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シレネ

「ねえ、本当に今日行くの?」


「当たり前だ。」


「昨日出かけたばっかりなのに…。」


ぶつぶつと文句を言いながら、私は山道を歩いていた。


昨日の夜、「夜通し歩いた疲れをやっと癒せる!」とごろごろしていたところ、リオ

ンがいきなり「明日アイルの所へ行く」と言い出したのだった。


「編入生の受け入れにも面倒な手続きが必要なんだ。早めに行動して何が悪い。」


「いやまあ、そうだけど…」


(魔力が戻った途端に活動的になってるし…)


一日中書斎にこもって本を読みふけっていたのと同一人物とは思えないフットワークだ。


「それに、そいつの説得に時間がかかるかもしれない。」


私はアイルの様子を思い出してみた。


確かに、いくらアイルでも、国の反逆に付き合えと言われても簡単に首を縦に振るなどできないだろう。


少なくとも、私ならその場で返事をするのはためらう。


私の言動一つで、相手の意思が変わってしまうかもしれないのだ。


(思ってるよりも難しいかもしれない…。)


私は気合を入れ直すと、よしっと小声で声掛けした。




街への行き方は、リオンよりも私の方が詳しかった。


この国に住んでると言えど、リオンはククル村と王都くらいしか行ったことがないら

しい。


「旅人というのも昔は流行ったが、今は一つの場所に留まることが多いな。」


一生一つの村から出ない、ということは稀ではないらしい。


この話も、瘴気の影響で故郷を離れざるを得ない人たちがいると聞いてからは、聞き流せる話でないように感じる。


帰る場所があることが、無意識のうちに人々の誇りになっているようだった。


(まあ私も、故郷がないっちゃあないけど。)


これも異世界の悲しい所だろうか。


「私は、色々なところを回ってみたいけどなあ…。」


ふと思ったことを口に出したことに、自分でも首をかしげる。


(せっかく安心して住める場所を見つけたのに?)


私は、今の状況に満足していないのだろうか?


(う~ん?)


自問自答をしていると、リオンが「おい」と声をかけてきた。


顔を上げると、目の前にあるはずの道が消え失せていた。


というよりも、大きな木が何本も倒れているせいで道がふさがっていた。


「ありゃ~」


山の中ではこの道しか行く方法がない。


「魔法で何とかするしかないかな。」


私は手を前に掲げた。


「まて。」


魔法を唱えようと口を開くと、リオンがそれを遮った。


「この木…どうやら風で倒れたわけではないようだ。」

お読みいただきありがとうございます。

シレネ:罠

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