シレネ②
「魔法で何とかするしかないかな。」
私は手を前に掲げた。
「まて。」
魔法を唱えようと口を開くと、リオンがそれを遮った。
「この木…どうやら風で倒れたわけではないようだ。」
そう言われて木をよく見てみると、茂みに隠されてはいるが、たしかに斧で切られた
ような跡がある。
それに、わずかだが何かの魔力を感じる。
「関わらない方がよさそう。」
何かの罠なのだろうと思った私たちは、木を取り除くことはあきらめ、回り道をして
いくことにした。
「おそらく、魔力のある者を狙って仕掛けられた罠だ。」
「城の追跡者がやったの?」
「いや、賊の類だろう。」
「賊?」
賊とは、いわゆる追いはぎをする集団だ。
あの木には、動かすと強い催眠薬がかかるような仕組みになっているという。
あの量の木をどかすことのできる魔力を持つ者は、貴族や騎士が多いため、持っている金品も多く、それを眠っている間に奪おうという算段らしい。
「へえ~全然気が付かなかった。」
来た道をいったん戻りながら、私は感心して言った。
強い催眠魔法は普通の人には難しいが、ここらに生えている薬草ならある程度の強さ
の薬は作れる。
(薬草なら費用はかからないうえに、作り方さえわかれば大量に作れるもんね。)
「感心するところではない。ああいった輩にはてこずらされているんだ。」
リオンはぎろりと厳しい目を向けた。
「それに、魔法が使える魔獣もあの罠にかかることがあるんだ。魔獣は高く売れるか
らな、あいつらにとっては人でも獣でも、獲れればいいんだろう。」
「え!なんて非道な…」
「お前な…」
魔獣と聞いた途端反応を変える私に、リオンがあきれたようにため息をついた。
「あ、ここ曲がれば行けると思うよ。」
それを無視して右へ曲がると、広めの道に出た。
人が通る用の正規の道のため、念のため荷車にカバーをかけ、リオンはフードをかぶ
った。
「今学校は休みだからな。生徒に会うと面倒だ。」
とのことだ。
確かに、アイルのような特殊な経歴を持つ生徒は、自ずと目立ってしまうのだろう。
「髪の色とか変えたら?」
そう聞いてみたが、却下された。
「万が一気付かれた後が厄介だ。心配には及ばない。気配を消す魔法をかけているか
らな。」
リオンは腰につけている鳥の羽を指さした。
お読みいただきありがとうございます。




