ルドベキア②
「もしかして、村が力を持つと、身分関係がずれるから…?」
私の言葉に、リオンは頷いた。
「そうだ。この国の政治に不満を持つものは決して少なくない。大抵は身分の低い者たちだ。…私たちのように。」
リオンは苦々しく言った。
「じゃあ、そう言った人たちが国に反乱を起こさないように、押さえつけてるってことね。」
リオンの代わりに返事をするように、白蛇が毛布から顔を覗かせた。
(どこの世界でも同じなんだな。)
私は少しがっかりした気持ちでパンをかじった。
干した魚はさっきより塩辛くて、なんだかのどが渇く。
(村の人たちは幸せそうに見えたけど、たくさん苦労してたんだ。)
「ねえ、私に何かできることはない?」
「どういうことだ?」
「川を引いてくるとか、井戸をたくさん作るとか。」
「それは無理だ。川一つ引くのにも国に申請しなくてはならない。許可などしてもら
えないだろう。勝手に作るのなどもってのほかだ。」
強い口調で否定され、私は少しひるんでしまった。
恐らく、リオンはとうの昔にこの考えに至っていたに違いない。
彼ほどの魔力があれば、それくらいのことは簡単にできるだろう。
(リオンはもっとずっと前にこれを諦めるしかなかったかもれないのに。ちょっと無神経だったかも…。)
「ごめん。でも私も、村の人たちに恩返しをしたいの。できることならなんでもね。」
たとえ、それが国に反抗することになっても。
「私もだ。」
リオンはそう言って頷いた。
(きっと、リオンも村が大好きなんだ。…それなら―。)
私は口を開いたが、のどまで出かかった言葉をすぐに胸の内にとどめた。
(きっとこれは、言わない方がいいんだ。)
白蛇がするりと顔を私に近づけ、まるで何かを促すかのように頭でそっと押した。
私は無意識にその頭を撫でた。
艶やかな鱗が手に心地よかった。
(もし失敗したら?)
私は白蛇に問いかけた。
(また、前みたいに敵対してしまうかもしれない。)
蛇はその大きく清い瞳で、優しく私を見つめ返した。
(大丈夫)
そう言っているようだった。
それを見た私は、決心してリオンと向き合った。
「リオン、あなたに話したいことがある。あなたは止めるかもしれないけれど―」
リオンは無表情で私の方を向いた。
「私、モカちゃんを、聖女を止めようと思うの。」
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