表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/109

ベンジャミン②

しばらくの間、二人は何も言わずに森の中を進んだ。


私は、虫の鳴き声と、時たま吹く風に木々が揺れる音に耳を傾けた。


(そろそろだと思うけれど…。)


そう思いながら歩いていると、ヒヤリと、足元が冷たくなった。


空気が水を帯びたように一気に重くなり、黒かった視界が白く霧がかる。


(着いた!)


胸を躍らせる私の横で、警戒するリオン。


どうやら白蛇は、リオンに会ってくれるようだ。


(あとはこのまま歩いていれば…。)


虫たちの鳴き声が消え、辺りに静けさが訪れる中、私たちはそれぞれ違った緊張感をもって歩いた。


「!」


一匹の蛍が私の前を横切った途端、霧がすっと横にはけた。


いきなり視界が腫れた目の前には、無数の蛍が飛び交う、木々に囲まれた草地が広がっていた。


草地を縫うようにしていくつもの小川が流れている様子は、小さな島がぽこぽこと浮かんでいるようにも見える。


そしてその中央に、真っ白な蛇が一匹、こちらをじっと見つめて佇んでいた。


隣で、リオンがハッと息をのむのが聞こえた。


「蛇さん!」


私はそう言って白蛇に駆け寄ると、その大きな体の前で立ち止まった。


「久しぶり!」


思わず目頭が熱くなる。


大蛇は目を細めると、頭を私へと近づけた。


その頭に触れると、今までの緊張が一気にほどけ、私はぎゅっと抱き着いた。


「ありえない…。」


不意に後ろから声がし、振り返ると、リオンがこちらを見て固まっていた。


「希少種がこんなところに…?しかも、人に触れている?」


「別に怖くないよ。」


手招きすると、リオンはそろそろと近づいてきた。


「お前…今どういう状況かわかっているのか?この大蛇は、伝説と言われるくらいの希少種で―。」


混乱したように話すリオンは、私の表情を見て口を閉じた。


「リオン、こちらは蛇さんだよ。蛇さん、こっちはリオン。」


白蛇はじっとリオンを見つめると、こくりと頷いた。


「それじゃあ早速なんだけど、リオンの魔力がいきなりなくなっちゃって…。」


そこまで言うと、蛇はぬっと顔をリオンに近づけた。


「うおっ。」


リオンは驚いたように一歩下がった。


「な、なんだ…?」


「頭に触れてみて。」


私が言うと、リオンは恐る恐る手を伸ばして白蛇の頭に触れた。


白蛇は静かに目を閉じ、リオンもそれにならった。


私はその横で、そのままじっとしている二人を見ていた。


辺りを飛ぶ蛍の光に照らされて、白い鱗が琥珀色に輝く。


リオンの白い髪も、タンポポ色に染まった。


(きれいだな~。)


隠れ家のような薄暗いこの場所に、真っ白い二つの彫像だけが朝日を帯びたように淡く輝いている。


本の中の美しい挿絵のような二人に、思わず見とれてしまう。


(…長いな。)


随分と長い間、二人は黙ってじっとしていた。


そんなに大変なことが、リオンの身に起きているのだろうか。


心配が募っていく中、不意に白蛇が目を開けた。


「?」


二人とも訳が分からないまま横並びになると、白蛇が私のカバンを指し示した。


(なんだろ?)


カバンを開けて中を探ると、今朝、庭で拾ったあのモミジに似た枝が手に触れた。


「もしかして、これのこと?」


カバンから取り出して見せると、白蛇はうんうんと頷いた。


「これは…どういう意味だ?」


リオンが混乱したように言った。


「わかんない…。」


その先の行動を仰ぐも、白蛇は私を見つめたまま動かない。


「リオン…これ知ってる?」

お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ