サルビア
「…ふう。」
ベットに腰かけ、部屋を見回してみる。
全体的に薄い色でそろえられた内装は、初めて訪れたはずなのにどこか懐かしさを感じさせる。
部屋は今は誰も使っていないようだったが、きれいに掃除されている。
(おばあさんの部屋だって言ってたな…。)
その人物にあったことはないが、部屋の雰囲気から、きっと優しい人だったのだろうと予想がつく。
机に立ててある写真には、想像した通りの優しそうな女性と強面の男性が映っていた。
(若いころの写真かな。)
少し擦り切れたセピア色の写真には、初めて撮ったのだろうか、二人ともどこか緊張した面持ちながらも、幸せそうに顔をほころばせている。
女性は頭に白いレースをかけて手に花を持っているから、結婚式の写真かもしれない。男性の方も新しい服を着ている。
幸せそうな写真を眺めていると、なんだかこちらまでホカホカした気持ちになってくる。
(こんな若いころの写真を残してるなんて、仲がいいんだなぁ。)
写真を机に戻し、しみじみと部屋を見回した。
古い部屋だが、持ち主のぬくもりが伝わってくる。
綺麗に保存されているあたり、アイルがその人を大切に感じていることが分かる。
閉じられたカーテンからは、昼の日差しがうっすらと部屋を照らしていた。
カーテンを開けると、窓からは町並みが見えた。
依然来た時は広い町だと感じたが、こうして上から眺めてみると、向こうの方に町の入り口が小さく見える。案外小さい町なのかもしれない。
窓際にはもう一つ、別の小さな机があり、上にはクリーム色のミシンが置かれていた。
年季は入っているが、アイルがきちんと手入れしているのだろう。埃一つ積もっていなかった。
「かわいいミシン。」
表面をなぞると、「君に」と小さく彫られていた。
(えっかわい…)
なぜかこちらの胸がきゅんとする。
なんだかこの部屋にいるだけで、心が温かくなる。
(明日になったら聖女になってたりして。)
そんなことを冗談にできるほど、今の心はとても静かだった。
私は少し休憩をしようと机にもたれかかり、ウトウトと眠りにつくまで、町に行きかう人波を見つめていた。
サルビア:家族愛・良い家族
いつもお読みいただきありがとうございます。
私情ではあるのですが、数か月更新を止めることになります。
読者の方々にまた楽しいで頂けるよう頑張りますので、お待ちいただければと思います。
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