パセリ
視界いっぱいに、青く、キラキラとした光が広がっている。
水面は、縦に、横に、不規則ながらも穏やかに揺れていた。
そして、その前に佇む純白の女性。
こちらに気付いた女性は、真っ白なベールをたなびかせて振り向いた。
「―」
嬉しそうに何か呼び掛けている。
《《僕》》も、めいっぱい彼女の名を叫んだ。
「…うぇぁ」
夢の中の叫び声とは反対に、なんともおかしな声で目が覚めた。
(あ、寝てたのか…)
顔を上げると、クリーム色のミシンと目が合った。
「君に」
寝ている間に辺りは薄暗くなり始め、ミシンに掘られた文字は部屋の明かりに照らされてくっきりと見えるようになっていた。
(さっきの夢…)
体を起こし、飾ってある写真を手に取ると、純白のベールをまとった女性と緊張気味の男性がこちらに微笑みかけていた。
この写真に写っている二人の夢を見たようだ。女性の顔はよく見えなかったが、美しく、幸せな夢だった。
愛にあふれたこの部屋のおかげかもしれない。
そんな穏やかな気持ちに浸っていると、下から叫び声が聞こえてきた。
それと同時に、何かが割れる音が聞こえる。
(え!なに?)
乱雑に置かれたものをよけながら慌てて階段を駆け下りると、ガシャンガシャンと騒がしい金属音が耳に飛び込んできた。
「ちょ、なに、どうしたの!?」
音のする部屋に飛び込むと、アイルとリオンが何やら鉄の塊を抑え込んでいた。
アイルより一回り小さなその鉄の塊は、両手に持った鉄の板を必死に打ち付けていた。
「お前、ちょっとは手伝え!」
「僕はちゃんと抑えてるって!」
リオンは後ろから機械を抑え込んでいるが、圧倒的力不足でずるずると引きずられている。
「えぇ…何この状況…」
「あ、ル、ルリ!」
前方からしがみついているアイルがこちらに気付いた。
「ごめん!ちょっと助けて…」
機械から出ている耳障りな音にほとんどかき消されながらアイルが叫んだ。
「え、えー。どうやって…?」
暴走する機械に恐る恐る近づき、顔と思しきところを指でつついてみる。
当然変化はない。
「バカッそんなんで止まるか!」
もはや顔が真っ青になっているリオンが叫んだ。
「止めるって言ったってわからないし…」
「コントローラー!棚の下!」
頑張って踏ん張っているアイルが、大きな棚を顎でしゃくった。
あの下にコントローラーを落としてしまったようだ。
「うわぁ。重そうだな…」
天井まで届く大きな棚が私を見下ろす。
床と棚との間は数センチほどしかない。手は届かなそうだ。
「持ち上げるしかない、かな。」
「早くしろ!」
リオンもアイルももう限界そうだ。
「せかさないでよ!」
棚を前に両手を伸ばし、くっと力を込めて上にあげると、棚はふよふよと浮き上がった。
(重っ)
魔法で上げると言っても、やはり重いものを持ち上げるのは負担がかかる。
力を入れた腕に意識を向けつつ、ゆっくりとしゃがんで床に手を伸ばす。
誇りのふさふさした手触りの中で、何かがコツン指に当たった。
「あった!」
つかんだ瞬間、緊張が緩んで一瞬棚から気がそれた。
ぐわんと棚が揺れ、まっすぐ下に落ちてくる。
「ルリ!」
パセリ:お祭り気分・愉快な気持ち




