ヤグルマソウ②
二人でダイニングを後にすると、玄関へと向かった。
一応私が先に外に出て、日がすっかり沈んでいることを確認すると、リオンも外に出てきた。
彼にとっては久しぶりの屋外ではないだろうか。
嬉しいだろうかと振り返ると、リオンは頭からすっぽりとフードをかぶっていた。
フードの男が後ろにいるなんて、なんだか変な感じだ。
(前の私が見たら、びっくりして腰を抜かすかも。)
笑いそうになるのをこらえながら、さあ出発しようと前を向いた私は、目の前の光景
に、心臓がサアッと冷たくなるのを感じた。
(え、なんで…?)
屋敷は、何人もの男性に取り囲まれていた。
(この前みたいに兵士じゃない…。この格好は…魔術師?)
「ここであっているはずです。」
「本当か?何もないぞ。」
魔術師たちは結界の周りをうろうろしながら、屋敷を探している。
「おそらくは。ここできっぱりと、彼の魔力は途絶えています。」
「ではここらにいることは間違いないのだな?」
(違う。探してるのは屋敷と言うより…。)
私は振り返った。
リオンは、何も言わずにじっと黙っている。
フードで表情は読み取れないが、彼もきっと気付いているはずだ。
(なんで…。リオンが呼んだの?だまされた?なんで、なんで…!どうしよう…!)
頭の中がパニックになる。
なぜ彼らがここにいるのかわからない以上、動くべきなのか、ここに留まっているべ
きなのか判断できない。
魔術師はここにリオンがいると踏んでいるようだったが、まだ結界には気付いていない。
(ここでリオンが出ていけば、私は捕まる…。)
外から結界を壊すことは容易ではないが、内側からなら―。
私は緊張した面持ちでリオンを見つめることしかできなかった。
しかし、リオンは下を向いたまま、微動だにしない。
フードの下で、何を考えているのかすらわからない。
「…やはりここではないのだろう。他を当たるか。」
「了解です。」
結局、リオンは何かアクションを起こすこともなく、魔術師たちは屋敷から去っていった。
「ど、どうして…?」
私は声を潜めて聞いた。
「何がだ?」
リオンは顔を上げた。
「何がだって…あの人たち、あなたの仲間なんじゃないの?声を上げるなり、結界の
外の出るなりすればいいじゃん!」
自分でも何を言ってるのかわからないが、混乱していた私はつい大声を上げてしまう。
「そうして欲しかったのか?」
レオンの静かな声に、私はハッと顔を上げた。
「い、いや…そうじゃないけど…。」
(そっか、別にこれでいいのか。)
「…ありがとう。」
気まずく思いながらお礼を言うと、リオンは「フン」と笑い、
「行くのではないのか?」
と言って、さっさと歩きだしてしまった。
(うわぁ。うざぁ…。)
さっきまでの感謝の気持ちがすっと消え去る。
私は荷車を持ち上げると、リオンを追い抜かし、白蛇の住処へと向かった。
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