マーガレット
(リオン?)
「おーい、聞いてるかーい?」
アイルがリオンの目の前で手を振ると、リオンはハッとしたようにこちらに視線を向けた。
「アイルが、パレードが終わったら中央の広場でダンスしようって。」
話が分からないといった顔をしたので、先ほどの提案について教える。
「そうか。ダメだ。」
案の定、即時却下された。
「え~…そんなあ…」
目に見えてしょげるアイル。
「変装しているとはいえ目立たないに越したことはない。それに明日から色々と準備がある。パレードが終わったら早く寝ろ。」
((ただ行きたくないだけか…))
一言で言い切ったリオンに、二人は同時に思った。
「ま、まあリオンもこう言ってるし、今回は参加できないかな。」
(助かった…)
残念そうに言いながらも、心の中でほっと溜息をついた。
「ちぇっ」
残念そうに座るアイルを横目に、私はリオンの様子を伺った。
先ほどから遠くをじっと見つめている。
じっと見つめていると言っても、よく見ると目は何かを追っているかのように動いていた。
まるで猛禽類が獲物を凝視するかのようなその目つきに、どことなく嫌な予感を覚える。
「あ、二人とも!来た来た!」
しかし、そんな不安はアイルの興奮した声にかき消された。
指の指す方向を見ると、パレードがすぐそこまで来ているのが分かった。
楽しげな音楽とともに、辺りはまばゆい光に包まれていく。
「わ…」
光の正体は、パレードの出し物の周りを飛び交う何百何千ものランタンだった。
建物も、咲き乱れる花々も、夜空までも、すべてが太陽のように輝いた。
その美しい光景に、思わず見とれてしまう。
「ね、綺麗でしょ?」
頬を黄金色に染めたアイルが嬉しそうに言った。
「うん…すごい、きれい…!」
自然と笑みがこぼれる。
美しい景色を見ていると、先ほどまでの悩みがすべて杞憂だったのではないかと思えてくる。
しかし、そんな考えは、「すごいね」と言おうとしてリオンの方を向いた瞬間に消え去った。
氷のように冷え切った視線。
その険しい視線に背筋が凍る。
「リ…」
話しかけようとした瞬間、リオンはものすごい勢いで立ち上がった。
「え、な、なに!?」
混乱するアイルの声には耳も貸さず、リオンはそのまま屋根をつたって走っていく。
「ごめんアイル!ちょっと待ってて!」
私も慌てて立ち上がると、リオンの後を追った。
「ま、またぁ…?」
パレードの光の中残されたのは、ポカンとしたままのアイルだけだった。
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