キク
「うん!だから、僕も聖女様を止めるのを協力するよ!」
「え?」
私は耳を疑った。
「だ、ダメだよ。魔法学校へ行くときに身分を貸してくれるだけでいいの。入学してしばらく経ったら、それも抹消する予定だし…」
身分を貸してもらうことでさえ、アイルには大きなリスクを持たせてしまうのだ。
「家族として登録してもらう手前偉そうなことは言えないけど、とても危険なことなんだよ?もし失敗したら…。」
いくらなんでも、一般人の身を危険にさらすわけにはいかない。
「そうだ。下手をすれば、この店をなくすことになるんだぞ。」
リオンも厳しい口調で言った。
彼自身、帰る場所も、家族もいる。
それらすべてとのつながりをなくす、相当な覚悟で協力を申し出てくれたのだ。
そう言われたアイルは、少し考えるそぶりを見せた。
「そっか…」
「そうだ。生半可な気持ちでは…」
「じゃあ、一日待ってくれる?」
「は?」
「一日、じっくり考えてみるよ。それでも協力するって言ったら、了解してくれる?」
アイルは笑っていたが、その声には真剣さがこもっており、私は頷かざるを得なかった。
リオンも渋々ながら了承してくれた。
「やった!じゃあ今日は泊まっていってよ。ちょうどお祭りもあるし!」
アイルは嬉しそうにそう言うと、店の裏へと手招きした。
奥に家があるようだ。
「開いてる部屋があるから、そこ使ってねー。」
「ありがとう。でも、今日お祭りだったんだね。なんか飾りがあるなって思ったらそうだったんだ。」
「祭り」と聞くと心が躍る。
「うん。ここら辺は川魚がよく獲れるからね。今日はそのお祝いの日さ。」
「だから魚の形の旗があるんだ。」
「あ、見たんだねー。あれお祭りの名物なんだ。」
「やっぱり!かわいいもんね。」
裏口からいったん外に出て、すぐ向かいにある建物に入る。
こちらは店の様相と打って変わって灰色の地味な外観をしていた。
扉をくぐり、少しごちゃっとした階段をのぼって二階へと通された。
二階には、二つ部屋があった。
「ルリは右の部屋、リオンは左の部屋を使っていいよ。元々はじいちゃんとばあちゃ
んの部屋だったんだ。」
指定された部屋の中を見てみると、薄黄色を基調とした、落ち着きのある可愛らしい部屋だった。
リオンは左の部屋にさっさと入ってしまっていた。
「祭りが始まるのは夕方からだから、それまでゆっくりしていってよ。」
「うん!本当何もかもありがとう。」
「いいんだよー。」
アイルはニカッと笑うと、
「じゃあ僕、店があるから。」
と言って戻っていった。
キク:上機嫌・あなたは素晴らしい友達




