ベンジャミン③
「リオン…これ知ってる?」
リオンに見せてみると、彼は少し考えるようなそぶりを見せた後、「ああ」と頷いた。
「知ってるの!」
そう聞くと、
「確信はないが。」
と前置きした後、
「『マージ』という植物に似ているが…。」
と言った。
(『マージ』?魔術書で見たことある気がする…。)
私はカバンから魔術書を取り出し、地面に座って開いた。
「これは、魔術書か?」
リオンが、横から珍しそうに覗いた。
(そうだった。リオンの前では読まないようにしてたんだった。)
私は少々気まずい思いをしながらも、
「うん。」
と正直に答えた。
「前に知っている人からもらったの。これのおかげで、今まで生きてこれたんだ。」
今までのことを思い出しながら、私はパラパラとページをめくった。
「あ、あった。」
指さしたページには、屋敷の庭に生えている、あの木と似たような植物が載っていた。
「『マージ。魔力を吸収する木。かつては燃やして炭にしたものを魔石として利用していたが、絶滅の危機に瀕したため今では使われていない。』」
説明を読み上げた私は、はてと首をかしげた。
「形はそっくりだけど、色とかは全然違うね。本に書いてあるのは黒い色をしているけど、私のはどちらかと言うと白いし。実をつけるとも書いてないね。」
手に持っていた枝と魔術書に描いてある絵を並べてみる。
私の持っている方は薄いベージュに黄色い実がついているのに対し、魔術書に描かれている方は黒っぽい枝に灰色の葉のついたもので、あまり植物らしくない。
自然豊かなこの世界のものと言うよりも、鉄やアルミと言った、地球の人工物で作られているようだ。
「それに、この木はすごく早く成長したけど、むしろ本には成長がすごく遅いって書いてあるし。」
私の言葉に、リオンは本と枝を見比べてなにか思案しているようだった。
「あくまで仮説だが…。」
しばらくして、リオンは口を開いた。
「この枝は白蛇の魔力を吸収したのではないか?」
そう言われると、思い当たる節がある。
以前にこの枝を白蛇からもらった時のことを思い出した。
「枝をくれるとき、蛇さんが噛んでた気がする。」
それから木が急速に成長し始めたのだった。
「つまり、この木は蛇さんの魔力に影響を受けたってこと?」
「おそらくな。その成長の早さも、見た目の違いも、白蛇の魔力によるものだろう。」
「なるほど。」
しかもこの枝が、リオンの魔力を元に戻すカギになるという。
「じゃあ、この実食べてみたら?」
「…なぜだ。」
「だってそれしか思い浮かばないし。毒はないと思うよ?」
私は半ば強引に、嫌な顔をするリオンに枝を手渡した。
リオンはしぶしぶ枝を受け取ると、黄色い実を一粒とって口に入れた。
「どう?」
前のめりになりながら、私は何とも言えない顔をするリオンに聞いた。
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