バビアナ
「今学校は休みだからな。生徒に会うと面倒だ。」
とのことだ。
確かに、アイルのような特殊な経歴を持つ生徒は、自ずと目立ってしまうのだろう。
「髪の色とか変えたら?」
そう聞いてみたが、却下された。
「万が一気付かれた後が厄介だ。心配には及ばない。気配を消す魔法をかけているからな。」
リオンは腰につけている鳥の羽を指さした。
「ああそれ、気配を消す効果があるんだ。」
私も腰に付けた羽に手を振れた。
今朝、リオンが持って行けと言って渡してきたものだ。
「シノビチョウという鳥の羽だ。羽に気配を消す魔力がこもっている。」
「こんな羽の色の鳥いるんだ。珍しい鳥なんだね、」
「シノビ」と名前がついている割に、青や紫色の目立つ色の羽をしている。
どちらかというとクジャクのような派手な鳥といったイメージをしてしまう。
「いや、この鳥はこの森にもいる。魔法で気配を消しているだけだ。よく見てみ
ろ。」
言われた方向に目を向け、ぐっと目を凝らして見てみるが、見えるのは深い緑の葉ばかりだ。
「…何も見えないけど。」
「姿ではなく、魔力を探すんだ。」
「えー。」
目と目の間に力を籠めるようにして、じっと見つめる。
すると、緑と緑の葉の間に、ちらりと青色の羽が見えた。
「あ、見えたかも!」
その鳥は、派手な色の羽を折りたたんで、優雅に休息をとっているようだった。
体はさほど小さくはないが、顔は小鳥のように可愛らしい。
「かわいい~」
近くによっても、全く気が付いていないようだ。
「こいつらは警戒心が驚くほどないからな。一度見つければ捕まえるのは簡単だ。」
「え、もしかしてこの羽、リオンが取りに行ってきたの?」
「いや、お前の屋敷にあったものだ。」
(あ、勝手に…)
平然と言うリオンに、冷ややかな視線を向ける。
すると、眠りから覚めたらしいシノビチョウが目を覚まし、サラサラとため息をつい
た。
その声は、まるで風になびく木々のように美しかった。
姿が見えないままだったら、単なる森の音だと思ってしまう。
気配を消す魔法を得た代わりに、動物に必要な警戒心をなくしてしまった美しい鳥。
「…なんか、残念な感じだね。」
しんみりとそう言うと、リオンも「そうだな」と言った。
「だが、あの鳥の魔法は普通の人なら気が付かないほど強力だ。生きているうちに見
られたのは幸運だぞ。」
私たちはしばらくシノビチョウをじっと見ていたが、当の本人、いや本鳥はとろんと
した目つきで私たちを一瞥し、それからどこかへ飛び去ってしまった。
「とにかく、この羽を持っていれば周りには気付かれづらくなる。なくすなよ。」
「わかってるよ~。じゃあ行こうか。」
そう言って、私たちは再び町に向かって歩き出した。
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バビアナ:派手好き




