ベンジャミン
「それで、さっきの人たちはあなたの知り合い?」
森の中を歩きながら、私はリオンに話しかけた。
「そうなのだろうな。」
「どういう意味?」
「私はあのような低級魔法使いなどいちいち覚えていない。」
「あぁ、そうですか…。」
冷たく言い放つリオンに、「薄情な」と少し引く。
(でもまた来るなんて、やっぱりここらへん怪しまれてるのかな。村の人たちに迷惑が掛かってそうで心配。)
「村の人たち…大丈夫かな。」
私が呟くと、リオンはちらりと私を見た。
「お前が心配することではない。村の人たちはそこまで弱くない。」
「まるで知っているかのような口ぶりね。」
「実際知っているからな。」
リオンの言葉に、私は驚いて顔を向けた。
「え?てことは…。」
「ああ私はククル村で生まれた。」
「マジで!?」
夜の森に私の声が響き渡り、リオンにぎろりと睨まれる。
慌てて口を押えると、
「まじ…?」
と小さな声で囁く。
「その「まじ」とは何なんだ。…本当だ。」
「へえぇ~…。」
確かに、まだフードの男の正体がわからない頃は、もしかしたら…なんて考えたが、
自分が信じたくなかったため却下した。
それに、リオンのような子など見たこと―
(あ。)
そういえば前にシエナさんから、村には優秀な魔法使いがいると聞いたような…。
(…リオンのことだったのかぁ~…。)
思わず頭を抱える。
「なんだその反応は。」
リオンが不機嫌そうに言った。
「いや、だって…。なんというか、なんか複雑だわ~…。」
「だから猶予をやっただろう。それなのにお前は、反逆を企てようなどと…。」
(げえ、それもバレてたのか…。この人心でも読めるわけ?)
「心は読めないが、お前が良からぬことを考えた時に知れるように魔法をかけていた
からな。」
「へぇ…。」
私は苦笑いするしかなかった。
思い返してみれば、リオンが攻撃してきたタイミングが、私がモカちゃんを止めよう
と決意した時と同じだった。
(そういうことだったんだ。)
そんな魔法をかけられていたとは全く気が付かなかった。
それほどまでに、彼は魔法に長けているのだろう。
(でも…。)
私は視線を落とした。
(それでも見過ごしてくれてたんだ。今だって。)
やり切れない思いだった。
リオンは国の命を受けて私を探していた。しかし、私を城に差し出せば、きっと村の人たちが疑われる。
私がここに留まっていたせいで、きっと、彼は国と故郷の人たちの間で思い悩んだだろう。
「ごめん。」
私はぽつりと呟いた。
「私のせいで。」
しかし、リオンは何も言わなかった。
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