ジャコウソウモドキ
「一体何の用ですか。」
若い男性が突然切り出した。
「王家の隊員の方々が、こんな小さな町まで。」
(あの二人、やっぱり王家の関係者だったんだ。)
隊員と言っていたが、こんなところまで派遣されたということは、大方下級隊員だろう。
すると、男性隊員は面倒くさそうにチッと舌打ちをした。
「分かっているだろう。経過を聞きに来た。」
(経過?)
「報告通りです。ボチボチですよ。」
フードの男性は単調な口調でそう答えた。
「それではもう行ってよろしいでしょうか。調査を続けたいので。」
そう言ってフードの男性が踵を返した。
「待て。」
男性隊員が呼び止めるのと同時に女性隊員がフードの人物の肩をつかむと、はらりとフードが取れ、男性の顔が露わになった。
年齢は19か20くらいだろうか。整った顔をした青年だった。
青年は、無表情のまま立ち止まった。心なしか少し表情が硬く見える。
「誰が立ち去る許可を出した?」
女性隊員は肩をつかむ力を強くした。
「どうもお前の行動が怪しいと他の奴らから報告が上がってる。ここ数週間、一体どこにいた?」
「…言われた通りの場所にいましたよ。」
青年は表情を変えることなくそう答えた。
「それはおかしいな。お前の仲間が言うには、しばらくお前の姿を見ていないようだが?」
男性隊員が手に持った冊子をめくりながらそう言った。
あれが報告書というやつだろうか。きっと青年の仲間が書いたものだろう。
「彼らの調査方法では効率的ではないと判断したので、自分なりに調査をしたまでです。」
(さっきから調査調査って、なんの話?)
「ほう?それで、なにか成果はあったのか?」
男性隊員があざ笑うように聞いた。
「…対象は何度かこの町を訪れているようです。足取りを追えば、隠れ場所が見つかるかと。現在聞き込みを行っています。」
青年は早口でそう答えると、肩をつかんでいる手を振り払おうとしたが、女性隊員は放す素振りを見せない。
「それはほぼ無意味だろう。顔を変えている可能性がある。」
「人相以外にも探す方法はあるんですよ。…そろそろいいですか?」
青年がぶっきらぼうにそう答えると、女性隊員は男性隊員の方を振り返った。
男性隊員は「まあいいだろう」と頷き、青年はようやく解放された。
「では失礼します。」
青年は二人に一礼すると、二人に背を向け歩き出した。
「あまり調子に乗るなよ、小僧。特待生だか何だか知らないが、痛い目にあうぞ。」
男性隊員の吐き捨てるような言葉に聞く耳も持たず、青年は足早にその場を去っていった。
(結局何の話だかよく分からなかったな。後をつけただけ損だったかも。)
青年が去ってしばらく様子を見ていた私だが、特に隊員たちの様子に気になるところはなかった。
(戻ってくる前に早く帰ろ。)
先に帰らせたアイルのことを思い出し、魔法を解こうとすると、女性隊員が口を開いた。
「ったく、なんなんですかあいつは!生意気ですね。」
先ほどの青年のことを言っているらしい。彼の態度が相当頭にきているようだ。
「名乗りもせず、本当に失礼な。あんなやつが本当に魔女を見つけられるんですか?」
「魔女」という単語に思わず身じろいでしまう。
あの青年は私を追っている王家の関係者の一人ということか。
「腕は確かだ。これまでの報告書も非常に正確かつ効率的。この町に来たのもアレの情報あってこそだ。」
(え、私がこの町にいることが知られてる!)
急に全身に緊張が走る。
あの青年は私の動向を知っているような口ぶりだった。
一刻も早くリオンたちに知らせなければ。
「名は何と言いましたか。」
(せめて、名前だけ聞かないと。)
一刻も早くこの場から立ち去りたい気持ちを抑えながら、名を聞き逃さないように、全神経を聴覚に集中させる。
「リオン・アリシャ。」
その瞬間、私は路地裏から飛び出した。
「どうもククル村とかいう田舎から出てきたとかいう、魔法学校特待生様だよ。」
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ジャコウソウモドキ:秘密




