マーガレット②
屋根の上を猛スピードで走っていくリオンの後ろ姿を、私はなんとか見失わないように追いかけた。
不安定な足元を魔法で何とか補いながら追いかけるのに精一杯で、周りのことなど気にしている余裕はなかった。
こんな町中で魔法を使うなど自分の身を危険にさらしているようなものだが、町にいるほとんどの人たちがパレードを目を奪われているのがまだ幸いだった。
「ちょっとまって…」
しっかり見据えていないと、すぐ見失ってしまうほど、リオンとの距離は遠い。
私が息も絶え絶えになってようやく、リオンが静かに立ち止まった。
一定の距離を置いて、私も立ち止まる。
(ここは?)
辺りを見回すと、パレードの明かりが遠くで瞬いているのが見えた。
ここは町の端、森との境目の場所だ。
私がいつも着く入り口とは反対側にある場所だが、いつもの場所はきれいに整備されているにもかかわらず、ここはなんだか寂れている。
遠くでかすかに聞こえる祭りの音と相まって、余計に陰惨として見えた。
「リオン、ねぇ…」
遠くで動きを止めているリオンに声をかけようとした時、何件か先の地上から、怒鳴るような声が聞こえてきた。
「おい、じいさん。どうなのか聞いてるんだ。正直に答えろ!」
この声は―
私はぱっと口を手で覆い、屋根の上で身をかがめた。
「私たちを馬鹿にしているのか?我々に嘘をつくことは、王家に嘘をつくのと同じだぞ。」
路地裏で聞いたあの声だ。
私の脳裏に、王家の紋章が入った二人の姿が浮かぶ。
あの下級隊員たちだ。
(何でこんな所に…)
「いえ、そんなつもりは…ほ、本当に知らねえんです…」
下からもう一人、老人の弱々しい声も聞こえてきた。
「お前がここによそ者を匿っているという通報があった。魔女を匿っているんじゃないのか!」
(この人たち…!)
「ま、魔女なんて!違います!」
焦る老人の声と共に、面倒くさそうな舌打ちが聞こえた。
「やましいことがないなら、家の中を見てもかまわないな?」
「そ、それはやめてくだせえ!」
しばらくもみ合うような音が聞こえた後、何かが倒れるような音がし、
「たく、面倒かけやがって…」
と男性隊員が吐き捨てた。
「やめてくだせえ…お願いします…」
老人がすすり泣きながら懇願している。
(あの二人、無理やり…)
頭に怒りが沸き上がる。
(止めに行かなきゃ)
そう思って体を起こしたところで、はたと動きを止めた。
(止めに―)
「………」
すると、前方で同じように身をかがめていたリオンが立ち上がり、地上へと飛び降りた。
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