モンステラ
「それで、これからどうするんだ。」
朝日の中、荷車に乗って森を進みながら、おもむろにリオンが聞いた。
「え?」
「聖女様を止めるのだろう?」
「う、うん。そうだけど…。」
先ほどの感動冷めやらぬまま、曖昧な返事をすると、リオンにぎろりと睨まれた。
「まさか、なにも計画がない訳ではないだろうな。」
「え、いや。ない訳では…ないけど。」
ごにょごにょと言葉を濁す。
「なんだ。」
「大した案じゃないんだけどね、モカちゃんが魔法学校に入ったって聞いたから、そ
こに侵入しようかなって。」
そう言った後に、
「あ、でもまだ決まったってわけじゃないし、状況を持てこれから新しい案を考えよ
うかなって思ってたから―。」
と言い訳がましく付け加えるも、リオンは意外と真剣に考えていた。
「いや、それが一番妥当だろう。」
むしろ以外と好感触だ。
「お前なら、その変装魔法を使えばそうそう気付かれないだろうしな。実際、私たちはお前の顔についての情報は詳しく教えられていなかったしな。」
「え、そうなの?」
それは意外だ。
(あんなにしつこく追ってきていたのに、私の顔についてはみんな知らなかってこと?)
「黒髪で小柄、メイドの服を着ていて同伴者がいない。そして魔法を使う。情報はこ
れだけだ。」
なんて杜撰な…と思わずあきれる。
「だって、髪色なんていくらでも変えられるし、服だって着替えればいいだけじゃない。」
「見た目を変える魔法はかなりの技術が必要だ。まあ、城の奴らはお前にそれだけ強い魔法があるとは思っていなかったのだろうな。」
「なんか馬鹿にされてない?ていうか、この魔法ってそんなに難しいんだ。」
私は自分のこげ茶色の髪に触れた。
「当たり前だろう。こんな魔法が簡単に使えるようでは国の安全にかかわる。」
「確かに。逃亡者とか増えるもんね。」
「それに、屋敷の周りに張ってある結界も最上級クラスの魔法なのだぞ。相当強い魔女がいるものだと初めは警戒していたが―。」
そこまで言うと、リオンはちらりと私に視線を向けた。
「本人に全く自覚がないとはな。」
「うーん、でも魔術書に書いてあったことをやっただけだし…。」
私はそう言うと、カバンから魔術書を取り出した。
(もう見せても大丈夫だよね。)
歩きながらリオンは魔術書をぺらぺらとめくると、
「この本にそのような特別なことが書いてあるとは思えないがな。」
と言って返してきた。
「失礼な―。この本がなかったら私は生きてないんだからね。」
ムッとしながら答えるも、リオンはもう別の話題に入ってしまっていた。
「お前は編入生として入ればいいだろう。この時期には珍しいから多少目立つだろうが、まあ、その魔法を使えば造作もないことだろう。ただ一つ問題なのが…。」
「問題なのが?」
「お前の身元だ。魔法学校は身分制が基本だからな。クラス分けの際に身元が重要視される。」
「村の出身っていうのはダメなの?」
リオンの様にククル村といって入ればいいだろう。
「私の場合は稀だ。相当強い魔力か才能がなければ無理だな。」
「そうなんだ…。」
私はがっくりと肩を落とした。
頼れる人と言えば、村の人しかいない。
「せめて町人レベルの身分ならまた話は別だろうが…。」
リオンの言葉に、私はハッと顔を上げた。
(そうだよ!いるじゃん、町に知り合いが!)
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モンステラ:壮大な計画・嬉しい便り




