
(リオン…)
「お前っ!離れろ!」
女性隊員が怒鳴り声と共にリオンにつかみかかろうとするが、その場から動くことができないようだ。
リオンは女性の方を振り返るそぶりも見せない。
「くそっ…放せ!私は王家の騎士団員だぞ!我々に魔法を向けることが許されるとでも―!」
顔を歪ませてわめき散らす女性隊員を無視し、リオンは男性隊員の方を見据えた。
「この手を放せ。」
男性が低い声で命令する。
しかしリオンは動じない。
「放せと―!」
「いくら魔女を探しているとはいえ、このような横暴は王家の品位を落とすのでは?」
リオンが静かに口を開いた。
「王家の騎士団長ともあろうあなたが、罪もない民間人に暴行を行うなど。」
「罪ならある。魔女を匿い、そしてそれを隠そうとしたのだ。お前も魔女がこの町にいると言ってたのではないか?」
「確かにこの町に魔女がいた形跡があるとは言いました。しかし、今もいるとは言っていません。調査の結果現在は王都から離れ、北上していることが分かっています。」
まくしたてるようにリオンは息継ぎをせず言い切った。
彼の言葉に、男性は少し考えるそぶりを見せた後、
「まずはこの場に魔女がいない証拠を見せろ。話はそれからだ。」
と言った。
リオンは地面に倒れている老人の方を振り返ると、
「…わかりました。」
と男性隊員の腕から手を離し、老人の方へと向かった。
「何をしている。早く開けろ。」
「家主の許可は必要でしょう?一緒に家に入りさえすればいい。」
リオンは老人を支え、地面から立ち上がらせる手伝いをした。
「ま、まってくだせえ!それだけは…」
老人は抵抗しようともがき、中々立ち上がらせることができない。
それを見た私は、家の裏側に飛び降り、裏口から家の中へと入った。
(リオンは時間稼ぎをしてくれてるんだ。その間に…)
音を立てないように真っ暗な家の中を探る。
すると、闇の中、隅で何かがうごめいた。
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